「電気工事士って資格が必要だから、未経験では無理では?」と思っている方は少なくありません。しかし実際には、電気工事業界の求人のうち約7割が未経験歓迎です。資格がなくても現場からスタートでき、働きながら第二種電気工事士の資格を取得するルートが確立されています。
この記事では、電気工事士の仕事内容・資格の取り方・未経験からの転職ステップ・年収まで、転職を検討しているすべての方に向けて体系的に解説します。工場や製造業で活躍したいと考えている方にも、電気工事士はキャリアの有力な選択肢です。
電気工事士とはどんな仕事?工場・ビル・住宅での活躍フィールド

電気工事士は、建物や施設に電気を届けるための「配線・設備工事」を専門に行う技術職です。住宅・ビル・工場・商業施設など、あらゆる建物の電気設備を安全に扱える国家資格保有者として社会インフラを支えています。
電力設備から内線工事まで——電気工事士が担う工事の種類
電気工事士が行う仕事は、大きく「電力設備工事」と「内線工事」に分かれます。
電力設備工事では、電柱から建物への引込線工事や変電設備の設置・点検を担当します。内線工事は、建物内の配線敷設・コンセントや照明器具の設置・分電盤の取り付けが中心です。最近では太陽光パネルや蓄電池の設置工事も需要が増えており、再生可能エネルギー分野でも活躍の場が広がっています。
工場・製造業で不可欠な「電気のプロ」
工場や製造ラインでは、機械設備の電源配線・制御盤の配線・動力設備の増設工事など、専門的な電気工事が常時発生します。設備の停止は生産ラインに直結するため、電気工事士の技術は製造業において特に高い価値を持ちます。
工場内の設備メンテナンス職(設備管理)のステップアップ先としても電気工事士資格は有効で、工場勤務の経験がある方は転職でアピールしやすいポジションです。
第二種と第一種、2種類の資格区分
電気工事士資格には「第二種」と「第一種」の2種類があります。
| 資格 | 対象 | 実務経験 |
|---|---|---|
| 第二種 | 一般住宅・小規模店舗(600V以下) | 不要 |
| 第一種 | ビル・工場など大規模施設(最大電力500kW未満) | 3年以上必要 |
未経験から目指す場合は、まず第二種電気工事士から取得するのが王道のルートです。学歴・年齢・職歴などの受験資格は一切なく、誰でも挑戦できます。
業界全体で続く人手不足と需要の高さ
電気工事業界は慢性的な人手不足が続いており、2030年以降も需要が拡大する見通しです。国土交通省が推進する老朽インフラの改修工事や、工場の自動化・省エネ設備への更新投資が増加しているためです。
電気は現代社会のあらゆる場面に不可欠なインフラであり、AIやEVの普及によってもむしろ工事量は増加傾向にあります。一度身につけた電気工事士のスキルは、景気変動に左右されにくい一生ものの技術といえます。
未経験でも電気工事士になれる理由【求人の約7割が経験不問】
「資格がないと電気工事の仕事はできない」と思い込んでいる方は多いですが、実態は異なります。電気工事業界では未経験・無資格からスタートし、現場で技術を習得しながら資格取得を目指すルートが長年にわたって定着しています。
電気工事業界で未経験採用が多い背景
業界最大手の求人情報をまとめると、電気工事士求人の約7割が「未経験歓迎」の条件を設けています。背景には、若手電気工事士の絶対数不足があります。
現役の電気工事士は50代・60代のベテランが多く、若い世代への技術継承が急務となっています。各社が未経験者の育成に積極的に投資しており、入社後の研修制度が充実している企業も増えています。
入社後に資格取得できる「見習い採用」の仕組み
電気工事の現場では、有資格の先輩のもとで補助作業(工具の運搬・材料の準備・穴あけなど)を行うかたちでスタートします。この段階では資格は不要です。
多くの企業が入社後1〜2年での第二種電気工事士取得を支援しており、受験費用・テキスト代の補助や、試験日に有給を取りやすい環境を整えているケースが一般的です。資格取得後は資格手当(月5,000〜30,000円程度)が加算され、給与も上がります。
年齢制限がなく20代〜40代まで転職実績あり
電気工事士への転職は、20代だけでなく30代・40代でも実績があります。業界として「若ければ若いほどよい」という考え方より、本人のやる気と基礎的な体力を重視する傾向があります。
30代であれば、前職の製造・建設・設備関連の経験をアピールすると採用側に刺さりやすいです。40代の場合は中途採用よりも即戦力が求められる場面もありますが、「電気工事士の資格を持って転職」という形をとれば採用ハードルは大幅に下がります。
向いている人・向いていない人の特徴
電気工事士に向いている人の特徴として、以下が挙げられます。
- 手を動かす作業が好き・ものづくりへの関心がある
- 現場の仕事・体を動かすことが苦にならない
- 細かい作業・図面の読み取りに抵抗がない
- 資格取得に向けた勉強を継続できる
一方、「屋外作業や高所作業が絶対に無理」「体力的にまったく自信がない」という方には、ビル設備管理(ビルメン)や工場の設備管理職への転換が選択肢になります。電気工事士の資格は設備管理にも活用できます。
第二種電気工事士の資格取得ステップと合格率の実態

第二種電気工事士の資格は、正しい手順で準備すれば独学2〜3ヶ月での合格が十分可能です。ここでは試験の概要から合格率・勉強法まで実践的に解説します。
試験の概要と受験資格(学歴・年齢不問)
第二種電気工事士試験は、一般財団法人電気技術者試験センターが年2回(上期・下期)実施しています。学歴・年齢・職歴などの受験資格は一切なく、誰でも申し込みから受験まで可能です。
試験は「学科試験(筆記 or CBT方式)」と「技能試験(実技)」の2段階で構成されています。学科試験に合格した方のみが技能試験に進めます。詳細は電気技術者試験センターの公式サイトで最新日程を確認できます。
筆記試験と技能試験の構成
学科試験は50問の択一式で、電気の基礎理論・配線図・法規など幅広い範囲から出題されます。合格ラインは60点以上(満点100点換算)が目安です。
技能試験は与えられた配線図をもとに実際に配線作業を行う実技試験です。試験時間は40分で、あらかじめ公表される候補問題13問の中から1問が出題されます。工具の扱いと欠陥のない施工が合否を分けるポイントです。
合格率と難易度【筆記約59%・技能約72%】
直近6年間の平均合格率は、学科試験が約58.6%、技能試験が約71.8%です(電気技術者試験センター発表データより)。学科・技能の両方をクリアすることで免状の申請が可能になります。
合格率だけ見ると難しく感じるかもしれませんが、試験の出題範囲が公表されており、過去問をベースに対策できるため、継続して勉強した方の合格率は高くなる試験です。「試験慣れしていない」「久しぶりに勉強する」という方でも、独学でのチャレンジが十分に可能です。
独学2〜3ヶ月で合格できる勉強法と参考書
学科試験の勉強は、まず過去問の繰り返しが最も効率的です。電気の基礎理論は難しく感じますが、計算問題よりも暗記問題の比率が高いため、要点を絞って覚えることが合格への近道です。
参考書は『第二種電気工事士 テキスト(Amazon)』が多く読まれています。技能試験対策には候補問題の反復練習が必要なため、練習用の電線・器具セットを購入して手を動かすことが合格の近道です。
未経験から電気工事士への転職を成功させるコツ
未経験から電気工事士に転職するにあたって、押さえておきたい実践的なポイントを4つ紹介します。情報収集と準備の質が、採用結果を大きく左右します。
転職前に資格を取るか、入社後に取るかの選択
「先に資格を取ってから転職すべきか」「就職してから取得すべきか」は、多くの未経験者が迷うポイントです。
転職前に資格取得する場合は、採用市場での競争力が高まり、初任給や採用条件が有利になることがあります。一方で、在職中の勉強は時間確保が難しい面も。「今の仕事を続けながら半年〜1年で取得できる見込みがある方」は、先取り取得を強くおすすめします。
入社後取得を前提とする場合は、「資格取得支援制度」「合格時の一時金支給」「受験費用補助」が整っている企業を選ぶことが重要です。求人票で必ずチェックしましょう。
未経験歓迎の求人の見つけ方
電気工事士の求人は、総合求人サイトに加えて建設・工事業界特化の求人サイトにも多数掲載されています。「未経験歓迎」「資格取得支援あり」の絞り込み条件を活用することで、育成に積極的な企業を効率よく探せます。
また、工場・製造業での電気工事士求人に特化した転職エージェントに相談すると、公開求人に出ていない非公開案件を紹介してもらえる場合があります。自己応募だけに頼らず、エージェントを活用することで面接対策のサポートも受けられます。
面接で未経験でも評価される志望動機の伝え方
未経験者が面接で最も問われるのは「なぜ電気工事士を目指すのか」という動機の強さです。以下の3点を具体的に伝えると好印象につながります。
- 電気工事士という職業を選んだ理由(資格の安定性・ものづくりへの関心など)
- 資格取得への取り組み状況(学習中であれば進捗を伝える)
- 長期的に働く意向(業界への理解と継続意思)
「未経験でも覚える姿勢があること」を具体的なエピソードで補強するとさらに説得力が増します。前職での工具使用経験・DIYの経験・理系科目への適性なども有効なアピール素材です。
電気工事会社・ビルメンテナンス・工場設備管理——就職先の選び方
電気工事士の資格を活かせる就職先は複数あります。自分の希望するライフスタイルや働き方に合わせて選ぶことが重要です。
| 就職先 | 特徴 | 年収目安 |
|---|---|---|
| 電気工事会社 | 技術を幅広く習得。現場仕事中心 | 350〜600万円 |
| ビル設備管理 | 屋内作業中心でシフト制が多い | 350〜500万円 |
| 工場設備管理 | 製造ライン保全・安定した就業環境 | 380〜550万円 |
製造業・工場出身の方は、工場設備管理職への転職がスムーズです。現場の設備構造への理解が採用時のアピールになります。
電気工事士のキャリアパスと年収の伸ばし方

電気工事士として入職した後、どのようにキャリアを積み上げていけるのかを把握しておくことは、転職先を選ぶ上でも重要です。ここでは年収相場とキャリアステップを整理します。
電気工事士の平均年収と年齢別の目安
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、電気工事士の平均年収は約550万円です。月額給与・ボーナスを合計したトータルで、正社員・フルタイムの場合の数字です。
年齢別では、20代前半の見習いで300〜380万円からスタートし、30代で450〜550万円、40代以降は500〜700万円が一般的な目安です。企業規模・保有資格・担当する工事の規模によって幅があります。
第一種電気工事士・施工管理技士でキャリアアップ
第二種取得後の次のステップとして、第一種電気工事士の取得があります。第一種では最大電力500kW未満のビル・工場等の大規模施設を担当でき、対応できる現場の幅が広がります。
さらに「電気工事施工管理技士」を取得すると、現場の施工管理業務を担えるようになります。施工管理職は現場監督として工期・安全・品質を管理する役職で、年収600万〜800万円以上も狙えるポジションです。試験情報は電気技術者試験センターで確認できます。
独立・開業という選択肢
電気工事士として一定の経験と実績を積んだ後、独立・開業するルートもあります。個人事業主として電気工事を請け負うスタイルで、うまく案件を確保できれば年収1,000万円超も現実的です。
独立には第二種電気工事士資格に加えて「電気工事業の登録」が必要です。独立前に複数の現場経験を積み、見積もり・施工管理のノウハウを習得しておくことが成功の鍵です。
工場・プラント業界での設備管理職へのステップアップ
製造業・工場業界においては、電気工事士資格は設備管理のプロとして評価されます。工場の電気設備保全担当として採用された後、設備管理リーダー→設備管理マネージャーというキャリアラインも一般的です。
工場勤務の経験がある方なら、電気工事士資格を取得することで「ライン作業員→設備保全エキスパート」へキャリアを大きくシフトできます。年収400万円台から600万円台へのジャンプアップも十分に狙えます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 電気工事士の資格は独学で取得できますか?
はい、独学での取得は十分可能です。学科試験は過去問の繰り返しが効果的で、2〜3ヶ月の学習時間を確保できれば合格圏内に入れます。技能試験は実際に配線作業を行う実技試験のため、候補問題に合わせた練習キットを購入して手を動かす練習が必要です。独学に不安がある方は通信講座(SAT・JTEXなど)を活用する選択肢もあります。
Q2. 未経験・無資格で電気工事会社に入社できますか?
できます。電気工事業界では未経験・無資格での入社を前提とした「見習い採用」が広く行われています。入社後は有資格の先輩のもとで補助作業からスタートし、会社のサポートを受けながら資格取得を目指すのが一般的な流れです。求人票に「資格取得支援制度あり」と記載されている企業を優先して探すと良いでしょう。
Q3. 30代・40代の未経験でも採用されますか?
30代は十分に採用の可能性があります。電気工事業界は若手不足が深刻なため、やる気と体力のある30代は歓迎されるケースが多いです。40代の場合は、資格を事前に取得してから転職活動する方が採用率が上がります。また、前職に製造・建設・設備関連の経験があれば、それをアピールすることで未経験のハンデを補えます。
Q4. 電気工事士の仕事はきついですか?
体力的な負荷はある程度あります。現場での配線作業は、狭い場所での作業・高所での作業・重い機材の運搬が含まれます。ただし、工場の設備管理職やビルメンテナンスの場合は屋内作業中心でシフト勤務のため、比較的体力的な負担が少ない働き方も選べます。自分の体力・希望する働き方に合った就職先を選ぶことが重要です。
まとめ:未経験から電気工事士への転職は十分に実現できる
電気工事士は、未経験からでも着実に目指せる国家資格です。この記事の要点をまとめます。
- 電気工事業界の求人の約7割が未経験歓迎で、見習い採用が浸透している
- 第二種電気工事士は学歴・年齢・職歴不問で受験でき、独学2〜3ヶ月での合格が可能
- 学科試験の合格率は約59%、技能試験は約72%で、しっかり準備すれば合格できる難易度
- 工場・ビルメン・電気工事会社など就職先の選択肢は幅広く、年収は平均約550万円
- 第一種・施工管理技士へのステップアップや独立開業で、さらに高い年収も狙える
工場での経験をお持ちの方には、電気工事士資格が設備保全職へのキャリアチェンジに直結します。「手に職をつけたい」「安定した技術職に就きたい」と考えているなら、ぜひ第二種電気工事士の取得を第一歩にしてみてください。
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