製造業で衛生管理者になるには、第一種衛生管理者免許(または衛生工学衛生管理者免許)が必要です。第二種では、製造業の事業場の衛生管理者として選任できません。

常時50人以上の労働者がいる工場には、衛生管理者の選任が法律で義務づけられています。この記事では、選任のルール、製造業での仕事内容、受験資格や合格率、取得後のキャリアまで、法令と協会の公式情報をもとに整理します。

これから資格取得を考えている方も、職場で選任を任されそうな方も、まずは自分が何を準備すればよいかを確認してください。

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製造業で衛生管理者が必要な理由:選任義務の対象と「第一種」が求められる根拠

製造業で衛生管理者が必要な理由と第一種が求められる根拠

製造業で衛生管理者が欠かせないのは、事業場の規模によって選任が義務になっているためです。まず、誰がどんな条件で選任されるのかを確認しましょう。

衛生管理者とは?労働安全衛生法で選任が義務づけられた職種

衛生管理者は、労働安全衛生法第12条に基づき、事業者が選任する職種です。労働者の健康障害の防止、衛生教育、健康診断、労働災害の原因調査と再発防止といった業務のうち、衛生に関する技術的な事項を管理します。

また、衛生管理者には、衛生に関する措置を行える権限が与えられます。職場に健康を損なうおそれがあれば、改善に向けて動ける立場です。

製造業で選任できるのは第一種・衛生工学衛生管理者など(第二種は不可)

労働安全衛生規則第7条では、業種ごとに選任できる資格が決まっています。製造業(物の加工業を含む)では、第二種衛生管理者免許だけでは選任できません。

製造業で選任できるのは、第一種衛生管理者免許または衛生工学衛生管理者免許を持つ人です。このほか、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなど、規則第10条に挙げられた人も選任できます。

第二種が使えるのは、製造業や建設業などを除く「その他の業種」です。工場で衛生管理者を目指すなら、最初から第一種を受験するのが基本です。

選任が必要な事業場と人数【労働安全衛生規則第7条】

衛生管理者の選任が必要なのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場です(労働安全衛生法施行令第4条)。人数は会社全体ではなく、工場など「事業場」の単位で数える点がポイントです。

選任する人数は、労働者の数に応じて次のとおり決まっています。

常時使用する労働者数 衛生管理者数
50〜200人 1人以上
201〜500人 2人以上
501〜1,000人 3人以上
1,001〜2,000人 4人以上
2,001〜3,000人 5人以上
3,001人以上 6人以上

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第7条

選任の期限・専属と専任の違い・罰則

衛生管理者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。選任したら、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告します(労働安全衛生規則第7条)。

原則として、その事業場に「専属」の人を選びます。さらに、常時1,000人を超える事業場などでは、衛生管理者のうち少なくとも1人は「専任」(ほかの業務を兼ねない人)にする必要があります。

専任が義務になるのは、常時1,000人超の事業場のほか、常時500人超で坑内労働や一定の有害業務に常時30人以上が従事する事業場です。多くの工場では、この条件に当たらない限り、ほかの業務と兼ねて担当できます。

選任義務に違反した場合は、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象になります。

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第12条・第120条

製造業の衛生管理者の仕事内容:巡視・作業環境・健康診断・衛生委員会

製造業の衛生管理者の仕事内容

製造業の現場には、有機溶剤、粉じん、騒音、暑熱など、健康に影響する要因が多くあります。衛生管理者は、こうしたリスクを減らす役割を担います。法令で決まっている仕事を、5つに分けて見ていきましょう。

衛生管理者の仕事の範囲は法律で決まっている

衛生管理者が管理するのは、労働安全衛生法第10条第1項に挙げられた業務のうち、衛生に関する技術的な事項です。具体的には、次の4つにあたります。

  • 労働者の健康障害を防止するための措置
  • 労働者の衛生のための教育
  • 健康診断の実施と、健康の保持増進のための措置
  • 労働災害の原因調査と再発防止対策

これらを日々の業務に落とし込んだものが、以降で説明する巡視・作業環境の管理・健康診断・衛生委員会・災害対応です。

週1回以上の職場巡視と、改善のための措置

衛生管理者は、少なくとも毎週1回、作業場などを巡視します。設備、作業方法、衛生状態に有害のおそれがあれば、直ちに労働者の健康障害を防ぐための措置を講じる決まりです(労働安全衛生規則第11条)。

製造現場では、機械の稼働状況や換気、保護具の着用状況などが確認の対象になります。巡視の頻度が法令で決まっているのは、衛生管理者の特徴的な業務です。

作業環境と有害業務の管理(化学物質・熱中症対策を含む)

有害な業務を行う屋内作業場などでは、事業者に作業環境測定とその記録が義務づけられています(労働安全衛生法第65条)。測定結果に基づく対策づくりは、衛生委員会の付議事項にも含まれます(規則第22条)。

化学物質については、リスクアセスメント対象物を扱う事業場で、衛生管理者とは別に「化学物質管理者」の選任が必要です(規則第12条の5)。役割は分かれているため、現場では連携して進めます。

また、暑熱な場所で熱中症のおそれがある作業を行うときは、報告体制や悪化防止の手順を、事業者があらかじめ整える決まりです(規則第612条の2)。衛生管理者は巡視や委員会を通じて、こうした対策の定着に関わります。

健康診断と衛生委員会、衛生教育

事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回の定期健康診断を実施します(規則第44条)。有機溶剤を扱う業務などは、雇入れ時・配置替え時と、その後6ヶ月以内ごとに1回の特殊な健康診断が必要です(有機溶剤中毒予防規則第29条)。

常時50人以上の事業場では、衛生委員会も設置します(施行令第9条)。委員には衛生管理者から事業者が指名した人が入り、健康障害の防止策や、健康診断の結果への対応などを話し合います(法第18条、規則第22条)。

新しく入った人や配置が変わった人への衛生教育も、衛生管理者が関わる領域です。保護具の使い方や有害物の取り扱いなど、現場に合わせた内容を企画します。

労働災害が起きたときの原因調査と再発防止

災害や健康障害が起きたとき、衛生管理者は原因の調査と再発防止策の検討に加わります。法第10条第1項に「労働災害の原因調査及び再発防止対策」が含まれているためです。

製造業では、機械による事故だけでなく、有害物質への曝露や熱中症なども対象になります。原因を現場の状況と照らして整理し、設備の改善や作業手順の見直しにつなげます。

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」第4条・第9条

第一種衛生管理者の受験資格・試験内容・合格率【令和7年度の最新データ】

第一種衛生管理者の受験資格・試験内容・合格率

第一種衛生管理者は、国家資格です。受験には学歴に応じた実務経験が必要で、試験は学科のみです。受験資格、試験の中身、合格率を、安全衛生技術試験協会の公式情報で確認します。

第一種と第二種の違いを表で確認

第一種は全業種で衛生管理者になれる免許、第二種は有害業務の少ない業種に限られる免許です。製造業が対象になるのは第一種です。

項目 第一種 第二種
製造業で選任 できる できない
有害業務の出題 あり なし
出題数 44問 30問
合格率(令和7年度) 46.8% 48.7%

第二種の免許を持っている人が第一種を受ける「特例第一種」という受験区分もあります。この場合は、有害業務に係る労働衛生と関係法令の2科目(各10問)で受験できます。

受験資格は「学歴+労働衛生の実務経験」で決まる

第一種の受験には、学歴に応じた労働衛生の実務経験が必要です。代表的な区分は次のとおりです。

学歴 実務経験
大学・短大・高専卒 1年以上
高校・中等教育学校卒 3年以上
学歴を問わない場合 10年以上

専門学校(専修学校)や各種学校は、大学・短大・高専には含まれません。また、実務経験は申込時に事業者証明書で証明する必要があります。上の表は代表的な区分で、このほかの区分もあるため、自分が当てはまるかは協会の「受験資格アシスト」で確認できます。

試験科目・合格基準・受験手数料

第一種の試験時間は3時間(午後1時30分〜4時30分)で、全44問、合計400点の学科試験です。科目と配点は次のとおりです。

科目 範囲 出題数(配点)
労働衛生 有害業務に係るもの 10問(80点)
労働衛生 それ以外のもの 7問(70点)
関係法令 有害業務に係るもの 10問(80点)
関係法令 それ以外のもの 7問(70点)
労働生理 — 10問(100点)

合格基準は、科目ごと(範囲が分かれている科目は範囲ごと)の得点が40%以上で、かつ合計が60%以上です。得意な範囲で稼げても、1つの範囲が基準を下回ると不合格になります。

受験手数料は8,800円です。試験日程はセンターごとに異なるため、協会の試験日程ページで確認してください。

合格率は令和7年度で46.8%(66,401人が受験)

令和7年度の第一種衛生管理者試験は、受験者66,401人に対して合格者31,046人で、合格率は46.8%でした。第二種は受験者40,653人、合格者19,796人で、合格率は48.7%です。

受験者の約半数が合格している試験ですが、範囲ごとの足切りがあります。製造業の方は、有害業務に係る範囲が仕事と結びつけやすい一方、苦手な範囲を残さない学習が欠かせません。

出典:安全衛生技術試験協会「統計」、同「第一種・第二種衛生管理者の紹介」、同「試験手数料」

資格を取ると何が変わる?製造業でのキャリア・転職・資格手当

資格を取ると何が変わる?製造業でのキャリア・転職・資格手当

衛生管理者の資格は、取得すれば自動的に待遇が変わるものではありません。ただ、選任義務のある仕事に直結するため、製造業では活かせる場面があります。期待できること、会社ごとに違うことを分けて見ていきます。

選任義務があるため、社内で必要とされる資格

常時50人以上の事業場は、選任の事由が発生してから14日以内に衛生管理者を選ぶ必要があります。有資格者が社内にいれば、事業者はその人から選任できます。

そのため、衛生管理者は事業場にとって欠かせない役割です。現場作業を続けながら、衛生委員会や巡視など、職場全体の健康管理にも関わる立場に広げられます。

求人・転職での見られ方:応募条件に挙がる例と、経験とのセット

製造業の総務・人事、安全衛生の担当などの求人では、応募条件や歓迎条件に「第一種衛生管理者」が挙がることがあります。履歴書に書ける国家資格のため、書類で伝わりやすいのが利点です。

一方で、資格だけで採用が決まるわけではありません。現場経験や、巡視・健康診断の運用に関わった経験とセットで見られるのが一般的です。応募する前に、求人票の「応募資格」「歓迎条件」で衛生管理者の扱いを確認しましょう。

資格手当・昇給は会社次第:確認したいポイント

資格手当の有無や金額は、会社の規程によって異なります。公的な統計で「製造業の衛生管理者の相場」は確認できなかったため、この記事では金額を示しません。

取得前に確認したいのは次の3点です。

  • 就業規則・賃金規程に資格手当の対象として載っているか
  • 受験費用や教材費など、取得支援制度があるか
  • 選任された後に役割や手当が変わるか

転職先を探すときは、求人票の給与・待遇欄に「資格手当」の記載があるかを見ます。記載がなければ、面接で確認しておくと安心です。

関連資格への広がり:作業環境測定士・労働衛生コンサルタント

協会は、衛生管理者のほかに、作業環境測定士と労働衛生コンサルタントの試験も実施しています。いずれも労働衛生の分野に関わる国家試験です。

どちらも受験資格が区分ごとに決まっているため、挑戦する場合は協会の案内で条件を確認してください。衛生管理者としての経験を、次の資格につなげる選択肢もあります。

製造業で働きながら衛生管理者を目指す4ステップ

製造業で働きながら衛生管理者を目指す4ステップ

工場で働きながら取得するなら、手順を先に把握しておくとスムーズです。受験の申し込みから合格後の手続きまでを、4つのステップにまとめました。

STEP1:受験資格と「労働衛生の実務」を確認する

最初に、自分の学歴と実務経験が受験資格に当てはまるかを確認します。協会の「受験資格アシスト」で、実務経験の年数と卒業した学校を選ぶと判定できます。

実務経験の証明には、事業者証明書が必要です。どの業務が「労働衛生の実務」にあたるかは、勤務先の人事・総務に相談し、不明な点は各安全衛生技術センターに確認しましょう。

STEP2:試験日程を確認して申し込む

試験は、全国の安全衛生技術センターで実施されています。日程と会場は、協会のサイトで確認できます。申込みは、協会の受験申請システムによるオンライン申請と、書面による申請の両方に対応しています。

受験票の発行後は、試験日の変更や手数料の返還ができません。仕事のシフトを確認してから申し込むのがおすすめです。

STEP3:過去問を中心に学習する

学習では、協会が公表している試験問題を使い、出題の傾向をつかみます。範囲ごとに40%以上が必要なため、苦手な範囲を残さないように進めます。

製造業で働いている方は、有害業務に係る労働衛生・関係法令の範囲を、現場の設備や作業と結びつけて覚えると理解しやすくなります。必要な勉強時間は人によって違い、公式な目安は示されていません。

STEP4:合格後は免許申請をして、会社に報告する

試験に合格しても、それだけでは衛生管理者になれません。合格通知書を受け取ったら、免許申請をしないと免許証は交付されません。申請先は、東京労働局免許証発行センターです。

免許証を受け取ったら会社に伝え、事業者が衛生管理者として選任します。選任後は、事業者が所轄の労働基準監督署へ報告します。

出典:安全衛生技術試験協会「合格後の手続き」

よくある質問(Q&A)

Q. 製造業の衛生管理者は、第一種と第二種のどちらが必要ですか?

第一種衛生管理者免許(または衛生工学衛生管理者免許)が必要です。製造業では、第二種衛生管理者免許だけでは選任できません(労働安全衛生規則第7条)。

Q. 従業員が50人未満の工場でも、衛生管理者は必要ですか?

衛生管理者の選任義務は、常時50人以上の事業場が対象です。常時10人以上50人未満の事業場では、安全衛生推進者(業種によっては衛生推進者)の選任が必要になります(労働安全衛生法第12条の2)。

Q. 工場での勤務経験だけで、受験資格の実務経験を満たせますか?

工場で働いているだけで、自動的に満たせるとは限りません。申込時に、事業者が実務経験を証明する「事業者証明書」が必要です。どの業務が対象になるかは、協会の受験資格アシストや、各安全衛生技術センターで確認してください。

Q. 第一種衛生管理者の試験は、独学でも合格できますか?

独学で合格を目指すことは可能です。協会は過去の試験問題を公表しており、令和7年度の合格率は46.8%でした。ただし、範囲ごとに40%以上が必要なため、苦手な範囲を残さない計画を立てましょう。

Q. 衛生管理者の資格は、製造業の転職で有利になりますか?

求人によっては、応募条件や歓迎条件に挙がることがあります。ただし、資格だけでなく経験もあわせて見られるのが一般的です。応募先の求人票で、衛生管理者がどう扱われているかを確認してください。

まとめ:製造業の衛生管理者は「第一種」を取って、選任義務のある現場を支える仕事

製造業の事業場(常時50人以上)には、衛生管理者の選任が義務づけられています。選任できるのは第一種衛生管理者免許などの持ち主で、第二種では対象外です。

仕事の中心は、週1回の巡視、作業環境の管理、健康診断と衛生委員会、災害時の原因調査です。取得には学歴に応じた実務経験と事業者証明書が必要で、令和7年度の合格率は46.8%でした。

資格手当や転職での評価は会社や求人で変わるため、まずは勤務先の規程や求人票で確認してみてください。受験資格の確認から始めれば、次の一歩を踏み出しやすくなります。

 

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著者:ジョブハウス工場 編集部

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