電気工事士の資格は、就職・転職市場で高い需要を誇る国家資格のひとつです。「第二種を取得したばかりで就職先がわからない」「未経験でも採用してもらえるのか」「工場や製造業でも働けるのか」——そんな疑問を持つ方に向けて、就職先の種類から選び方のコツ、内定を獲得するための準備まで、具体的に解説します。

電気工事士の第一種・第二種、就職での違いとは?

電気工事士の第一種・第二種、就職での違いとは?

電気工事士の資格には「第一種」と「第二種」の2種類があります。就職活動を始める前に、それぞれの違いと市場価値を正確に理解しておくことが大切です。

第二種電気工事士でできる工事範囲

第二種電気工事士は、一般住宅や小規模な店舗・事務所(低圧600V以下)の電気工事を行う資格です。住宅の照明配線やコンセント設置、分電盤の工事などが主な対象となります。

受験資格に学歴や経験の制限はなく、誰でも受験できます。筆記試験と技能試験の2段階構成で、年2回(上期・下期)実施されています。2023年度の第二種電気工事士の上期筆記試験合格率は約52%、技能試験合格率は約72%と、計画的に勉強すれば十分に合格を狙える資格です。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター(ECEE)

第一種電気工事士でできる工事範囲

第一種電気工事士は、第二種の業務範囲に加えて、最大電力500kW未満の工場・ビル・商業施設などの高圧受電設備の工事も担当できます。大型施設や製造ラインへの電力供給に関わる工事が可能になるため、活躍の幅が大きく広がります。

第一種の免状交付には一定期間の実務経験が必要です。まず第二種で実務経験を積みながら第一種を目指すのが、一般的なキャリアパスとなっています。

就職市場では第二種から目指すのが現実的な理由

電気工事士を取得したい方の多くは、まず第二種から始めることが現実的です。理由は以下の3点です。

  • 受験要件がなく、未経験・無資格の状態でも挑戦できる
  • 求人票で「第二種電気工事士保有者歓迎」と明記されているケースが最も多い
  • 資格取得後すぐに現場で働けるため、企業側も採用しやすい

第二種取得後に実務経験を重ねながら第一種を狙うことで、着実にキャリアアップできます。

資格なし・勉強中でも応募できるケース

「まだ資格を持っていない」という方も、就職活動を始めることは可能です。電気工事業界では、「資格取得見込み」や「入社後取得支援あり」と明記した求人が多数存在します。

特に中小規模の電気工事会社や工場の設備部門では、若手のポテンシャルを重視して採用し、入社後に資格取得をサポートする体制を整えている企業が増えています。求人票の条件欄に「取得予定者可」と書かれている場合は積極的に応募してみましょう。

電気工事士が就職できる主な職場・業種5選

電気工事士が就職できる主な職場・業種5選

電気工事士の資格は、特定の業種に限らず幅広い職場で求められています。自分のライフスタイルや働き方の希望に合わせて業種を選ぶことが、長く活躍できる職場に出会うための第一歩です。

電気工事専門会社(最も求人数が多い)

電気工事専門会社は、住宅・ビル・商業施設・公共施設などを対象に電気設備の設計・施工・メンテナンスを行う会社です。電気工事士の求人数が最も多い業種であり、資格取得直後の方が就職しやすい環境が整っています。

仕事の種類は内線工事(配線・照明・コンセント)から弱電工事(LAN・防犯カメラ)まで多岐にわたります。現場は屋外・屋内問わず、体力を使う場面も多い傾向にあります。

ビル・施設管理(設備管理)

オフィスビルや商業施設・病院などの電気設備を日常的に点検・保守する仕事です。新規工事よりも定期的なメンテナンスや不具合対応がメインとなるため、体力面の負担が比較的少なく、夜勤や交代制が多い一方で残業が少ないという特徴があります。

40〜50代以降も長く働けるキャリアとして人気が高く、安定した雇用環境を求める方に向いている職種です。

工場・製造業の設備電気担当

工場や製造ラインの電気設備(制御盤・モーター・照明・コンセント設備など)の保守・点検・修理を担当するポジションです。工場での電気設備管理は製造ラインを止めないための最重要業務であり、電気工事士の資格保有者を優遇している製造業の求人は非常に多くあります。

特にPLC(プログラマブルロジックコントローラ)の知識や機械保全の経験があると、採用競争力がさらに上がります。工場勤務は土日休みや寮完備の求人も多く、生活を安定させながら技術を磨きたい方に適しています。

施工管理・現場管理職へのキャリアパス

電気工事士として現場経験を積んだあとのキャリアパスとして、施工管理(現場監督)があります。電気工事施工管理技士(1級・2級)の資格を取得することで、工事全体の工程・品質・安全を管理するマネジメント職に就くことができます。

施工管理職は現場作業よりも年収が高い傾向にあり、40〜50代でも需要が高い職種です。電気工事士として働きながら上位資格を目指す方は、長期的なキャリアプランとして検討してみてください。

鉄道・太陽光・サービスエンジニアなど

電気工事士の資格が活かせるその他の業種として、以下のような分野もあります。

  • 鉄道工事会社:架線工事・信号システムなど。公共インフラを支える安定した仕事
  • 太陽光・再生可能エネルギー関連:太陽光パネルの設置・配線工事。脱炭素政策の追い風で需要拡大中
  • サービスエンジニア:電機メーカーや医療機器メーカーで自社製品の設置・保守を担当。メーカー系ならではの安定した待遇が期待できる

未経験でも電気工事士として就職できる理由

「電気工事士として働きたいが、実務経験がない」という方も少なくありません。しかし、電気工事業界は未経験者でも就職しやすい環境が整っています。その理由を解説します。

慢性的な人手不足で若手需要が高い

電気工事業界では、技術者の高齢化と若手離れによる人手不足が深刻になっています。国土交通省の調査によると、建設業全体の就業者数は減少傾向にあり、なかでも電気・設備系の技術者不足は特に顕著です。

このため、多くの電気工事会社や設備管理会社では「未経験可」「第二種取得予定者歓迎」といった条件で積極的に採用を行っています。20〜30代の若手であれば、資格がなくても見習いや助手として採用し、OJTで育てていく体制をとる企業が多くあります。

出典:国土交通省 建設工事施工統計調査

資格取得支援制度がある企業が多い

中小規模の電気工事会社を中心に、資格取得費用を会社が全額負担する制度や、業務時間内に試験勉強をさせてくれる企業が増えています。入社後に第二種電気工事士の取得をサポートし、一定期間勤務したら全額負担するという契約にしているケースも珍しくありません。

求人票を見るときは「資格取得支援制度あり」「入社後の資格取得OK」「受験費用補助」といったキーワードを確認すると、未経験でも挑戦しやすい職場を見つけやすくなります。

働きながら第二種電気工事士を目指せる

第二種電気工事士は、年に2回(上期6月頃・下期10月頃)実施されています。見習いや助手として働きながら、空き時間にテキストで勉強して受験するスタイルが一般的です。

参考書や通信講座も充実しており、独学でも合格実績が出ている資格です。詳しい試験日程や受験申込については、電気技術者試験センター(ECEE)の公式サイトで最新情報を確認してください。

業界全体で電気工事士の価値が上がっている

EV(電気自動車)の普及やスマートホームの拡大、再生可能エネルギー関連設備の増加など、社会全体の電動化が進むにつれて、電気工事士の需要は今後さらに高まる見通しです。

法律で定められた独占業務資格であるため、AIや機械に仕事が奪われにくいという安定性も魅力です。今のうちに資格を取得して実務経験を積んでおくことは、将来的な市場価値の向上につながります。

電気工事士の年収相場と収入アップの4つの方法

電気工事士の年収相場と収入アップの4つの方法

「資格を取得したら実際にどのくらい稼げるのか」は、就職前に最も気になるポイントのひとつです。ここでは年収の目安と、収入をアップさせるための具体的な方法を紹介します。

第二種と第一種で変わる年収の目安

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、電気工事士の平均年収は約500〜550万円程度とされています。ただし、資格の種類・勤務先の規模・地域・経験年数によって実態は大きく異なります。

資格・経験 年収目安
第二種・未経験〜3年 300〜400万円
第二種・経験3〜10年 400〜550万円
第一種・中堅〜ベテラン 550〜700万円

上記はあくまで目安であり、大手企業・都市部・管理職ポジションでは700万円を超えるケースもあります。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「電気工事士」

資格手当が充実した企業を選ぶ

電気工事士の求人では、月5,000〜30,000円程度の資格手当を設定している企業が多くあります。第一種の場合は手当の金額がさらに高い傾向にあります。求人票を比較する際は、基本給だけでなく「資格手当の有無と金額」を必ず確認しましょう。

資格手当は固定残業代や住宅手当と並んで、年収に大きく影響する手当のひとつです。月2万円の資格手当であれば、年間で24万円のプラスになります。

関連資格の追加取得でキャリアを広げる

電気工事士と組み合わせることで市場価値が高まる資格には、以下のようなものがあります。

  • 電気工事施工管理技士(1級・2級):現場監督・施工管理職へのキャリアチェンジに必要
  • 第三種電気主任技術者(電験三種):高圧受電設備の保安管理ができる上位資格
  • 消防設備士:スプリンクラー・火災報知器など消防設備の工事・整備が可能に
  • 認定電気工事従事者:第二種保有者が一定の範囲の高圧工事に携われるようになる

複数の資格を組み合わせることで、単価の高い仕事を受注できるようになり、独立・フリーランス志向の方にも道が開けます。

都市部・大手企業への転職で年収を底上げ

同じ資格・経験でも、勤務地と企業規模によって年収は大きく変わります。都市部(東京・大阪など)の大手企業や上場企業グループに移ることで、年収が100〜200万円アップするケースも珍しくありません。

地方から都市部への転職を検討する際は、引っ越し費用補助や社宅・寮完備の求人も多いため、総合的な待遇を比較して判断することが大切です。

電気工事士の就職活動を成功させるポイント

電気工事士の資格があっても、就職活動の進め方を誤ると時間と機会を無駄にしてしまいます。以下のポイントを意識することで、内定獲得の確率を高められます。

「資格取得予定」でも応募できる求人を狙う

電気工事士を目指している最中の方は、「資格取得見込み・予定者歓迎」と記載された求人を積極的に探しましょう。求人サイトやハローワーク(公共職業安定所)で検索する際に、「未経験可」「資格取得支援」などのキーワードを組み合わせると絞り込みやすくなります。

特に工場・製造業の設備部門や中小電気工事会社は、スキルより人柄・意欲を重視する採用方針をとっているケースが多く、若手にとって狙い目の職場です。

業種の選び方で働き方・ライフスタイルが大きく変わる

電気工事士の就職先は業種によって、働き方のスタイルが大きく異なります。自分の生活設計と照らし合わせて、優先順位を整理してから求人を探すことが重要です。

業種 特徴・働き方 こんな人向け
電気工事専門会社 現場出張・体力仕事多め 技術を早く身につけたい
ビル・施設管理 夜勤あり・残業少なめ 長く安定して働きたい
工場・製造業 土日休み・寮あり多い 生活を安定させたい

面接で差がつく志望動機の作り方

電気工事士の就職面接では、「なぜ電気工事士を目指したのか」「なぜこの会社を選んだのか」を具体的に伝えることが重要です。「安定しているから」「資格があったから」という理由だけでは、他の候補者と差がつきません。

評価されやすい志望動機の組み立て方は、以下の流れです。

  • きっかけ(電気に興味を持った原体験・資格を取ろうと思った理由)
  • 応募先の特徴との一致(工場設備・ビル管理・施工管理など)
  • 入社後にどんな技術者になりたいか(具体的な目標)

短期間で辞めない意欲と、長期的なキャリアビジョンを伝えることが採用担当者の信頼につながります。

転職エージェントでミスマッチを防ぐ

電気工事士の求人は、ハローワーク・求人サイト・転職エージェントの3つのルートで探すことができます。なかでも転職エージェントは、非公開求人を紹介してもらえるほか、面接対策・条件交渉まで無料でサポートしてもらえる点が大きなメリットです。

「思っていた仕事と違った」「残業や休日が求人票と異なっていた」といったミスマッチは、自力で求人を探す場合に起こりやすいトラブルです。転職エージェントを活用することで、実際の職場環境を事前に確認できる可能性が高まります。

電気工事士の就職に関するよくある質問

電気工事士の資格がなくても就職できますか?

資格がなくても就職できる会社は多くあります。電気工事会社や工場の設備部門では「未経験可・資格取得支援あり」の求人が豊富です。入社後にOJTで技術を学びながら、第二種電気工事士の取得を目指すスタイルが一般的です。ただし、資格保有者と比べると応募できる求人の幅が狭まるため、並行して試験勉強を進めることをおすすめします。

第二種電気工事士で工場の電気設備を担当できますか?

担当できるケースがあります。工場の電気設備のうち、一般的な低圧(600V以下)の配線・コンセント・照明設備の工事は第二種の資格範囲内です。ただし、高圧受電設備(キュービクルなど)の工事は第一種電気工事士または電気主任技術者が必要になります。工場によって扱う設備の規模が異なるため、求人票の業務内容を事前に確認してから応募することが大切です。

電気工事士の就職で有利な追加資格はありますか?

複数の資格が評価されます。特に「電気工事施工管理技士(2級から)」「消防設備士」「認定電気工事従事者」は、取得難易度に対して市場価値が高く、採用時の評価アップが期待できます。工場・製造業での活躍を目指す場合は「機械保全技能士」との組み合わせも効果的です。いずれも電気工事士の資格を活かしながら並行して取得できます。

工場と電気工事専門会社、どちらが向いていますか?

働き方の希望によって異なります。「体を動かしながら多様な現場経験を積みたい」「技術を幅広く身につけたい」という方には電気工事専門会社が向いています。一方、「土日休みで安定した職場で働きたい」「一つの環境でじっくり専門性を深めたい」という方には工場・製造業の設備担当がおすすめです。どちらも電気工事士の資格が評価される職場であるため、自分のライフスタイルを基準に選ぶとよいでしょう。

まとめ:電気工事士の就職は「目標から逆算」して動こう

電気工事士は、就職・転職市場で安定した需要がある国家資格です。第二種から始めて実務経験を積み、第一種や施工管理技士へのステップアップを視野に入れることで、長期的なキャリアを築くことができます。

就職先は電気工事専門会社・ビル管理・工場・施工管理など多岐にわたり、業種によって働き方も大きく変わります。「どんな環境で、どんな働き方をしたいか」という視点を持ったうえで求人を探すことが、ミスマッチのない就職につながります。

資格がまだない方も、取得予定者歓迎の求人を活用しながら並行して勉強を進めることで、スタートのタイミングを遅らせずに動き出せます。まずは自分の優先条件を整理し、情報収集から始めてみてください。

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