製造業でお仕事をお探しの方も、すでに製造業で働かれている方も。「玉掛け作業」というものがどんなものか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。
「そもそも玉掛け作業ってどんな仕事?」
「クレーンの作業と同じじゃないの?」
「専門資格があるみたいだけど、取っておいた方がいいの?」
そんな謎の多い玉掛け作業について、どんな仕事なのかを細かくご説明します。さらに製造業界内で重宝される玉掛け資格の取得方法もお教えするので、ぜひ参考にしてみてください。
玉掛けってどんな仕事?
まずは玉掛けとは何かについておさらいしましょう。
<玉掛けとは?>
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そして玉掛け作業に関わるためには、特別教育か技能講習のいずれかを受講して資格を取る必要があります。資格の詳細については、後の章で説明します。
玉掛けという言葉の由来とは
言葉の由来は諸説ありますが、最も有力な説の一つとして、掛け軸を掛ける際に瑪瑙や琥珀などの宝石(=玉)を使ったことが由来と言われています。つまりフックに荷物を掛ける様が掛け軸を掛けるのと似ているというわけです。
慎重な作業がとても大切!
工場や建設現場でよく見られるクレーンを使った業務には、玉掛けの技術が必要です。というのも、重い荷物を高く持ち上げる際にロープが切れてしまったり、荷物がバランスを崩して落ちてしまったら、大惨事になりかねません。このような事態を避けるために、玉掛け技術者はロープの強度や長さはもちろん、クレーンで持ち上げた時の角度やバランスが正しいかも、知識として身につけています。つまり、作業現場の安全を守るためにも、玉掛け技術者は欠かせない存在です。
玉掛けの主な作業
一言に玉掛けと言っても、クレーン車のフックに荷物を掛けたり外したりするだけではありません。
主に以下のような作業が発生します。
<玉掛けの作業6ステップ>
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これらの作業の他にも「クレーンをどのように誘導するか」や「荷物の重さや形状に合った吊り下げ方は何か」「どのワイヤーロープを使用するか」なども玉掛け技術者が考えます。
中でも最も重要なのが、フックに荷物を吊り下げる技術です。主に
- クレーンのフックに荷物を縛った紐を掛ける場合
- フックに結びつけた紐を荷物に掛ける場合
の2つがあります。
(1)クレーンのフックに荷物を縛った紐を掛ける場合
フックにロープなどを掛ける方法には大きく分けて4つの方法があります。
<フックにロープを掛ける方法4つ>
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それぞれについて、一つずつ見ていきましょう。
(A)目掛け
目掛けは玉掛けの中で最もベーシックな掛け方と言えるでしょう。簡単にいうと、フックにワイヤーロープのアイ(輪っかとなる部分)を掛ける方法です。場合によっては1〜4本のロープを吊る場合もあります。一見すると簡単そうに思えますが、吊り荷が非対称な場合はバランスの取るのが大変なケースも。さらに複数のロープを吊る場合はお互いが重ならないよう配慮しなければならないので、想像以上に大変な作業とも言えるでしょう。
(B)半掛け
半掛けは、目掛けと違いフックにワイヤーロープのアイ(輪っかとなる部分)を引っ掛けません。その代わりに、ワイヤーロープそのものを直接引っ掛けるのが半掛けです。これも目掛け同様に複数本のロープを引っ掛ける場合があります。吊り荷に吊り手がついている場合や、常に同じ吊り荷を運ぶ場合によく用いられる方法です。しかし、バランスを安定させるのが難しいため、この方法にも特殊な技術や知識が必要です。
(C)あだ巻き掛け
あだ巻き掛けの特徴は、クレーンのフックにワイヤーロープを1回巻きつけることです。半掛けと似ている手法ですが、あだ巻き掛けはワイヤーローブが滑るのを防ぐため、荷物の重心が中心になり吊り荷によく用いられます。ただしあだ巻き掛けはワイヤーロープが摩耗してしまうので、作業後はワイヤーロープを修理しなければなりません。なので、太いワイヤーロープははあだ巻き掛けは使用できないそうです。
(D)肩掛け
肩掛けはフックの6の字を形作るちょうど上の部分(肩)にワイヤーロープを巻きつける手法です。ワイヤーロープをフックに巻きつけるという点ではあだ巻き掛けと似ていますが、肩掛けの方がロープの摩耗が少ないという特徴があります。しかし、フックの形状によっては肩掛けを用いることができないので、限定的な手法とも言えるでしょう。
(2)フックに結びつけた紐を荷物に掛ける場合
吊り荷に結びつけたロープをフックに掛ける方法も大きく分けて5つあります。
<吊り荷に掛ける方法5つ>
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それぞれについて、詳しく見てみましょう。
(A)目掛け
吊り荷の吊り金具にワイヤーロープのアイ(輪っかの部分)を掛けるのが、目掛けです。バランスが取りやすい技法ですが、万が一ロープが緩むと吊り荷が落下しかねないので、重心が偏っている吊り荷には不向きな手法と言えます。
(B)半掛け
半掛けは、ワイヤーロープを吊り荷の下に回して掛ける吊り方です。手順がシンプルなので、最も扱いやすく、かつ広く用いられています。しかしこの手法もバランスが肝心で、重心が偏ったり、荷揺れや接触でロープが滑ってしまうと落下事故に繋がりかねません。なのでバランス調整はもちろんワイヤーロープの角度をきちんと把握する必要があります。
(C)目通し(絞り)
目通しはロープのアイ(輪っかの部分)や金具にワイヤーロープと通して縛った状態で吊る手法です。「チョーク吊り」や「縛り吊り」とも呼ばれています。吊り荷が絞りこまれることで、ロープが滑るのを防げたり、長尺の荷物を一括りにして運搬できるのが特長です。しかし、この手法もロープが傷んでしまうため、作業後はワイヤーロープを修理したり交換する必要があります。また、事故防止のためにも、強度が高いロープがしばしば用いられます。
(D)あだ巻き掛け
あだ巻き掛けは、吊り荷にロープを1回巻き付けて吊るす方法です。これも目通し(絞り)と同じく、長尺な吊り荷を運ぶのに適しています。しかし、吊り荷の下にロープを2回まわさなくてはならないため、比較的手間のかかる手法です。
(E)あや掛け
あや掛けは、2本のロープを吊り荷の底面で交差させて吊る手法です。円盤の形状には最も適した吊り方法ですが、ロープが痛みやすいという短所もあります。
玉掛けの資格を取るには?
ここまでで「玉掛けは、結構特殊な技術がいるんだな」と感じられた方もいますよね。先程も述べた通り、玉掛けは慎重に行わないと吊り荷の落下事故に繋がります。なので、専門の資格が必要なのです。
大きく分けて
- 玉掛け特別教育
- 玉掛け技能講習
いずれも受験資格は無く、18歳以上であればどなたでも受講可能です。どちらの資格を受講するかは、取り扱う吊り荷の重量によって変わります。
1t未満の荷物を扱う場合は「玉掛け特別教育」
もし吊り荷が1t未満なら「玉掛け特別教育」を受ける必要があります。各事業者や教育所で受講でき、その内容は5時間の座学、4時間の実技の計9時間です。受講後に試験はなく、代わりに修了証書が発行されます。この修了証書をもって、作業に従事することが可能になります。
受講料はテキスト教材を含めて15,000円程度。気兼ねなく受けられて、特殊技術も身につくので、できる仕事の幅を広げたい!と思う方は受講することをおすすめします。
1t以上の荷物を扱う場合は「玉掛け技能講習」
そして吊り荷が1tを超える場合は、玉掛け技能講習を受けなければなりません。この資格は一般sh団法人労働技術講習協会が行っており、受講にはFAX、また公式ページからの申込みが必要です。東京では毎月行われていますが、地域によっては受講できるタイミングが異なるので事前にチェックしておきましょう。
講習は3日間行われます。
講習内容 | |
1日目 | 座学 |
2日目 | 座学・学科試験 |
3日目 | 実技・実技修了試験 |
座学の内容は
- 関係法令とクレーンなどに関する知識:1時間
- クレーンなどの玉掛けの方法:7時間
- 玉掛けに必要な力学に関する知識:1時間
- 学科試験:1時間
になります。
一方の実技は
- クレーンなどの運転のための合図に関する知識:1時間
- 玉掛け演習:6時間実技
- 最終試験
という内容です。
玉掛け技能講習が合格できる正答率は学科試験60%、そして実技試験70%。合格率は約96%と、国家試験ながらかなり高めです。つまり学科講習をきちんと受けていれば、不合格になるということはほとんどありません。
そもそも何故合格率が高いかというと、機械操作自体がシンプルだからです。機械操作が難しくなると、その分覚えることも増えミスも増えてしまいます。作業現場の安全性を守る上では大切な資格ですが、比較的取りやすいお得な資格と言えるでしょう。受講料も20,000円ですし、企業によっては資格取得支援制度もあるので、積極的に利用することをおすすめします。
玉掛けの仕事はどれくらい稼げる?
作業内容や試験内容がわかった所で気になるのが「玉掛けの技術を身につけたらどれくらい稼げるの?」という点ですよね。ここで簡単に他の技術士と給与を比較してみました。
職種 | 所定内給与額 |
クレーン運転士 | 291,700円 |
玉掛け技能士 | 285,500円 |
機械製図士 | 284,900円 |
建設機械運転士 | 261,700円 |
ボイラー技士 | 251,600円 |
他の技術士と比較しても玉掛け技能士の給与が高いことが分かります。つまり、一度資格を手にして技術を磨けば、収入アップを目指すこともできるのです。さらに玉掛けの技術は特殊なので、職場でも重宝される人材に成長できるでしょう。
思った以上にメリットが多い玉掛け技能士のお仕事
ここまで、玉掛けの細かい仕事内容から試験内容まで説明してきました。確かに玉掛けは作業場の安全を守る上で重大な責任を負います。しかしその分給与が比較的高水準でありながら、資格の取得は想定外にハードルが低いということがお分かりいただけたでしょうか。「手に職を付けたい」という方に、玉掛け技能士は特におすすめです。
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