溶接の仕事は、たしかに「きつい」と言われやすい仕事です。夏場の暑さ、同じ姿勢での作業、保護具の重さなど、体への負担が重なるためです。

ただし、きつさの度合いは職場の設備や扱う製品によって大きく変わります。対策と職場選びしだいで、無理なく続けている人も少なくありません。

この記事では、溶接がきついと言われる理由、健康リスクと最新の法規制、きつさを和らげる方法、働きやすい職場の見分け方を解説します。溶接の仕事に不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

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溶接の仕事が「きつい」と言われる5つの理由

溶接の仕事が「きつい」と言われる5つの理由

溶接がきついと言われる理由は、大きく5つに分けられます。まずは、何が負担になりやすいのかを整理しましょう。

① 夏場の暑さと保護具で体力を消耗する

溶接は、高温の火花や熱を扱う仕事です。そのため、長袖の作業着や手袋、遮光面を身につけて作業します。夏場は保護具の中が蒸れ、体感温度がさらに上がります。

空調のない工場では、汗が止まらず、水分補給が追いつかないこともあります。熱中症のリスクが高いことが、きついと言われる一番の理由です。

一方で、空調服や送風設備をそろえる工場も増えています。暑さの感じ方は、職場によって大きく違います。

② 同じ姿勢が続き、腰や腕に負担がかかる

溶接は、手元の細かな動きを保ったまま作業する仕事です。中腰や前かがみの姿勢が長く続くため、腰や首、肩に疲れがたまりやすくなります。

大きな部材を扱う現場では、材料を運んだり位置を整えたりする力仕事もあります。製品の大きさや重さによって、体への負担は変わります。

作業台の上で完結する小さな製品を扱う現場なら、姿勢の負担はかなり軽くなります。

③ 火花やアークで、やけど・目のトラブルが起こりやすい

溶接中は、火花(スパッタ)が飛び散ります。小さなやけどは、慣れないうちに起こりやすいのが実情です。

また、アークの強い光を保護面なしで見ると、電気性眼炎(目の炎症)を起こすことがあります。強い痛みが出るため、保護面は必ず着けることが大切です。

正しい保護具の着け方は、入社してすぐの段階で身につけておきましょう。

④ 溶接ヒュームや騒音で体に負担がかかる

溶接では、金属が熱で蒸発してできる微粒子「溶接ヒューム」が発生します。長年吸い込み続けると、じん肺など健康障害につながるおそれがあります。

研磨作業などでは、騒音も出ます。耳栓や防音保護具が必要な現場もあります。

ヒュームへの対策は、法律でも強化されています。詳しくは次の章で解説します。

⑤ 集中力が続かないと仕上がりに響き、技術の習得にも時間がかかる

溶接は、ビード(溶接の跡)の仕上がりが製品の強度を左右します。集中力が切れるとやり直しや不良につながるため、精神的な緊張が続きます。

上達までには経験も必要です。慣れるまでの数か月は「うまくできない」と感じやすく、そこをきついと思う方もいます。

ただし、特別教育で基本を学び、先輩に教わりながら進められる職場なら、不安は大きく減ります。

5つの理由を見ると、きつさの度合いは職場の設備と扱う製品で大きく変わります。溶接そのものがきついのではなく、環境によってきつくなるケースが多いのです。

溶接工の健康リスクと、近年強化された安全ルール

溶接工の健康リスクと、近年強化された安全ルール

溶接の健康リスクは、近年のルール改正で見直しが進んでいます。法律で何が決まっているかを知っておくと、職場選びの判断材料になります。

溶接工が気をつけたい主な6つの健康リスク

主なリスクを、原因と基本の対策とあわせて表にまとめました。

リスク 主な原因 基本の対策
熱中症 高温・保護具の蒸れ 水分補給・休憩・送風
電気性眼炎 アークの強い光 遮光面の着用
やけど 火花・高温の部材 長袖・手袋・前掛け
じん肺など 溶接ヒューム 換気・防じんマスク
腰痛 中腰など同じ姿勢 姿勢の工夫・休憩
難聴 研磨などの騒音 耳栓・防音保護具

保護具を正しく着け、設備が整った職場で働けば、多くのリスクは抑えられます。リスクを知ったうえで対策を選ぶことが大切です。

2021年から溶接ヒュームが特化則の規制対象に

2021年4月1日から、溶接ヒュームは「特定化学物質障害予防規則(特化則)」の規制対象になりました。換気や濃度測定、特殊健康診断などの対策が、事業者の義務になっています。

2023年4月1日からは、呼吸用保護具が顔に合っているかを確かめる「フィットテスト」も義務化されました。対象となる作業では、年に1回の実施が必要です。

出典:厚生労働省・労働局の周知資料(溶接ヒュームの規制)

2025年6月から職場の熱中症対策が義務化

2025年6月1日から、改正労働安全衛生規則によって、職場の熱中症対策が事業者の義務になりました。

対象は、WBGT(暑さ指数)28度以上、または気温31度以上の環境で、連続1時間以上、もしくは1日4時間を超える作業が見込まれる場合です。

事業者は、熱中症の疑いがある人を早く見つける体制と、重症化を防ぐための対応手順をつくり、全員に周知する必要があります。

出典:厚生労働省 千葉労働局「職場における熱中症対策が強化されます」

ルールが整っても、職場ごとの差は残る

法律で決まっているのは、あくまで最低限の基準です。設備の充実度や保護具の支給、休憩の取りやすさは、会社によって差があります。

求人を見るときは「法令を守っているか」だけでなく、実際の設備や働き方まで確認することが重要です。確認ポイントは、後半の章で紹介します。

溶接工の平均年収は約448万円|きつさに見合うのか、向き不向きも解説

溶接工の平均年収は約448万円|きつさに見合うのか

きつい仕事なら、収入に見合うのかも気になるところです。年収の目安と、資格によるキャリアの広がり、向き不向きを整理します。

溶接工の平均年収は448.4万円

厚生労働省の職業情報サイト「jobtag」によると、溶接工の全国平均年収は448.4万円です。

残業や夜勤の有無、勤務先の規模、扱う溶接の種類によって、年収は上下します。平均値はあくまで目安として見てください。

出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「溶接工」

資格や経験を重ねると、仕事の幅が広がる

アーク溶接の業務に就くには、特別教育の修了が必要です。学科11時間と実技10時間以上の教育で、3日間ほどで修了するのが一般的です。

特別教育は、労働安全衛生規則第36条第3号で定められています。未経験の方も、入社後に受講できる職場が多くあります。

さらに、JIS溶接技能者などの資格を取ると、扱える溶接の種類が増え、応募できる求人も広がります。資格の種類や日程は、日本溶接協会の公式サイトで確認できます。

溶接に向いている人の特徴

溶接の仕事に向いているのは、次のような方です。当てはまるものが多いほど、きつさを乗り越えやすいといえます。

  • ものづくりが好きで、完成した製品を見るとうれしい
  • コツコツと同じ作業を続けるのが苦にならない
  • 手先を使う細かな作業が好き
  • 集中して取り組むことが得意
  • 経験を積んで、技術を磨いていきたい

体力に自信がなくても、軽い製品を扱う現場や、設備が整った職場なら続けやすいケースがあります。

向いていないと感じやすい人の特徴

一方で、次のような方は、ミスマッチを感じやすい傾向があります。

  • 暑い環境や粉じんが極端に苦手
  • 同じ姿勢で長時間作業するのが苦手
  • 毎日違う仕事で変化を楽しみたい

ただし、これは「溶接の仕事全般」ではなく、特定の職場環境が合わないだけというケースもあります。扱う製品や設備が変われば、印象が大きく変わることもあります。

溶接のきつさを和らげる5つの対処法

溶接のきつさを和らげる5つの対処法

溶接のきつさは、ちょっとした工夫で軽くできます。今の職場でも、これから始める方でも、すぐに取り入れやすい対処法を紹介します。

① 暑さ対策は、空調服とこまめな水分・塩分補給

暑さ対策の基本は、のどが渇く前に水分をとることです。汗をかく量が多いため、水だけでなく塩分もあわせてとりましょう。

空調服や冷却ベスト、スポットクーラーなどの送風設備があれば、体感温度を下げられます。休憩のたびに保護具を外して、体を冷やすことも大切です。

② 姿勢対策は、作業台の高さ調整とストレッチ

中腰の姿勢が続く場合は、作業台や治具の高さを体に合わせるだけで、腰への負担は軽くなります。

休憩中や作業の合間に、腰や肩、首を軽く伸ばす習慣も効果的です。同じ姿勢を長く続けないよう、作業の区切りで体勢を変えましょう。

③ 目や皮膚の対策は、自分に合う保護具を選ぶ

遮光面や手袋は、サイズが合わないと作業しづらく、疲れやすくなります。軽くて視界が見やすい保護具に変えるだけで、負担が減ることもあります。

火花によるやけどを防ぐため、袖口や首元の隙間を作らない着方も重要です。会社が支給する保護具に不満があれば、相談してみましょう。

④ ヒューム対策は、排気設備と呼吸用保護具の正しい使用

溶接ヒュームを吸い込まないためには、換気や局所排気装置の活用が基本です。そのうえで、防じんマスクなどの呼吸用保護具を、顔に合うものを正しく着けることが重要です。

2023年4月から、対象となる作業ではフィットテストが義務化されています。対象となる作業や措置の詳細は、愛知労働局の解説資料(溶接ヒュームの規制)で確認できます。

⑤ 技術面の不安は、特別教育と先輩のサポートで解消する

「うまくビードが引けない」という悩みは、誰もが通る道です。まず特別教育で基本を学び、先輩に見てもらいながら練習を重ねることで、少しずつ上達します。

最初は下向き姿勢など、難しくない作業から任せてもらえる職場だと安心です。入社前に、教育体制を確認しておくとよいでしょう。

暑さ・ヒューム・姿勢の3つは、個人の対策と職場の設備を組み合わせることで大きく減らせます。一人で我慢せず、会社に相談することも対策のひとつです。

きつくない溶接の職場を選ぶ5つのチェックポイント

きつくない溶接の職場を選ぶ5つのチェックポイント

きつさを減らすには、職場選びがもっとも効果的です。求人を見るときに、確認しておきたい5つのポイントを紹介します。

① 屋内の工場で、空調や送風設備があるか

屋外や空調のない現場は、夏場の負担が大きくなります。屋内の工場で、空調や大型の送風機がある職場を選ぶと、暑さのきつさが和らぎます。

求人票の「職場環境」や「設備」の欄に、空調服の貸与やスポットクーラーの記載があれば安心です。

② 溶接ヒュームの排気設備が整っているか

ヒューム対策として、局所排気装置や集じん機が導入されているかを確認します。設備の有無は、働き続けられるかを左右する重要な条件です。

面接や職場見学の機会があれば、実際に設備を見せてもらえるか聞いてみましょう。

③ 扱う製品の大きさ・重さは自分に合っているか

大きな鉄骨や重い部材を扱う現場は、力仕事が増えます。小物の部品を作業台の上で溶接する現場なら、腰や腕への負担は軽くなります。

「自動車部品」「電子機器の筐体」など、何を溶接するのかを求人票で確認しましょう。

④ 未経験者向けの研修や資格取得支援があるか

技術面の不安を減らすには、教育体制が重要です。特別教育の費用を会社が負担してくれるか、先輩が教えてくれる仕組みがあるかを確認しましょう。

「未経験歓迎」「資格取得支援あり」といった記載がある求人は、教育に力を入れているケースが多くあります。

⑤ 夜勤・残業の有無とシフトが自分の生活に合うか

体への負担は、勤務時間の長さにも左右されます。日勤のみ、残業が少ない職場なら、生活リズムが整い、きつさを感じにくくなります。

年間休日数や、残業時間の目安も合わせてチェックしておきましょう。求人は、ハローワークインターネットサービスでも検索できます。

求人票だけでは、現場の細かな状況まで分かりにくいこともあります。ジョブハウス工場では、希望される方にキャリアアドバイザーが転職をサポートしています。気になる点があれば、相談してみてください。

溶接の「きつい」に関するよくある質問

Q. 溶接工は「やめとけ」と言われるのは本当ですか?

A. 暑さや姿勢、ヒュームなど負担が多いため、そう言われることがあります。ただし、設備が整った職場では、負担は大きく変わります。

一概にやめたほうがよい仕事ではなく、職場選びが大切です。

Q. 未経験で体力に自信がなくても、溶接はできますか?

A. できます。特別教育を受ければ、未経験でも溶接の業務に就けます。軽い製品を扱う現場や、設備が整った職場なら、体力に自信がなくても続けやすいです。

Q. 溶接工は体を壊しやすいですか?

A. 対策をしないと、熱中症や目のトラブル、ヒュームによる健康被害のリスクが高まります。保護具の着用、換気設備、休憩の取りやすさを確認することで、リスクを抑えられます。

Q. 溶接の資格は必須ですか?

A. アーク溶接の業務に就くには、特別教育の修了が必要です。JIS溶接技能者などの資格は必須ではありませんが、持っていると応募できる求人が広がります。

Q. 溶接がきつくて辞めたいときは、どうすればよいですか?

A. まず、何がきついのかを整理しましょう。暑さや設備が原因なら、職場を変えれば解決することもあります。溶接の経験は、工場内の別の工程でも活かせます。

まとめ|溶接はきつい仕事だが、職場を選べば無理なく続けられる

溶接の仕事がきついと言われる理由は、暑さ・姿勢・やけど・ヒューム・集中力の5つです。ただし、溶接は「きつい仕事」であると同時に、「きつさを職場で選べる仕事」でもあります。

この記事のポイントを、あらためて整理します。

  • 2021年から溶接ヒュームが規制対象に、2025年6月から熱中症対策も義務化されている
  • 溶接工の平均年収は448.4万円で、資格を重ねるほど仕事の幅が広がる
  • 空調・排気設備・扱う製品・研修体制・勤務時間の5点が、職場選びの目安

今の仕事や職場に不安があっても、一人で悩む必要はありません。条件に合う求人を探して、自分に合った環境で働きましょう。

 

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