溶接の仕事には、体力・健康・技術習得の面でたしかにデメリットがあります。ただし、その多くは職場選びと対策次第で軽くできるものです。

この記事では、溶接工として働くデメリットを6つに整理します。あわせて、2021年から強化された溶接ヒューム対策の内容や、向き不向きの判断基準、後悔しない職場の選び方まで解説します。

溶接の経験があり、今の環境で続けるか迷っている方や、溶接スキルを活かして次のステップを考えている方の判断材料にしてください。

溶接の仕事のデメリット6つ|現場で「きつい」と言われる理由

溶接工の仕事が「きつい」と言われる理由は、大きく6つに分けられます。まずは何がつらいのかを具体的に把握しましょう。

溶接工のデメリット6つ

①夏は暑く冬は寒い|作業環境と保護具の負担

溶接は火花や高熱を扱うため、夏場は作業場の暑さに加えて、革手袋や溶接面などの保護具でさらに体温が上がりやすいのが実情です。

一方、大きな工場や屋外の現場では冬の冷え込みも厳しくなります。空調の有無や送風設備の整備状況で、体への負担は大きく変わります。

②立ち仕事・中腰・重い部材で体に負担がかかる

溶接は同じ姿勢を保ったまま、細かい作業を続ける仕事です。中腰や前かがみの姿勢が続くと、腰・肩・膝に疲労がたまりやすくなります。

部材の運搬や段取りで重いものを扱う職場も少なくありません。台車やクレーンなどの補助設備が整っているかどうかも、続けやすさを左右します。

③溶接ヒュームやアーク光による健康リスク

溶接ヒュームとは、溶接で金属が高温になったときに発生する微細な粒子のことです。長期間吸い込み続けると、肺や神経への健康障害が起こるおそれが指摘されています。

また、アーク光を遮光せずに見ると目が炎症を起こします。長く続けるほど、こうした健康面のリスクとどう付き合うかが大切になります。

④やけど・感電・火災などの労働災害リスク

溶接では火花やスパッタ(飛び散る溶けた金属)が出るうえ、溶接機は電気を使います。そのため、やけど・感電・火災のリスクが常にある点は避けられません。

だからこそ、保護具の着用や作業手順の徹底が求められます。安全教育や点検が行き届いている職場かどうかは、必ず確認したいポイントです。

⑤一人前になるまで時間がかかり、腕で評価が分かれる

溶接は、ビードと呼ばれる溶接跡の仕上がりが品質に直結します。安定してきれいに仕上げられるようになるまでには、数か月〜数年の経験が必要といわれます。

手作業の要素が大きいため、経験年数や腕前によって任される仕事の幅にも差が出ます。焦らず段階的に経験を積める環境が理想です。

⑥服や手が汚れやすく、においや音も気になる

溶接や研磨の作業では、鉄粉や油で作業着が汚れやすくなります。グラインダー作業の騒音や、溶接時のにおいが気になるという声もあります。

慣れる部分もありますが、耳栓や防じんマスクなど、環境に合った保護具を使うことが前提です。

溶接のデメリットは職場選びで減らせる|2021年から強化された安全・健康対策

ここまでのデメリットのうち、健康面のリスクについては、国のルールが強化されています。職場選びで確認すべき点が明確になったともいえます。

溶接の安全・健康対策

溶接ヒュームは2021年4月から特定化学物質に追加された

2021年4月1日から、溶接ヒュームが特定化学物質障害予防規則の第2類物質として規制対象に加わりました。

これにより、溶接ヒュームによる健康障害を防ぐための対策が、事業者の義務として明確に位置づけられています。

屋内で継続する溶接で事業者に求められる対策

屋内作業場で金属アーク溶接等作業を継続して行う場合、事業者には次のような対策が求められます。

  • 換気装置の設置などによる作業環境の管理
  • 溶接ヒューム濃度の測定
  • 有効な呼吸用保護具の使用(フィットテストを含む)
  • 特定化学物質作業主任者の選任
  • 特殊健康診断の実施

フィットテストとは、マスクが顔に合っているかを確認する検査です。2023年4月から実施が求められています。対象や経過措置の詳細は、勤務先の安全担当者に確認するのが確実です。

出典:厚生労働省「特定化学物質障害予防規則等の改正(溶接ヒュームに係る規制の追加)」

求人・面接で確認したい安全対策のチェックポイント

転職を考えるなら、応募前や面接で次のような点を聞いておくと、入社後のギャップを減らせます。

  • 溶接作業場の換気・集じん設備はあるか
  • 呼吸用保護具や遮光面は会社から支給されるか
  • 特殊健康診断や定期健診を受けられるか
  • 夏場の空調・送風・休憩のルールはあるか

質問に具体的に答えてくれる会社は、安全管理に力を入れている可能性が高いといえます。

働く側が自分でできる対策

会社の設備に加えて、自分でできる工夫もあります。保護具は必ず正しく着用し、違和感があれば早めに申し出ることが基本です。

夏場はこまめな水分補給と休憩、腰や肩の負担にはストレッチや姿勢の見直しが有効です。視力や体調の変化を感じたら、放置せず受診しましょう。

デメリットと対策の早見表を、以下にまとめました。

項目 主なリスク 主な対策
暑さ・寒さ 熱中症・疲労 空調・送風・休憩
ヒューム 肺・神経の障害 換気・保護具
アーク光 目の炎症 遮光面・保護メガネ
やけど・火災 けが・感電 保護具・整理整頓
姿勢・運搬 腰・肩の痛み 補助設備・ストレッチ

デメリットの一方で得られるもの|溶接スキルのメリットと将来性

デメリットばかりに目が向きがちですが、溶接には身につけた技術が長く自分の武器になるという大きな強みもあります。

溶接スキルのメリットと将来性

技術が身につくと「腕」が一生の武器になる

溶接は、経験を積むほど仕上がりの質とスピードが上がる技能職です。一度身につけた技術は、会社が変わっても通用しやすいのが魅力です。

デメリットで挙げた「時間がかかる」という点は、裏を返せば、簡単には真似できない価値があるということでもあります。

資格で技術を客観的に証明できる

溶接の技術は資格で証明できます。代表的なのが、日本溶接協会が運営するJIS溶接技能者資格です。基本級は、溶接技術を1か月以上習得した15歳以上の方が受験できます。

制度や種類の詳細は、日本溶接協会(JWES)の公式サイトで確認できます。資格には有効期間があり、定期的な更新手続きが必要です。

溶接経験を活かせる職種は幅広い

溶接の経験は、製缶・板金・配管・組立といった工場の仕事や、溶接ロボットのオペレーター、検査の仕事などにもつながります。

現場の溶接がきついと感じたときも、経験を活かして働き方を変える選択肢があるのは心強いポイントです。

経験と資格が待遇に反映されやすい

技能職である溶接は、経験や保有資格が評価につながりやすい傾向があります。求人でも「溶接経験者歓迎」「資格手当あり」といった条件が多く見られます。

ただし、待遇は会社によって差があります。給与や手当は、求人票で具体的な金額と条件を必ず確認しましょう。

溶接工に向いている人・向いていない人|続けるか迷ったときの判断基準

同じ溶接でも、合う人と合わない人がいます。「きつさ」が仕事そのものから来るのか、職場から来るのかを切り分けることが大切です。

溶接工に向いている人・向いていない人

溶接工に向いていない人の特徴

次のような方は、溶接の仕事にストレスを感じやすい傾向があります。

  • 暑さ・寒さや立ち仕事がどうしても苦手
  • 細かい作業を続ける集中力が保てない
  • においや騒音、汚れが強いストレスになる
  • 成長を実感しにくい仕事は続けにくい

溶接工に向いている人の特徴

反対に、次のような特徴がある方は長く活躍しやすいといえます。

  • ものづくりが好きで、仕上がりにこだわれる
  • コツコツ技術を磨くことが苦にならない
  • 安全ルールを守って落ち着いて作業できる
  • 手に職をつけて長く働きたい

職業の詳細は、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の「溶接工」でも確認できます。

「仕事のきつさ」と「職場のきつさ」を見分ける

つらさの原因が、溶接という仕事そのものにあるのか、今の職場にあるのかを分けて考えてみましょう。

換気が悪い、教えてもらえない、休憩が取れないといった悩みは職場の問題です。この場合、溶接を続けたまま環境だけ変えれば解決することもあります。

迷ったら「同じ溶接で環境を変える」選択肢を

いきなり異業種に転職する前に、溶接の経験を活かせる別の職場を探す方法があります。積み上げた技術を捨てずに、環境だけを変えられます。

空調のある屋内工場、土日休みの職場、教育体制の整った会社など、条件を絞って探すのが近道です。

溶接スキルを活かして後悔しない転職をするには

転職で後悔しないコツは、自分がつらいと感じるポイントを先に決めておくことです。そのうえで求人を比べましょう。

溶接スキルを活かした転職の進め方

未経験なら「アーク溶接等の特別教育」から始める

アーク溶接機を使って金属の溶接や溶断を行う業務に就くには、事業者による特別教育の修了が必要です。教育時間は学科11時間・実技10時間の合計21時間とされています。

根拠となるのは、労働安全衛生規則第36条第3号と安全衛生特別教育規程です。未経験歓迎の求人では、入社後に会社が受講させてくれるケースもあります。

経験者は「溶接の種類」と「作業環境」で選ぶ

同じ溶接でも、屋内の工場と屋外の現場、量産ラインと一点ものでは、働き方も負担も大きく変わります。

自分の得意な溶接方法と、耐えられる環境の両方を整理して、条件に合う求人に絞り込みましょう。

求人票で必ず確認したい5つのポイント

  • 作業場所(屋内・屋外)と空調の有無
  • 保護具の支給と安全教育の有無
  • 勤務形態(日勤・交替勤務)と休日
  • 資格手当・残業代など給与の内訳
  • 未経験者や若手への教育体制

とくに勤務形態と休日は、体への負担を大きく左右します。土日休みや日勤中心の求人は、長く続けやすい傾向があります。

一人で決めきれないときは転職エージェントに相談する

求人票だけでは、職場の空気や安全管理の実態までは分かりません。工場・製造業に詳しいキャリアアドバイザーに相談すれば、条件に合う求人を客観的に比較できます。

「今の会社を辞めるかどうか」の段階でも相談できます。まずは希望条件を整理するところから始めてみましょう。

溶接のデメリットに関するよくある質問

Q1. 溶接工は本当に「やめとけ」と言われるほどきついですか?

体力面や作業環境の厳しさはありますが、職場や対策によって負担は大きく変わります。一概に「やめとけ」とはいえません。

設備や安全管理が整った職場を選べば、デメリットは軽くできます。

Q2. 溶接ヒュームで健康を害する心配はありませんか?

長期間吸い込むと健康障害のおそれがありますが、2021年4月から規制が強化され、換気や保護具などの対策が事業者に求められています。

応募前に、換気設備と保護具の支給状況を確認しておくと安心です。

Q3. 未経験でも溶接の仕事に就けますか?

未経験でも就ける求人はあります。アーク溶接の業務に就く前には、特別教育(学科11時間・実技10時間)の修了が必要です。

未経験歓迎の求人では、会社が受講の機会を用意してくれる場合もあります。

Q4. 溶接の仕事に必要な資格は何ですか?

アーク溶接等の業務には特別教育の修了が必要です。ガス溶接は技能講習の修了が必要です。

JIS溶接技能者資格は任意ですが、技術の証明になり、転職でも役立ちます。

まとめ|溶接のデメリットは「知って選ぶ」ことで減らせる

溶接のデメリットは、暑さ・寒さ、体への負担、ヒュームなどの健康リスク、労働災害、技術習得の時間、汚れや騒音の6つです。

ただし安全管理の整った職場を選べば、その多くは軽くできます。2021年からは溶接ヒュームへの対策も強化されています。

溶接には、技術が武器になるという強みもあります。つらさの原因が仕事にあるのか職場にあるのかを見極めて、納得できる選択をしましょう。

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著者:ジョブハウス工場 編集部

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