1級管工事施工管理技士は、給排水衛生設備や空調設備工事の施工管理を担う国家資格です。結論から言うと、この資格の需要は年々高まっています。

理由は主に3つあります。経営事項審査での高評価、深刻化する若手技術者不足、そしてインフラ老朽化に伴う更新工事の増加です。

本記事では、需要が高い具体的な理由から年収への影響、今後のキャリアパスまで、転職を考える方に向けて詳しく解説します。

この記事のPOINT

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。

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1級管工事施工管理技士の需要が高い4つの理由

需要が高い4つの理由

1級管工事施工管理技士がなぜ企業から求められるのか。理由は制度上の評価と現場の人手不足の両方にあります。順番に見ていきましょう。

経営事項審査で高く評価される国家資格

公共工事の入札に参加する建設会社は、経営事項審査(経審)という国の審査を受けます。この審査では、在籍する技術者の資格によって加点される仕組みがあります。

区分 加点 主な条件
監理技術者資格者証あり 6点 講習受講から5年以内
1級(資格者証なし) 5点 1級合格のみ
1級技士補 4点 第一次検定合格
2級 2点 第二次検定合格

見ての通り、1級保有者は2級の2倍以上のスコアが付くため、企業は経審の点数を上げるために1級技術者を積極的に採用したいと考えています。

出典:経審における技術職員(Z)の加点について整理します|行政書士法人Co-Labo

主任技術者・監理技術者になれる貴重な資格

建設現場には、施工の技術的な管理を行う責任者として主任技術者または監理技術者の配置が法律で義務付けられています。1級管工事施工管理技士は、この両方の要件を満たせる資格です。

2025年2月の建設業法施行令改正により、監理技術者の配置が必要となる下請代金の下限は5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)に引き上げられました。

出典:監理技術者の金額要件見直し|建設データジャーナル

それでも大規模な配管・空調工事はこの基準を超えるケースが多く、1級保有者がいなければ受注自体ができないという現実があります。

さらに、1級技士補が現場に専任で配置されている場合、監理技術者は「専任特例2号」という制度により最大2現場を兼任できます。この仕組みにより、企業は1級資格者と1級技士補をセットで確保し、限られた人員でより多くの案件を回そうとしています。

出典:「専任特例2号」で監理技術者が2現場兼務?|許認可パートナーズ

大規模工事の入札に不可欠な人材要件

公共工事や大型物件の入札では、発注者側が「1級管工事施工管理技士の配置」を参加条件に指定することが珍しくありません。資格者が社内にいなければ、そもそも入札の土俵に立てないのです。

そのため企業側は、既存社員の資格取得支援だけでなく、1級保有者を中途採用で確保する動きを強めています。転職市場では、資格保有者に対して好条件のオファーが出やすい状況です。

若手不足・高齢化で企業が争奪戦

建設業界全体が技術者の高齢化と若手不足という課題を抱えています。管工事施工管理の分野も例外ではなく、ベテラン技術者の退職に対して若手の資格取得が追いついていません。

この需給ギャップが、1級資格者の市場価値をさらに押し上げています。企業は資格手当や年収アップで待遇を改善し、資格保有者をつなぎとめようとする傾向が強まっています。

鈴木実のコメント

需要を裏付ける市場データ・将来性

需要を裏付ける市場データ・将来性

感覚論だけでなく、実際の統計データからも1級管工事施工管理技士の需要の高さが裏付けられます。ここでは4つの角度からデータを見ていきましょう。

建設業就業者の高齢化と人材不足の実態

国土交通省の調査によると、建設業就業者のうち55歳以上が36.6%を占める一方、29歳以下はわずか11.9%にとどまっています。就業者数も平成9年の685万人から令和7年には478万人まで減少しました。

出典:建設業を巡る現状について|国土交通省

年度 建設業就業者数
平成9年 685万人
平成22年 504万人
令和7年 478万人

約30年間で就業者数が3割近く減少している一方、建設投資額そのものは大きく落ち込んでいません。つまり一人あたりが担う工事量は年々増えているということであり、現場を管理できる有資格者の重要性はますます高まっています。

配管・空調設備の専門技術者も同様に減少しており、技術継承の担い手として1級資格者への期待が高まっています。

老朽化するインフラの更新需要

水道管路は法定耐用年数が40年と定められていますが、2022年度時点で経年化率は約23.6%に達しています。年間の更新率はわずか0.64%にとどまり、このペースが続くと20年後には経年化率が約69%まで上昇すると試算されています。

出典:水道管の老朽化問題に関する現状とは?|未来図(ミライズ)

老朽管の更新工事は今後長期にわたって続く見込みで、給排水設備を扱う管工事施工管理技士にとって安定した仕事の土台になります。

省エネ・脱炭素改修工事の増加

脱炭素化の流れを受け、既存ビルの空調設備を省エネ型に更新するZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)改修の需要も拡大しています。ZEB関連市場は2030年に2015年比で約40倍まで拡大するとの予測もあります。

出典:ZEB市場に関する調査結果|日本経済新聞

省エネ改修は空調・給排水設備の入れ替えを伴うため、管工事の専門知識を持つ施工管理技士の需要をさらに押し上げる要因です。老朽化した空調機器を高効率機に入れ替える工事は、新築工事に比べて既存設備との取り合いが複雑になりやすく、経験豊富な施工管理技士の判断力が求められます。

資格保有者数から見る希少性

令和7年度の1級管工事施工管理技士第二次検定の合格者は全国で4,360人にとどまりました。第一次検定の合格率も38.7%と、決して簡単に取得できる資格ではありません。

出典:1級管工事施工管理技士の合格率を徹底分析|sekocan

合格者数が限られている一方で、前述のとおり企業側の需要は増え続けているため、資格保有者は今後も「希少な戦力」として重宝されると考えられます。

鈴木実のコメント

需要の高さが年収・待遇に与える影響

需要の高さが年収・待遇に与える影響

需要が高い資格は、当然ながら年収や待遇にも反映されます。ここでは具体的な数字をもとに見ていきましょう。

1級と2級の年収差

求人データによると、2級管工事施工管理技士の平均月給は33.6万円であるのに対し、1級は35.4万円と2万円近く高い水準です。中には月給が100万円を超える求人も見られます。

出典:管工事施工管理技士の給料事情|SATコンサルティング

賞与や各種手当を含めると、1級保有者の年収は500万〜700万円台に達するケースも多く、経験年数や役職次第ではさらに上を狙えます。

経験年数と役割を重ねるごとに年収レンジも変化していきます。あくまで目安ですが、キャリアステージごとのイメージは以下の通りです。

経験年数 年収目安 主な役割
取得直後 450〜550万円 主任技術者
5〜10年 550〜650万円 監理技術者
10年以上 650万円〜 現場所長・部門責任者

役職が上がるほど年収も伸びやすいのは、需要が高い資格ならではの特徴といえます。

資格手当の相場

1級管工事施工管理技士の資格手当は月額1万〜3万円が目安で、大手ゼネコンでは月2万〜5万円を支給する企業もあります。2級は月額5,000円〜1.5万円程度が相場です。

出典:施工管理技士の資格手当の相場|施工管理のミカタ

取得時の一時金(合格祝金)を用意する企業もあり、1級で5万〜20万円程度が相場とされています。資格取得そのものが直接的な収入アップにつながる仕組みです。

転職市場での評価・年収アップ事例

1級資格を保有していると、施工管理未経験でも管理職候補として採用されやすくなります。前職より年収が50万円以上アップする転職事例も珍しくありません。

特に、これまで2級で主任技術者にとどまっていた方が1級を取得し、監理技術者として大規模案件を担当できるようになると、役職手当を含めて年収が大きく伸びる傾向があります。

例えば、2級保有で年収450万円前後だった主任技術者が1級を取得し、監理技術者として大型現場を任されるようになったケースでは、年収550万円前後まで引き上げられる例が多く見られます。資格の取得が、そのままポジションと収入の両方に直結しやすい業界といえるでしょう。

ゼネコン・サブコンでの需要の違い

ゼネコン(総合建設業)では、大規模プロジェクトの元請けとして監理技術者クラスの1級資格者を求める傾向が強く、年収水準も高めです。

一方、設備専門のサブコン(設備工事業者)では、現場を横断的に管理できる主任技術者クラスの需要が多く、資格を活かして複数現場を掛け持ちするキャリアも一般的です。どちらの立場でも1級資格は評価の軸になります。

鈴木実のコメント

地域による違いも見逃せません。都市部では再開発やインフラ更新工事が集中しやすく、大型案件を扱えるゼネコン・サブコンからの求人が豊富です。一方、地方では中小規模の設備工事会社が主戦力となり、一人の技術者が幅広い工程を担当する傾向があります。どちらの環境でも、1級資格を持っていることが即戦力としての評価につながる点は共通しています。

需要の高い資格を活かせるキャリアパス

需要の高い資格を活かせるキャリアパス

1級管工事施工管理技士の需要は幅広い業態に及びます。自分に合ったキャリアパスを考えるために、代表的な選択肢を整理しました。

ゼネコンの配管設備部門

総合建設業(ゼネコン)の設備部門では、大規模ビルや工場の給排水・空調工事を統括する立場として1級資格者が求められます。監理技術者として複数の下請け業者をまとめる、責任ある役割です。

プロジェクト単価が大きいため、年収水準も比較的高く設定される傾向があります。将来的に現場所長を目指すキャリアとも相性が良い選択肢です。

大手ゼネコンほど資格取得支援や研修制度が充実している傾向があり、若手のうちから1級を見据えたキャリア形成がしやすい環境です。反面、転勤や現場の広域移動が発生しやすい点は留意しておきましょう。

空調・給排水設備の専門会社

設備工事を専門に手がけるサブコンでは、配管・空調に特化した技術力がダイレクトに評価されます。ビル管理会社やメンテナンス企業からの引き合いも多く、施工から保守まで一貫して携われる点が魅力です。

専門性を極めたい方や、特定の設備領域(給排水・空調・ガスなど)に強みを持ちたい方に向いています。地域密着で働ける企業も多く、転勤を避けたい方にも選びやすい業態です。

独立・フリーランスとしての需要

実務経験と1級資格を武器に、個人事業主として複数の現場と契約するキャリアもあります。人手不足を背景に、経験豊富な技術者を業務委託で受け入れる企業も増えています。

ただし独立には現場管理の実績や人脈が不可欠なため、まずは企業に所属して経験を積むのが現実的なステップです。案件ごとの単価交渉や自己管理能力も求められるため、独立前に複数現場のマネジメント経験を積んでおくと安心です。

関連資格とのダブルライセンス需要

電気工事施工管理技士や建築設備士など、関連資格を組み合わせることで対応できる工事の幅が広がり、市場価値がさらに高まります。特に空調・電気・給排水を横断的に管理できる技術者は、大型物件で重宝されます。

資格を増やすほど転職の選択肢も広がるため、1級取得後のキャリア戦略として関連資格の取得を検討する価値があります。

例えば、給排水衛生設備の知識に加えて電気設備の知識を持つ技術者は、複合的な設備更新工事を一人で調整できるため、発注者側からの信頼も厚くなります。中長期的なキャリア設計として、まず1級を取得し、その後に関連分野の資格へ広げていくのが効率的な進め方です。

未経験・2級からのキャリアアップで需要を掴む方法

未経験・2級からのキャリアアップで需要を掴む方法

需要の高さを理解したところで、実際にどうキャリアアップしていけばよいのかを解説します。

受験資格改正(令和6年度〜)のポイント

令和6年度の制度改正により、第一次検定は19歳以上であれば学歴・実務経験を問わず受験できるようになりました。第二次検定は、令和6年度から令和10年度までの5年間、新受検資格と旧受検資格のどちらでも受験可能な経過措置期間です。

出典:1級管工事施工管理技術検定|一般財団法人 全国建設研修センター

以前より若いうちから第一次検定に挑戦しやすくなったため、2級を経由せず1級を目指すルートも現実的になっています。

第二次検定の新受検資格では、第一次検定合格後の実務経験が原則5年以上必要ですが、経験の内容によっては3年や1年まで短縮できる仕組みも設けられました。あわせて、旧制度にあった指導監督的実務経験の要件は廃止されています。

出典:1級管工事施工管理技士の受験資格は?|ANDPAD

実務経験の積み方

第二次検定に進むには、現場での実務経験が欠かせません。若手のうちは2級を取得しながら、給排水設備や空調設備の現場管理を幅広く経験しておくと、1級挑戦時にスムーズです。

特に、規模の異なる現場(小規模改修から大規模新築まで)を経験しておくと、監理技術者としての実務対応力が身につきます。

学科試験の対策には、一般的に500〜700時間程度の学習時間が必要とされています。1日2〜3時間の学習を継続した場合、6ヶ月〜1年程度が合格までの目安です。

出典:1級管工事施工管理技士になるには?|資格転職

実務で忙しい中でも、通勤時間などの隙間時間を活用しながらコツコツ学習を積み重ねることが、合格への近道になります。

資格取得支援制度がある企業の見分け方

求人票に「資格取得支援あり」「受験費用・講習費用を会社負担」といった記載がある企業は、若手の1級取得を積極的に後押ししています。実際に資格を取得した社員の割合や、取得後のキャリアパスを面接で質問してみるのもおすすめです。

資格手当や合格祝金の制度が整っている企業ほど、資格取得後の待遇アップも期待できます。

転職エージェント活用のメリット

1級管工事施工管理技士の需要は高い一方、求人票だけでは実際の待遇や現場の雰囲気まで把握しづらいのが実情です。建設業界に特化した転職エージェントを利用すれば、非公開求人の紹介や年収交渉のサポートを受けられます。

資格を活かしてキャリアアップしたい方は、専門知識を持つアドバイザーに相談することで、より条件の良い転職先を見つけやすくなります。

よくある質問

1級管工事施工管理技士の需要は今後も続きますか?

はい、続く見込みです。若手技術者の不足とインフラの老朽化という2つの構造的な課題が短期間で解消される見通しはなく、企業側の資格者確保のニーズは今後も高い水準で推移すると考えられます。

未経験からでも1級管工事施工管理技士を目指せますか?

令和6年度の制度改正により、第一次検定は19歳以上であれば学歴・実務経験を問わず受験できます。ただし第二次検定には一定の実務経験が必要なため、まずは現場で経験を積みながら資格取得を目指す流れになります。

2級と1級、どちらを先に取るべきですか?

実務経験が浅い場合は、まず2級を取得して現場管理の基礎を固めるのが一般的です。第一次検定の受験資格が緩和されたため、経験を積みながら1級の第一次検定に早めに挑戦するルートも選びやすくなっています。

1級管工事施工管理技士の平均年収はどれくらいですか?

求人データでは平均月給35.4万円程度で、賞与や手当を含めると年収500万〜700万円台に達するケースが多く見られます。企業規模や役職によってはさらに高い水準も期待できます。

転職はどのタイミングで動くのがベストですか?

資格取得の直後は市場価値が高まっているタイミングのため、転職を検討する好機です。また、繁忙期を避けた時期の方が選考がスムーズに進みやすい傾向があります。

女性でも1級管工事施工管理技士として活躍できますか?

もちろん活躍できます。現場管理はコミュニケーション能力や調整力が重要な仕事であり、性別を問わず評価される職種です。女性技術者の受け入れ体制を整える企業も増えています。

ここまで見てきたように、1級管工事施工管理技士は経営事項審査での高評価、深刻な人手不足、老朽インフラの更新需要が重なり、需要が高まり続けている資格です。

合格者数が限られる分、転職市場での市場価値も年々上昇しています。まずは実務経験を積みながら資格取得を目指し、キャリアの幅を広げるチャンスを掴んでいきましょう。

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