一級建築士は個人が保有する国家資格、管理建築士は建築士事務所に専任で置かれる責任者という違いがあります。一級建築士の免許を取得しただけでは管理建築士にはなれず、実務経験3年以上と管理建築士講習の修了という別の要件を満たす必要があります。

本記事では、一級建築士と管理建築士の違い、管理建築士になるための3つの条件、講習の内容・費用、年収やキャリアへの影響までまとめて解説します。独立や事務所経営を視野に入れている方は、ぜひ参考にしてください。

「今の職場で経験を積みながら、いずれは独立や設計事務所の経営に関わりたい」と考えている20代・30代の建築士にとって、管理建築士は避けて通れないキーワードです。資格取得のタイミングを逃さないよう、早めに全体像をつかんでおきましょう。

この記事のPOINT

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。

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一級建築士と管理建築士は何が違う?基本の関係を整理

一級建築士と管理建築士の関係

まずは両者の立ち位置の違いを整理しましょう。混同されがちですが、資格の性質そのものが異なります。

一級建築士は個人の国家資格

一級建築士は、建築士法にもとづき国土交通大臣が付与する国家資格です。試験に合格し免許登録を受ければ、個人の資格として生涯保有できます。設計・工事監理の対象となる建物の種類に制限がなく、住宅からビル、病院、劇場まで幅広い建築物を扱える点が特徴です。

転職や独立で事務所を変えても、資格そのものは個人に紐づくため失われません。この「個人に帰属する資格」という性質が、事務所単位で決まる管理建築士との一番の違いです。

管理建築士は事務所に置かれる「専任」の役職

建築士事務所を開設する際は、建築士法第24条により、事務所ごとに専任の管理建築士を1名置くことが義務付けられています。管理建築士は他社との兼業や、複数事務所の兼任が認められません。勤務時間中は常にその事務所に身を置く必要があります。

出典:国土交通省

一級建築士だからといって自動的に管理建築士にはなれない

一級建築士の免許を取得しても、それだけで管理建築士の資格が得られるわけではありません。管理建築士講習の修了が必須要件となっており、未受講のまま事務所の管理建築士として届け出ることはできません。

二級建築士・木造建築士も管理建築士になれる

管理建築士は一級建築士に限った制度ではありません。二級建築士や木造建築士も、要件を満たせば管理建築士になれます。ただし、管理建築士自身の資格の種類によって、その建築士事務所が扱える業務範囲が決まる点には注意が必要です。

例えば二級建築士が管理建築士を務める事務所では、一級建築士でなければ設計できない大規模建築物を受注できません。将来扱いたい建物の規模から逆算して、どの資格で管理建築士になるかを考えることも大切です。

資格 事務所の種別 扱える建物
一級建築士 一級建築士事務所 制限なし
二級建築士 二級建築士事務所 中規模までの建物
木造建築士 木造建築士事務所 小規模の木造建物

鈴木実のコメント

管理建築士になるための3つの条件

管理建築士になる3つの条件

管理建築士になるには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。どれか1つでも欠けると講習の受講資格自体を得られません。

建築士免許(一級・二級・木造)を取得していること

大前提として、いずれかの区分の建築士免許を取得し、登録が完了している必要があります。免許登録日が、後述する実務経験のカウント開始日になります。

建築士として3年以上の実務経験があること

実務経験としてカウントされるのは、建築物の設計、工事監理、建築工事契約に関する事務、工事の指導監督、建築物に関する調査・鑑定など、建築士法で定められた業務です。これらの業務に通算3年以上従事している必要があります。

経験年数は、建築士免許の登録日から講習の受講申込締切日までを対象期間として計算します。転職で職種が変わった期間や、業務内容が対象外だった期間があると通算日数が伸びるため、早めに自分の経験年数を確認しておくと安心です。

管理建築士講習を修了していること

実務経験の要件を満たしたら、国土交通大臣の登録を受けた機関が実施する管理建築士講習を受講し、修了考査に合格しなければなりません。修了証がないまま管理建築士として届け出ることはできません。

講習は各都道府県のさまざまな会場やオンライン形式で開催されており、実施機関によって開催頻度や日程が異なります。独立や事務所の管理建築士就任の時期が決まっている場合は、早めに開催スケジュールを確認しておきましょう。

実務経験としてカウントされない業務に要注意

現場での施工作業そのものに従事していた期間や、長期療養・休職期間は実務経験として算入できません。転職や独立を計画している場合は、経験期間を証明する業務経歴証明書を早めに整理しておくと安心です。

項目 内容
免許 一級・二級・木造のいずれか
実務経験 通算3年以上
証明書類 業務経歴証明書

管理建築士講習の内容・費用・スケジュール

管理建築士講習の内容

実務経験の要件を満たしたら、いよいよ講習の申し込みです。ここでは内容・費用・スケジュールの目安を紹介します。

講習のカリキュラム構成(法令+修了考査)

講習は1日(計6時間程度)で実施され、建築士法や建築基準法などの法令、建築士事務所の管理方法、契約に関するトラブル対応などを学ぶ講義が中心です。最後に30問程度の正誤式の修了考査があり、講習で使用したテキストを参考資料として持ち込めます。

受講料の目安

受講料は登録講習機関によって異なりますが、16,500円前後(税込)が目安です。詳しい日程や最新の料金は、建築技術教育普及センターの管理建築士講習ページで確認できます。

会社が費用を負担してくれるケースもあれば、自己負担で受講するケースもあります。独立を見据えて自主的に受講する場合は、テキスト代を含めた総額を事前に把握しておくと予算が立てやすくなります。

申込から修了までの流れ

受講申込時には、業務経歴証明書などの実務経験を証明する書類の提出が求められます。書類審査を経て受講が確定し、講習当日に修了考査を受けて合格すれば、後日修了証が交付される流れです。申込方法や必要書類の詳細は、総合資格学院の管理建築士講習案内ページでも確認できます。

一度修了すれば更新不要(建築士定期講習との違い)

管理建築士講習は、一度修了すれば再受講の必要はありません。3年ごとの受講が義務付けられている「建築士定期講習」とは別の制度である点を押さえておきましょう。両者を混同すると、必要な講習を受け忘れるリスクがあります。

鈴木実のコメント

管理建築士になるメリットと年収・キャリアへの影響

年収・キャリアへの影響

管理建築士講習を修了すると、キャリアの選択肢がどのように広がるのかを見ていきましょう。

独立開業・事務所経営の選択肢が広がる

管理建築士の資格要件を満たせば、自ら建築士事務所を開設し、代表者として経営に携わる道が開けます。独立を将来的に考えている一級建築士にとっては、避けて通れないステップといえます。

すでに事務所を経営している企業に管理建築士として転職し、経営の一端を担うキャリアも考えられます。独立だけでなく、既存の組織内でポジションを得る手段としても有効です。

年収はどう変わるか

一級建築士全体の平均年収はおよそ700万円前後とされ、年代が上がるほど管理職としての評価が反映されやすくなります。20代では400万〜550万円程度が目安ですが、経験を積んで管理建築士や事務所の責任者となる30代後半〜40代では700万〜830万円程度まで伸びるケースがあります。

出典:厚生労働省

年代 年収目安(万円)
20代 400〜550
30代 550〜700
40代 700〜830

管理業務としての責任と兼業制限という側面

管理建築士は「専任」が求められるため、他社での副業や、複数事務所の兼任はできません。事務所の設計品質・契約トラブル対応・所属建築士の管理まで責任を負う立場になる点は、メリットと表裏一体の負担として理解しておく必要があります。

設計業務そのものに集中したい建築士にとっては、管理業務が負担に感じられることもあります。管理建築士になるかどうかは、自分がどのようなキャリアを築きたいかとあわせて判断するとよいでしょう。

一級建築士のキャリアパスにおける位置づけ

一級建築士としてのキャリアは、実務を積んで設計力を磨く方向と、管理建築士講習を修了して事務所経営やマネジメントに軸足を移す方向の、大きく2つに分かれます。管理建築士はあくまで通過点の1つであり、資格取得後も現場設計を続ける建築士は少なくありません。

一級建築士から管理建築士を目指すロードマップ

管理建築士を目指すロードマップ

最後に、一級建築士の資格取得後、管理建築士を目指す場合の具体的な進め方を整理します。

資格取得後にまずすべきこと

免許登録日を起点に、実務経験のカウントが始まります。設計・工事監理などの対象業務に従事した期間を、日々の業務記録として残しておくと、後の証明書類作成がスムーズになります。

担当したプロジェクト名、業務内容、期間をメモしておくだけでも、数年後の証明書類作成が格段に楽になります。特に転職を挟む可能性がある方は、業務内容を具体的に記録する習慣をつけておきましょう。

実務経験の証明方法(業務経歴証明書)

実務経験は自己申告では認められず、当時の上司や管理建築士など第三者による証明が必要です。転職を挟んでいる場合は、前職の担当者への確認に時間がかかることもあるため、早めに準備を始めましょう。

転職・独立のタイミングの考え方

管理建築士講習の修了見込みが立った段階で、転職や独立のタイミングを具体的に検討する建築士が多く見られます。事務所開設を目指す場合は、東京都など各自治体の建築士事務所登録手続きも事前に把握しておくと安心です。詳細は東京都都市整備局の建築士事務所ページで確認できます。

よくあるつまずきポイント

実務経験の期間不足や、証明者と連絡が取れないことによる書類準備の遅れが、よくあるつまずきポイントです。管理建築士を目指すと決めたら、早い段階から逆算してスケジュールを組むことをおすすめします。

転職を検討している場合は、管理建築士講習の受講資格や、将来的な事務所経営への道筋を考慮した求人選びも重要です。転職エージェントに相談しながら、キャリアの方向性を整理するのも一つの方法です。

鈴木実のコメント

よくある質問

Q. 一級建築士になれば自動的に管理建築士になれますか?

いいえ、自動的にはなれません。一級建築士の免許に加えて、実務経験3年以上と管理建築士講習の修了が別途必要です。

Q. 管理建築士講習はどれくらいの人が受講していますか?

建築士事務所を開設・運営するために必須の講習であるため、独立や事務所経営を目指す建築士の多くが受講しています。二級建築士や木造建築士の受講者も一定数います。

Q. 管理建築士講習に有効期限はありますか?

ありません。一度修了すれば再受講の必要はなく、3年ごとの更新が必要な建築士定期講習とは別の制度です。

Q. 管理建築士になると年収は上がりますか?

管理建築士講習の修了自体が直接年収を引き上げるわけではありませんが、独立開業や事務所の責任者としてのキャリアパスにつながるため、結果的に収入アップの選択肢が広がるケースが多く見られます。

一級建築士と管理建築士は、個人資格と事務所の役職という、そもそも性質の異なるものです。管理建築士を目指すなら、実務経験の記録と証明書類の準備を早めに進めておくことが、スムーズな講習受講とその後のキャリア形成の鍵になります。

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著者:ジョブハウス建設 編集部

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