1級電気工事施工管理技士は、電気工事の施工計画づくりから工程・品質・原価・安全の管理までを担う国家資格です。

取得すると大規模な現場に監理技術者として配置できるようになり、資格手当や昇進の面でも評価されやすくなります。

2024年度(令和6年度)からは受験資格が大きく緩和され、第一次検定は年齢要件だけで挑戦できるようになりました。

この記事では、試験の仕組み・新しい受験資格・合格率・勉強法・取得後のキャリアまで、転職やステップアップを考えている方に向けて具体的な数字とともに解説します。

「電気工事の実務経験はあるけれど資格はまだ」という方や、「2級は持っているが1級にステップアップしたい」という方にとって、実際に何から準備すればよいのかがわかる内容になっています。

この記事のPOINT

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。

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1級電気工事施工管理技士とはどんな資格?仕事内容と役割

1級電気工事施工管理技士の仕事内容と役割

1級電気工事施工管理技士は、電気工事の現場で施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、原価管理を担う国家資格です。

ビルや工場、発電所、鉄道など、電気設備を伴うあらゆる建設現場で必要とされています。

電気工事の施工管理を担う国家資格

試験は一般財団法人建設業振興基金が実施しており、合格すると国土交通大臣の登録を受けた技術者として扱われます。

設計図をもとに工程表を組み、資材や職人の手配、安全確認までを一貫して管理する立場です。

現場では電気主任技術者や設備業者との調整役も担うため、電気の専門知識だけでなくコミュニケーション能力も求められます。

施工管理の4大管理(工程・品質・原価・安全)のうち、電気設備特有の視点で品質と安全を担保できる点が、この資格ならではの強みです。

1級と2級の違い

区分 担当可能な工事 配置できる立場
1級 規模の制限なし 監理技術者・主任技術者
2級 下請代金の制限あり 主任技術者のみ

1級は請け負う工事の金額に制限がなく、大規模な特定建設業の現場でも監理技術者として配置できる点が最大の違いです。

2級は下請代金の総額が一定金額未満の工事に限られるため、大型プロジェクトを手がけたい場合は1級へのステップアップが不可欠になります。

監理技術者・主任技術者になれる

一定金額以上の下請契約を結ぶ工事現場では、法律上監理技術者の配置が義務付けられています。

1級電気工事施工管理技士はこの監理技術者になれるため、ゼネコンや電気工事会社からの需要が非常に高い資格です。

監理技術者になると、専任配置が求められる現場の責任者として、発注者との協議や工事全体の最終判断を任される機会が増えます。

資格そのものに更新の必要はありませんが、監理技術者として現場に配置されるには5年ごとの監理技術者講習の受講が必要になるため、あわせて覚えておきましょう。

施工管理技士補という新しい称号

第一次検定に合格すると「1級電気工事施工管理技士補」の称号が得られます。

技士補は監理技術者の補佐として現場に専任配置でき、1人の監理技術者が2つの現場を兼任できる制度の活用にもつながります。

人手不足が課題となる建設業界では、この技士補制度によって少ない人数でも複数現場を効率的に回せる体制づくりが進んでいます。

電気工事士との違い

電気工事士は実際に配線や機器の設置作業を行う「作業者」向けの資格です。

一方、電気工事施工管理技士は現場全体の計画・管理を担う「管理者」向けの資格という違いがあります。

電気工事士として実務を積んだ方が、キャリアアップの一環として施工管理技士を目指すケースも多く見られます。

資格を活かせる就業先の種類

主な就業先としては、大手ゼネコンの電気設備部門、電気工事専門会社、設備工事会社、官公庁の施設管理部門などが挙げられます。

近年はデータセンターや半導体工場など、大規模な電気設備投資が続く分野からの求人も増えています。

再生可能エネルギー発電所や大型商業施設の新築案件でも、電気設備の比重が年々高まっており、施工管理技士の活躍の場は今後さらに広がっていくと見られています。

就業先によって扱う工事の規模や役割が異なるため、自分がどのようなキャリアを描きたいかを軸に選ぶことが大切です。

鈴木実のコメント

1級電気工事施工管理技士の試験概要と日程

1級電気工事施工管理技士の試験概要と日程

試験は第一次検定・第二次検定の2段階で構成されています。

第一次検定・第二次検定の内容

第一次検定は電気工学・施工管理法・法規などをマークシート形式で問う試験です。

第二次検定は施工経験に基づく記述式で、実際の現場対応力が問われます。

区分 出題形式 主な内容
第一次検定 マークシート 電気工学・施工管理法・法規
第二次検定 記述式 施工経験記述・応用能力

合格基準は、第一次検定が全体得点60%以上かつ施工管理法(応用能力)の項目で50%以上、第二次検定は得点60%以上が目安です。全体で60%を超えていても、応用能力の項目が基準に届かないと不合格になる点に注意してください。

例年の試験日程

直近の実施年度では、第一次検定が7月、第二次検定が10月に行われました。

年度ごとの正確な日程・申込期間は変動するため、受験する年度の情報を必ず公式サイトで確認してください(出典:一般財団法人建設業振興基金 試験研修本部)。

受験手数料

受験手数料は第一次検定・第二次検定ともそれぞれ15,800円です。

第一次・第二次を同時に申し込む場合、第二次検定分の手数料は第一次検定の合格後に納付する仕組みになっています。

第一次検定のみ、第二次検定のみ、同時申請のいずれかを選べるため、実務経験の状況に合わせて申請方法を選びましょう。

試験地

試験は札幌・仙台・東京・新潟・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄など全国主要都市で実施されます。

お住まいの地域から通いやすい会場を選び、早めに日程を確保しておくと安心です。

申込方法

申込方法には、インターネット申請と書面申請の2通りがあります。

インターネット申請の方が受付期間が長く設定される傾向があるため、初めて受験する方はネット申請を選ぶとスケジュールに余裕を持てます。

申請には顔写真や必要書類の準備が必要になるため、受付開始前から早めに準備しておくとスムーズです。

受験資格は?2024年度からの新制度をわかりやすく解説

1級電気工事施工管理技士の受験資格新制度

2024年度(令和6年度)に施工技術検定規則が改正され、受験資格が大きく見直されました(出典:国土交通省 報道発表資料)。

第一次検定の受験資格(年齢要件のみ)

新制度では、試験実施年度末に19歳以上であれば、学歴や実務経験を問わず誰でも第一次検定を受験できます。

これまで必要だった実務経験の壁がなくなり、若手のうちから挑戦しやすくなりました。

第二次検定に必要な実務経験年数

第二次検定は第一次検定の合格が前提で、合格後に一定の実務経験を積む必要があります。

新制度では、第一次検定合格後の実務経験年数はおおむね3〜5年とされ、保有資格によって変動します。

例えば、技術士(電気電子部門など)の資格を持ち、実務経験1年を積んだ方は、短い年数で第二次検定に進める区分が用意されています(出典:国土交通省 報道発表資料)。

一方で、これらの資格を持たない場合は、第一次検定合格後におおむね5年の実務経験を積むルートが基本になります。

特定実務経験による短縮ルール

指導監督的な立場での実務経験(特定実務経験)が一定期間含まれる場合、必要年数を短縮できるルートも用意されています。

2級電気工事施工管理技士など関連資格をすでに持っている方は、短縮の対象になりやすい傾向があります。

旧制度からの経過措置

2024年度から2028年度(令和10年度)までは経過措置期間とされ、旧受験資格・新受験資格のいずれかを選んで受験できます。

ご自身の実務経験の積み方によってどちらが有利か変わるため、迷う場合は早めに試験実施団体へ確認することをおすすめします。

実務経験として認められる工事・認められないもの

実務経験として認められるのは、電気工事の施工計画・工程管理・安全管理などに直接携わった業務です。

単なる作業員としての配線工事や、設計のみ・事務のみといった業務は実務経験として認められにくい点に注意が必要です。

維持管理やメンテナンス業務も、新設・改修工事の施工管理とは区別されるため、経験の内容を事前に整理しておくことが大切です。

鈴木実のコメント

合格率・難易度は?直近のデータで見る

1級電気工事施工管理技士の合格率と難易度

合格率は年度によって変動しますが、おおむね半数以下で推移しており、決して簡単な試験ではありません。

第一次検定・第二次検定の合格率推移

年度 一次(%) 二次(%)
令和3年度 53.3 ―
令和4年度 38.3 ―
令和5年度 40.6 ―
令和6年度 36.7 49.6

出典:一般財団法人建設業振興基金 試験研修本部

試験地別の合格率差

令和6年度の第一次検定では、最も高い試験地で40.7%、最も低い試験地で27.1%と、地域によって10ポイント以上の差が見られました。

試験地の違いよりも、受験者層や準備期間の差が結果に影響していると考えられます。

大都市圏では受験対策講座や勉強会が開催されやすく、情報収集のしやすさが結果に反映されている可能性もあります。

地方在住の方は、オンライン講座やスマホアプリを活用して情報格差を埋める工夫が有効です。

難易度が高いとされる理由

第一次検定は出題範囲が電気工学から法規まで幅広く、暗記だけでは対応しきれない応用問題が含まれます。

第二次検定は経験に基づく記述式のため、自分の経験を採点者に伝わる文章でまとめる力が合否を分けます。

特に施工管理法(応用能力)は五肢二択・四肢二択などの形式で、単純な知識暗記よりも現場での判断力が問われる点が難易度を押し上げています。

一発ストレート合格の割合

第一次検定・第二次検定を同一年度でどちらも一発合格できる受験者は、全体の2割弱にとどまるといわれています。

複数年計画で臨む受験者も多く、1年で合格できなくても珍しいことではありません。

第一次検定に合格すれば「1級電気工事施工管理技士補」の称号は生涯有効なため、翌年以降にあらためて第二次検定に集中して臨むという進め方も十分現実的です。

他の1級施工管理技士との難易度比較

1級建築施工管理技士や1級土木施工管理技士と比べても、合格率は同程度かやや低い水準で推移しており、電気系ならではの専門用語の多さが難易度を押し上げる一因になっています。

電気工事の実務経験がある方にとっては、現場で培った知識をそのまま得点につなげやすい試験ともいえます。

合格までの勉強法・必要な勉強時間

1級電気工事施工管理技士の勉強法と勉強時間

働きながらの受験がほとんどのため、限られた時間をどう配分するかが合格のカギになります。

時期 やること 目安時間
試験4カ月前 基礎知識のインプット 週5〜7時間
試験2カ月前 過去問演習・弱点補強 週8〜10時間
試験直前2週間 総復習・模擬問題 毎日1〜2時間

第一次検定の勉強時間の目安

実務経験がある方で最低100時間、初めて学ぶ範囲が多い方は120〜150時間を目安に計画すると安心です。

1日1時間なら4〜5カ月、2時間なら2〜3カ月が確保の目安になります。

仕事が繁忙期に入る時期を避け、余裕を持ったスケジュールを組んでおくと挫折しにくくなります。

第二次検定(経験記述)の対策法

第二次検定では、自分が担当した工事の概要を明確な数字と具体的な工程で説明できるよう準備しておく必要があります。

あらかじめ複数の工事パターンを想定し、文章の型を作っておくと本番で応用しやすくなります。

2024年度以降は、受検者自身の工事概要を書く形式から、設問で示された工事条件に対して自分の知識・経験で答える形式に変わっているため、最新の出題形式に沿った対策が欠かせません。

過去問活用のコツ

過去問は7年分を5周ほど繰り返すことで、出題パターンと頻出テーマが自然と見えてきます。

間違えた問題だけをまとめたノートを作ると、直前期の見直しが効率的になります。

制度改正前後で出題形式が変わった分野は、直近2〜3年分の過去問を優先して解き直すのがおすすめです。

おすすめの学習スタイル

通勤時間はスマホアプリで一問一答、まとまった時間は過去問演習というように使い分ける方が多いです。

独学が不安な場合は、通信講座や対策講座を利用して添削を受けるのも有効な選択肢です。

特に第二次検定の経験記述は、第三者に読んでもらい伝わりやすさを確認してもらうことで、独学だけでは気づきにくい改善点が見えてきます。

教材選びに迷う場合は、出題傾向の分析に定評がある建築資料研究社の『1級電気工事施工管理技士 第一次検定基本テキスト』のような、毎年改訂されるテキストを軸にするのがおすすめです。

鈴木実のコメント

資格を取得するメリットとキャリア・年収への影響

1級電気工事施工管理技士の取得メリットと年収

資格取得は、日々の業務の幅を広げるだけでなく、転職市場での評価にも直結します。

就職・転職で有利になる理由

1級電気工事施工管理技士は企業の経営事項審査(経審)の評価点に直結する資格であるため、企業側も積極的に採用したいと考えています。

資格保有者がいることで入札可能な工事の幅が広がるため、求人でも優遇される傾向があります。

公共工事を受注したい企業ほど1級資格者の確保を重視しており、未経験からの転職でも「資格取得支援制度あり」の求人を選べば、働きながら資格取得を目指せます。

具体的には、経営事項審査(経審)の技術職員数評点で、1級施工管理技士は1人あたり5点、さらに監理技術者講習を修了すると6点で評価されます(出典:経営状況分析機関の技術職員資格区分コード表)。

この評点は公共工事の入札参加資格に直結するため、企業にとって1級資格者は経営面でも欠かせない存在です。

資格手当・年収アップの実例傾向

企業によって差はありますが、資格手当として月1万〜3万円程度を支給するケースが見られます。

監理技術者として大規模現場を任されるようになると、役職手当や現場手当が加わり、年収アップにつながりやすくなるのが実情です。

独立・キャリアアップの可能性

実務経験と資格を組み合わせることで、将来的に独立して電気工事業を営む際の許可要件を満たしやすくなります。

現場責任者、所長、さらには技術部門の管理職へとキャリアの選択肢が広がります。

社内でのポジションだけでなく、より条件のよい企業への転職カードとしても活用しやすい資格です。

建設業界での将来性

電気設備工事は再生可能エネルギーやデータセンター建設の増加により、今後も需要が見込まれる分野です。

監理技術者不足が続く中で、1級資格保有者の市場価値はさらに高まっていくと考えられます。

技術者の高齢化が進む建設業界では、20代・30代のうちに1級資格を取得しておくことが、長期的なキャリアの安定につながります。

ダブルライセンスでさらに市場価値を高める

電気工事士や電気主任技術者など、電気系の資格と組み合わせることで、担当できる業務の幅がさらに広がります。

特に第二種電気工事士は実務経験としても評価されやすく、施工管理技士とのダブルライセンスは相性が良い組み合わせです。

複数資格を持つ技術者は現場でも重宝されやすく、転職市場でも希少性の高い人材として評価されます。

資格取得支援制度がある会社を選ぶという選択肢

受験手数料やテキスト代を会社が負担してくれる「資格取得支援制度」を設けている企業も増えています。

合格祝い金や資格手当とあわせて制度が整っている会社を選べば、経済的な負担を抑えながら学習に集中できます。

転職を検討する際は、求人票の「資格取得支援あり」「合格支援制度」といった記載をチェックしてみましょう。

1級電気工事施工管理技士に関するよくある質問

Q. 実務経験がなくても受験できますか?

第一次検定は年齢要件のみで受験できます。ただし第二次検定には第一次検定合格後の実務経験が必要です。

Q. 2級を持っていないと1級は受験できませんか?

いいえ、2級を経由しなくても1級の第一次検定から直接挑戦できます。第二次検定の実務経験年数の計算方法が異なる点には注意してください。

Q. 独学でも合格できますか?

独学での合格者は多くいます。特に第一次検定は市販の問題集と過去問演習で対応しやすい試験です。第二次検定は経験記述の添削を受けられる講座の活用もおすすめです。

Q. 資格取得にかかる費用はどれくらいですか?

受験手数料は第一次・第二次それぞれ15,800円です。これに加えてテキスト代や講座費用がかかる場合があります。

Q. 1級電気工事施工管理技士補と技士の違いは何ですか?

技士補は第一次検定合格者に与えられる称号で、監理技術者の補佐として現場に配置できます。第二次検定にも合格すると正式な「技士」となり、単独で監理技術者になれます。

Q. 転職活動ではどのように資格をアピールすればよいですか?

担当した工事の規模や役割、資格取得に向けた学習の継続力を具体的に伝えることが重要です。実務経験と資格の組み合わせを整理しておくと、面接でも説得力のあるアピールにつながります。

Q. 2級電気工事施工管理技士を先に取得すべきですか?

必須ではありませんが、実務経験が浅い場合は2級から段階的に挑戦するのも有効な選択肢です。2級で試験形式に慣れてから1級に挑むことで、学習の負担を分散できます。

Q. 何歳まで現役で活躍できますか?

施工管理技士は体力面の負担が比較的少ない管理職であるため、50代・60代でも現役で活躍している方が多くいます。資格と経験を積み重ねるほど息の長いキャリアを築きやすい職種です。

まとめ

1級電気工事施工管理技士は、電気工事の現場で監理技術者として活躍できる国家資格です。

2024年度からの制度改正で第一次検定への挑戦のハードルが下がったいまが、キャリアアップを目指す好機といえます。

試験は決して簡単ではありませんが、計画的な学習と実務経験の積み方次第で、着実に合格へ近づくことができます。

  • 第一次検定は年齢要件のみで挑戦でき、合格すれば「技士補」の称号を得られる
  • 第二次検定には実務経験が必要で、経験記述の対策が合否を分ける
  • 合格率は半数以下と決して簡単ではないが、計画的な学習で十分に合格を狙える
  • 取得後は監理技術者として活躍でき、経審の評点や転職市場での評価にも直結する

まずは第一次検定への挑戦から、電気工事の専門性を武器にキャリアを一段引き上げていきましょう。

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著者:ジョブハウス建設 編集部

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