電気設備工事とは、電力会社から届いた電気を建物内で安全に使えるように配線や設備を整える仕事です。
受変電設備や動力設備、照明・コンセントの配線など、担当する範囲は工事内容によって異なります。
本記事では、電気設備工事の具体的な仕事内容から必要な資格、給料の目安、「きつい」と言われる理由まで、転職を検討している方向けに整理して解説します。

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。
電気設備工事の仕事内容とは?5つの業務分野を解説
電気設備工事は一括りにされがちですが、実際には複数の専門分野に分かれています。まずは代表的な5つの業務を押さえておきましょう。

受変電設備工事|電気を建物で使える電圧に変換する
電力会社から送られてくる電気は、高い電圧のままでは建物内で使用できません。受変電設備工事では、変圧器やキュービクルを設置し、使用できる電圧まで下げる作業を行います。
ビルや工場など、大規模施設ではとくに重要度の高い工程です。設備の設計段階から関わることも少なくありません。
動力設備工事|空調・エレベーターなど機械を動かす配線
空調機器やエレベーター、ポンプといった動力源に電気を供給するための配線・設置工事です。
モーターを扱う機器が対象となるため、照明用とは異なる動力専用の回路を敷設する必要があります。
電灯・コンセント設備工事|照明とコンセントの配線・設置
分電盤から照明器具やコンセントまでをつなぐ配線工事です。オフィスや店舗、住宅など、あらゆる建物で発生するもっとも身近な電気設備工事といえます。
未経験からこの分野に入り、経験を積みながら他分野へ広げていく人も多くいます。
弱電設備工事|LAN・電話・防犯カメラなどの配線
強電(動力用の電気)ではなく、通信や情報系の弱い電流を扱う工事です。LAN配線、電話回線、防犯カメラ、インターホンなどの設置・配線が含まれます。
オフィスのネットワーク環境整備など、需要が伸びている分野のひとつです。
防災設備工事|火災報知器や非常照明の設置
火災報知器、非常照明、誘導灯など、災害時に人命を守るための設備を設置する工事です。
消防法に基づく点検・整備業務が発生することもあり、専門知識が求められる分野です。

電気設備工事の1日の流れ|現場作業員のスケジュール例
未経験の方が気になるのが「実際にどんな1日を過ごすのか」という点です。ここでは新築ビル現場を例に、電気設備工事の1日の流れを紹介します。

出勤〜朝礼|安全確認とその日の作業分担
現場に到着後、朝礼で作業内容や安全上の注意点を確認します。高所作業や電気を扱う仕事のため、KY活動(危険予知活動)を毎朝行う現場がほとんどです。
その日の作業分担もここで確認し、他業者とのスケジュール調整を行います。
午前|配管・配線などの施工作業
図面をもとに、電線を通すための配管設置や実際の配線作業を進めます。
複数の職種と同じ現場で作業するため、他業者との連携も欠かせません。
昼休憩|現場での休憩スタイル
昼休憩は約1時間が一般的です。現場内の休憩所や近隣の飲食店で過ごすことが多く、夏場は熱中症対策のための休憩も別途設けられます。
午後|試運転・検査・後片付け
配線が完了した箇所から試運転を行い、正常に通電するかを検査します。作業終了後は工具や資材を片付け、翌日の作業に備えます。
退勤後|日報作成と翌日準備
現場によっては、その日の作業内容を日報にまとめてから退勤します。経験を積むと、翌日の資材手配や工程確認まで任されるようになります。
電気設備工事に就くために必要な資格とスキル
電気設備工事は資格がなくても始められますが、キャリアアップには国家資格の取得が欠かせません。ここでは代表的な資格を紹介します。

| 資格 | 主な対象 |
|---|---|
| 第二種電気工事士 | 一般住宅・小規模施設 |
| 第一種電気工事士 | 工場・ビルなど大規模施設 |
| 電気工事施工管理技士 | 現場全体の管理・監督 |
第二種電気工事士|未経験者がまず目指す資格
一般用電気工作物を扱える国家資格で、実務経験がなくても受験可能です。学科試験と技能試験の2段階で構成されており、電気設備工事の入門資格として位置づけられています。
学習には市販のテキストを使う人が多く、『ぜんぶ絵で見て覚える 第2種電気工事士 学科試験 すい~っと合格』(Amazon)などがよく読まれています。
第一種電気工事士|大規模施設の工事に必要
第二種で扱える範囲に加え、工場やビルなど高圧受電設備を持つ施設の工事も担当できるようになります。
資格取得後は担当できる現場の幅が大きく広がり、任される仕事の裁量も増えていきます。
電気工事施工管理技士|現場を管理する立場に必要
建設業法に基づく国家資格で、1級を取得すると営業所の専任技術者や現場の主任技術者になれます。試験日程や受験申込は一般財団法人建設業振興基金の公式サイトで確認できます。
現場の工程・安全・品質を管理する立場を目指す人には必須の資格です。
資格がなくても働ける?未経験者向けの求人の実態
見習い・補助作業員としては、無資格でも就業できる求人が多くあります。
ただし実際に配線工事を単独で行うには電気工事士資格が必須のため、入社後の取得支援がある企業を選ぶと安心です。
現場で役立つスキル|体力・図面を読む力・コミュニケーション力
資格以外では、脚立や高所での作業に耐えられる体力、施工図を正確に読み取る力、他業者と連携するコミュニケーション力が求められます。

電気設備工事の給料・年収相場は?未経験からの上がり方
給料は資格の有無や経験年数によって大きく変わります。公的データをもとに、キャリア段階ごとの目安を見ていきましょう。

職業情報提供サイト「job tag」によると、電気工事士の平均年収は628.1万円(令和7年賃金構造基本統計調査)と、全産業平均を上回る水準です。出典:job tag(厚生労働省)
| 段階 | 年収目安 |
|---|---|
| 未経験・見習い | 300〜380万円 |
| 第二種取得後 | 380〜450万円 |
| 第一種・施工管理技士 | 500〜650万円以上 |
未経験・見習い時代の給料相場
資格取得前の見習い期間は、月給20万円前後からスタートするケースが一般的です。
先輩について作業を覚えながら、資格取得を目指す期間になります。
第二種電気工事士取得後の年収相場
資格手当がつく企業も多く、取得後は年収380万〜450万円程度が目安です。
担当できる工事の幅が広がることで、任される仕事量も増えていきます。
第一種・施工管理技士取得後の年収相場
第一種電気工事士や施工管理技士を取得すると、年収500万円を超えるケースも珍しくありません。
管理職や現場責任者としてのキャリアも見えてきます。
年収を上げる3つのポイント|資格・経験・転職
年収アップには、上位資格の取得、大規模案件の経験、そして条件のよい企業への転職という3つの方向性があります。
特に転職は、給与テーブルそのものを見直すきっかけになります。
独立して稼ぐという選択肢
第一種電気工事士などを取得し実務経験を積むと、独立して個人事業主として働く道も選べます。
ただし営業力や資金管理力も必要になるため、まずは企業で経験を積むのが現実的です。
電気設備工事の仕事はきつい?やりがいと向いている人の特徴
「きつい」という声もある電気設備工事ですが、実際の労働環境や向き不向きを正しく知ることが転職成功のカギです。

きついと言われる理由|高所作業・体力・繁忙期の残業
高所での作業や重い資材の運搬など、体力を使う場面が少なくありません。
工期が迫る繁忙期には残業が発生しやすい点も、きついと言われる理由のひとつです。
実は改善が進んでいる|労働環境の変化
近年は働き方改革の流れを受け、週休2日制や残業削減に取り組む企業が増えています。
求人を比較する際は、労働環境の改善に積極的な企業かどうかも確認しましょう。
やりがいを感じる瞬間|自分の手掛けた設備が形に残る
自分が配線・設置した設備が、完成した建物の中で実際に使われ続ける点は大きなやりがいです。
ビルや商業施設など、大きな建物の完成に関われる達成感も魅力といえます。
向いている人の特徴|手先の器用さより大切なもの
手先の器用さも役立ちますが、それ以上に大切なのは安全確認を怠らない慎重さと、チームで動くための協調性です。
未経験でも、この2つを意識できる人は現場になじみやすい傾向があります。
未経験から転職を成功させるためのポイント
未経験からの転職では、資格取得支援制度の有無や、先輩がしっかり指導してくれる体制があるかを求人票で確認することが重要です。
求人情報はハローワークインターネットサービスなどの公的機関でも確認できます。焦らず段階を踏んでスキルを身につけられる企業を選びましょう。

電気設備工事の求人を選ぶときに確認すべき4つのポイント
同じ「電気設備工事」の求人でも、会社によって働きやすさや将来性は大きく異なります。応募前に確認しておきたい4つのポイントを紹介します。

資格取得支援制度の有無
受験費用の補助やテキスト代の負担、試験前の実技講習など、資格取得を後押しする制度があるかは重要な確認ポイントです。
制度が整っている企業ほど、未経験者を計画的に育てる体制ができている傾向があります。
現場の直行直帰・移動時間の扱い
現場仕事は、会社に立ち寄らず自宅から現場へ直行直帰できるかどうかで、日々の負担が大きく変わります。
移動時間が労働時間として扱われるかも、求人票や面接であわせて確認しておきましょう。
元請けか下請けかで待遇が変わる
電気設備工事の会社は、ゼネコンから直接工事を請け負う元請けと、そこからさらに発注を受ける下請けに分かれます。
一般的に元請けに近い立場ほど給与水準や安定性が高い傾向があるため、企業の取引形態も確認しておくと安心です。
未経験者への教育体制
先輩社員が同行して指導するOJT体制があるか、独り立ちまでの期間の目安が示されているかも大切な判断材料です。
教育体制が言語化されている企業は、未経験者の定着率も高い傾向にあります。
よくある質問
電気設備工事の仕事は未経験でも始められますか?
未経験からでも見習いとして就業可能な求人は多くあります。入社後に第二種電気工事士の取得を支援する企業を選ぶと、無理なくキャリアを積めます。
電気設備工事と電気工事の違いは何ですか?
電気工事は住宅の配線など幅広い作業を指す言葉ですが、電気設備工事はビルや工場の受変電設備・動力設備など、建物全体の電気インフラ整備に重点を置いた工事を指すことが多いです。
電気設備工事の仕事はきついですか?
高所作業や体力を使う場面はありますが、近年は労働環境の改善が進んでいます。資格取得によって任される業務の幅も広がり、やりがいを感じやすい仕事です。
電気設備工事で年収を上げるにはどうすればよいですか?
第一種電気工事士や電気工事施工管理技士など上位資格を取得すること、大規模案件の経験を積むこと、条件のよい企業へ転職することが年収アップの主な方法です。
電気設備工事に向いているのはどんな人ですか?
安全確認を怠らない慎重さと、他の職種と連携できる協調性がある人に向いています。手先の器用さは働きながら身につけられます。
まとめ
電気設備工事は、受変電・動力・電灯コンセントなど複数の分野に分かれる専門性の高い仕事です。
未経験からでも見習いとして始められ、資格取得によって着実にキャリアと年収を伸ばせる仕事といえます。
「きつい」と言われる面もありますが、労働環境の改善が進んでいる企業も増えています。転職を検討する際は、資格取得支援や指導体制が整った企業を選ぶことが、長く続けるポイントです。
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