電気設備工事は、建物に電気を安全に届けるための配線・受変電・照明などを手がける専門工事です。
未経験からでも第二種電気工事士の資格取得を入り口に、実務経験を積みながら年収アップを目指せる仕事として注目されています。
本記事では、電気設備工事の仕事内容から必要な資格、年収の目安、転職を成功させるコツまでをまとめて解説します。

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。
電気設備工事とは?仕事内容と電気工事との違い

電気設備工事とは、建物内で電気を安全かつ効率的に使えるようにするための工事全般を指します。
まずは基本の仕事内容と、混同されやすい「電気工事」との違いを整理しましょう。
電気設備工事の定義
電気設備工事は、電力会社から送られてくる電気を建物に引き込み、受変電設備や配線を通じて必要な場所へ届ける工事です。
対象となる電圧はおおむね600V以下の低圧設備から、6,600Vクラスの高圧設備まで幅広く含まれます。
照明やコンセントの設置だけでなく、設計段階から電気の使い方を計画する点も特徴です。
分電盤やブレーカーの設計、非常用発電設備との連携なども電気設備工事に含まれます。
電気工事との違い
「電気工事」は配線やスイッチの設置など施工作業そのものを指すことが多いのに対し、「電気設備工事」は受変電設備や幹線計画を含む、より上流の工程まで担う点が異なります。
たとえば新築マンションの配線工事は「電気工事」、そのマンション全体の受変電計画や幹線設計は「電気設備工事」に含まれる、とイメージすると分かりやすいでしょう。
現場によっては1人の技術者が、電気工事士としての施工と、電気設備工事としての計画の両方を担うケースもあります。
建物における役割
オフィスビルや工場、商業施設では、照明・空調・生産設備など多くの機器が電気で稼働しています。
1つのビルに数百〜数千点の電気機器が存在することも珍しくなく、電気設備工事はその土台を支える存在です。
停電や漏電を防ぐ安全設計も担うため、建物の安全性そのものを左右する仕事といえます。
大型商業施設では、照明・空調・エレベーター・防犯カメラなど、電気に依存する設備だけで数十系統に及ぶことも珍しくありません。
需要が高まっている背景
太陽光発電やEV充電設備、データセンターの増加により、電気設備工事の需要は年々拡大しています。
再生可能エネルギー関連の工事は今後も増える見込みで、専門知識を持つ人材の市場価値は高まっています。
省エネ改修やBCP対策としての非常用電源の導入も進んでおり、既存ビルの電気設備工事需要も広がっています。
電気設備工事の主な種類

電気設備工事とひとくちに言っても、扱う設備によって工事内容は大きく異なります。
代表的な4つの種類を見ていきましょう。
受変電設備工事
電力会社から送られる高圧電気を、建物内で使える電圧に変換する受変電設備を設置・保守する工事です。
キュービクル(受変電設備一式)の設置は、工場やビルなど大規模施設で欠かせません。
点検周期は法定で定められており、定期的なメンテナンス案件も安定した仕事量につながっています。
幹線・動力設備工事
変電設備から各フロア・各機器へ電気を送る幹線を敷設する工事と、モーターや生産設備を動かす動力設備工事があります。
工場では特に動力設備の安定稼働が生産ラインを左右します。
1本の幹線トラブルで生産ラインが停止することもあるため、設計段階から余裕を持たせた計画が重要です。
照明・コンセント設備工事
オフィスや店舗の照明配置、コンセントの増設など、私たちの生活に最も身近な工事です。
LED化やスマート照明への切り替え需要も増えており、省エネ対応の提案力が求められる場面が増えています。
オフィスのレイアウト変更に合わせたコンセント増設は、企業の移転・改装のたびに発生する定番の工事です。
情報通信・防災設備工事
LAN配線やネットワーク機器の設置に加え、火災報知器や非常照明といった防災設備の設置も電気設備工事の範囲です。
建物の安全基準を満たすうえで、防災設備工事は特に重要度の高い分野です。
テレワークの普及でオフィスのLAN環境を見直す企業も増え、情報通信設備工事の需要も底堅く推移しています。

電気設備工事に必要な資格

電気設備工事は電気工事士法などの法律により、資格保有者でなければ扱えない作業が定められています。
ここでは代表的な4つの資格を紹介します。
| 資格 | 対象 | 受験資格 |
|---|---|---|
| 第二種電気工事士 | 住宅・小規模施設 | 誰でも受験可 |
| 第一種電気工事士 | ビル・工場等 | 誰でも受験可 |
| 電気工事施工管理技士 | 現場の施工管理 | 実務経験など |
| 電気主任技術者 | 高圧設備の保安 | 誰でも受験可 |
第二種電気工事士
一般住宅や小規模店舗の電気工事に対応できる、電気設備工事の入り口となる国家資格です。
学科試験と技能試験があり、実務未経験からでも半年程度の学習で合格を目指せます。
免状交付までに実務経験は不要で、資格取得後すぐに現場デビューできる点も魅力です。
第一種電気工事士
ビルや工場など、より大規模な自家用電気工作物の工事まで扱えるようになる上位資格です。
第二種取得後、実務経験を積んでからのステップアップが一般的なルートです。
第一種の技能試験では第二種よりも扱う電線や機器の種類が増え、より実践的な技術が問われます。
学科試験対策には『2026年版 第二種電気工事士試験 完全攻略 学科試験編』(Amazon)がよく読まれています。
電気工事施工管理技士
電気設備工事の施工計画・安全管理・工程管理を担う現場責任者向けの資格です。
1級・2級があり、大規模現場の主任技術者になるためには必須級の資格といえます。
資格保有者は主任技術者・監理技術者として現場に配置できるため、企業からのニーズも高い資格です。
受験案内は一般財団法人建設業振興基金の公式サイトで確認できます。
電気主任技術者(電験)
高圧・特別高圧の受変電設備を保安管理できる資格で、電験三種からステップアップしていくのが一般的です。
電験三種には科目合格制度があり、複数年かけて4科目をクリアする受験者も少なくありません。
難易度は高いものの、取得すれば独占的な業務を任されるなど市場価値が大きく高まります。

電気設備工事の年収・給与水準

資格やスキルの積み上げは、そのまま年収に直結しやすいのが電気設備工事の特徴です。
ここでは年収の目安と、収入を上げる方法を紹介します。
経験・資格別の年収目安
電気工事士全体の平均年収は440万円程度とされ、経験や保有資格によって334万円〜804万円まで幅があります。
出典:求人ボックス給料ナビ
第一種電気工事士や施工管理技士を取得すると、より上位の年収帯を狙いやすくなります。
20代の若手より、資格と実務経験を重ねた30代・40代の方が年収帯は高くなる傾向があります。
雇用形態による違い
正社員は昇給や賞与が安定している一方、派遣社員は時給が高めに設定されているケースが多く、働き方によって収入バランスは異なります。
未経験のうちは正社員として基礎を固め、経験を積んでから働き方を選び直すという方法もあります。
派遣社員として複数の現場を経験してから、正社員として腰を据える企業を選ぶキャリアの組み方もあります。
年収を上げる方法
最も効果的なのは上位資格の取得と、条件の良い企業への転職を掛け合わせることです。
太陽光発電やEV充電設備など専門性の高い分野の経験は、転職市場でも高く評価されやすい傾向があります。
同じ実務経験でも、資格支援制度や評価制度が整った企業に転職するだけで年収が変わるケースも珍しくありません。
独立・一人親方という選択肢
実務経験と資格を積み重ねた先には、独立して一人親方として働く道もあります。
案件ごとの単価交渉次第で収入を伸ばせる反面、営業や事務も自分で担う必要がある点は理解しておきましょう。
独立後も安定的に案件を確保するには、在職中から人脈や信頼関係を築いておくことが欠かせません。

電気設備工事の仕事に就く・転職する方法

ここまでの内容を踏まえ、電気設備工事の仕事に就くための具体的なステップを整理します。
未経験から挑戦するには
多くの企業が未経験者を採用し、働きながら資格取得を支援する制度を用意しています。
まずは求人票の資格支援制度を確認することがポイントです。先輩社員に同行しながら現場を覚えるOJT中心の教育体制も一般的です。
面接では資格の有無以上に、体力面の自己管理やコツコツ学ぶ姿勢が重視される傾向があります。
資格取得のロードマップ
入社後は第二種電気工事士の取得を目指し、実務経験を積みながら第一種や施工管理技士へとステップアップするのが王道ルートです。
資格ごとの受験資格や実務経験年数を早めに把握しておくと、キャリアの見通しが立てやすくなります。
目安として、入社1〜2年目で第二種、3〜5年目で第一種や施工管理技士の取得を目指す企業が多く見られます。
転職エージェント活用のメリット
建設業界に特化した転職エージェントを使うと、資格支援制度の有無や現場の雰囲気など、求人票だけではわからない情報を事前に確認できます。
未経験者向けの求人を効率よく絞り込める点も大きなメリットです。
非公開求人を紹介してもらえることもあり、自分で探すよりも選択肢を広げやすい点も特徴です。
建設業界で求められる人材像
資格や経験よりも、まずは安全意識を持ってコツコツ学び続ける姿勢が評価されやすい業界です。
体力面での不安がある方も、設計や施工管理といった管理系のキャリアパスを選ぶ方法があります。
チームで現場を進める仕事のため、報告・連絡・相談を丁寧に行える人も重宝されます。
電気設備工事に関するよくある質問
Q. 電気設備工事は未経験でも転職できますか?
未経験からの転職は十分可能です。多くの企業が資格取得支援制度を用意しており、入社後に第二種電気工事士を取得しながら実務経験を積むのが一般的なルートです。
Q. 電気設備工事の仕事はきついですか?
高所作業や配線作業など体力を使う場面はありますが、資格を取得して施工管理などの管理系ポジションに進むことで、体力面の負担を抑えたキャリアも選べます。
屋内作業が中心の現場も多く、天候の影響を受けにくい点は他の建設職種と異なる特徴です。
Q. 電気設備工事士の年収1,000万円は目指せますか?
上位資格の取得や独立、単価の高い専門工事の受注を重ねることで年収1,000万円を目指すことは可能ですが、経験と実績の積み重ねが前提となります。
Q. 電気設備工事と電気工事、どちらの求人を探せばよいですか?
まずは「電気工事」の求人から実務経験を積み、受変電設備や幹線設計など「電気設備工事」寄りの案件へ徐々に領域を広げていくのが現実的な進み方です。
まとめ
電気設備工事は、資格取得と実務経験の積み重ねによって着実にキャリアアップを目指せる仕事です。
受変電・幹線・照明・防災といった幅広い工事分野の中から、自分が興味を持てる領域を見つけられるのもこの仕事の魅力です。
まずは第二種電気工事士の取得を目標に、未経験者を歓迎する求人から一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
資格支援制度が整った企業を選べば、働きながら着実にキャリアの土台を築いていくことができます。
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著者:ジョブハウス建設 編集部
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