設備設計の仕事は、企業選びさえ間違えなければホワイト企業で働くことが十分可能です。ただし「設備設計」という職種名だけを見て応募先を決めると、残業時間や休日の実態が想像と大きく異なるケースも少なくありません。

働き方は所属する企業の系統(サブコン系・設計事務所系・メーカー系など)やプロジェクトの規模、社内の業務体制によって大きく変わります。同じ設備設計でも、残業がほとんどない企業もあれば、納期前に業務が集中しやすい企業もあります。

この記事では、設備設計業界全体の労働環境の実態から、ホワイト企業を見極める具体的なチェックポイント、年収相場、そして転職を成功させるステップまでを、統計データと実務の視点から解説します。

この記事のPOINT

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。

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設備設計の仕事はホワイトになりやすい?業界全体の労働環境

設備設計は建設業の中でも比較的デスクワーク中心の職種で、天候に左右される現場仕事とは働き方が異なります。ただし所属する企業の系統によって、忙しさの波や休日の取りやすさは大きく変わります。

設備設計業界全体の労働環境

サブコン系・設計事務所系・メーカー系で働き方はどう違う

設備設計の勤務先は大きく3つに分けられます。空調・電気・給排水などの専門工事を担うサブコン系、意匠設計事務所と組んで設備計画を担当する設計事務所系、そして自社製品の設計に携わるメーカー系です。

サブコン系は現場との連携が多く、竣工前は業務が集中しやすい傾向があります。一方、設計事務所系やメーカー系は比較的スケジュールが読みやすく、計画的に休暇を取得しやすい企業が多い傾向にあります。

3つの系統にはそれぞれ異なる特徴があるため、自分がどの働き方に合っているかを整理してから応募先を絞り込むと、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

系統 特徴 繁忙期の傾向
サブコン系 現場調整が多い 竣工前に集中
設計事務所系 計画立案が中心 提出期限前に集中
メーカー系 自社製品設計 比較的平準化

平均残業時間はどのくらいか

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、建築設計技術者(設備設計を含む建築系設計職)の月間労働時間は166時間程度とされています。これは一般的な会社員の所定労働時間とほぼ同水準です。

ただし、これは業界全体の平均値です。プロジェクトの繁忙期には残業が増える企業もあるため、求人票や面接で自分が応募する企業の実態を個別に確認することが欠かせません。

出典:job tag「建築設計技術者」

有給休暇の取得率は改善傾向にあるか

厚生労働省の調査では、建設業の年次有給休暇取得率は53.2%前後で、全産業平均(65.3%)と比べるとまだ低い水準です。ただし、数年前の40%台からは着実に改善しています。

国土交通省も直轄工事における週休2日の実施率を令和4年度時点で99.6%まで引き上げるなど、業界全体で休日を確保する動きが進んでいます。設備設計職も、この流れの恩恵を受けやすい立場にあります。

出典:厚生労働省「就労条件総合調査」、国土交通省「週休2日の取組方針」

離職率から見る定着のしやすさ

設備設計は専門性が高く、経験を積むほど市場価値が上がる職種です。そのため、腰を据えてキャリアを築く人が多く、現場系の職種と比べて定着率が高い企業も珍しくありません。

一方で、属人化した業務が多い企業では特定の担当者に負荷が集中し、離職につながるケースもあります。定着率の高さは、業務の標準化が進んでいるかどうかを見極める一つの指標になります。

求人票に「平均勤続年数」が記載されている場合は、必ず目を通しておきましょう。勤続年数が長い企業ほど、社員が長く働き続けられる制度や文化が整っている可能性が高いといえます。

現場系の建設職種と比べた働きやすさ

厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、建設業全体の年間実労働時間は全産業平均より約329時間(1日8時間換算で約40日分)長い水準にあります。これは現場作業を伴う職種を含めた業界全体の数値です。

設備設計はデスクワークが中心のため、天候や現場工程に直接左右される職種と比べると、労働時間のコントロールがしやすい立場にあります。ただし前述の通り企業ごとの差は大きいため、個別の確認は欠かせません。

出典:労働政策研究・研修機構「労働時間」

鈴木実のコメント

設備設計のホワイト企業を見極める5つのチェックポイント

企業の知名度やブランドイメージだけでは、実際の働きやすさは判断できません。ここでは求人情報や面接で確認すべき、具体的なチェックポイントを紹介します。

ホワイト企業を見極める5つのチェックポイント

求人票でチェックすべき数字(残業時間・休日数・平均年齢)

求人票では、月平均残業時間・年間休日数・従業員の平均年齢の3つを必ず確認しましょう。年間休日は120日以上が一つの目安です。平均年齢が幅広い層に分散している企業は、若手が定着しやすい環境である可能性が高いといえます。

月平均残業時間が「20時間以内」と明記されている求人は、比較的働きやすい環境である可能性が高いといえます。逆に残業時間の記載がない求人票は、あえて開示していない可能性もあるため、面接で必ず確認しましょう。

口コミサイトを複数比較する

社員クチコミサイトは1社だけの意見に頼らず、複数のサイトを横断して確認することが大切です。投稿時期が古い口コミは、現在の労働環境と乖離している場合があるため、直近1〜2年の投稿を優先的に参考にしましょう。

口コミの内容は個人の主観に左右される部分もあります。同じような指摘が複数のサイトで繰り返し見られる場合は、その企業に共通する傾向として信頼度が高いと判断できます。

有給休暇の取得率については、口コミで「70%以上取得できている」といった具体的な言及があるかを目安にすると分かりやすいです。業界平均の53%前後を大きく上回っていれば、休暇取得に前向きな社風と考えられます。

面接で聞くべき質問

面接では「繁忙期はいつごろで、その時期の残業時間はどのくらいか」「有給休暇は計画的に取得できているか」を具体的に質問しましょう。回答が曖昧だったり、質問自体を避けられたりする場合は注意が必要です。

あわせて「入社後、最初の1年でどのような業務を任されるか」も聞いておくと、教育体制の有無やOJTの充実度を推測できます。

フレックス・在宅勤務など柔軟な働き方の有無

設備設計はCADや構造計算ソフトを使う工程が多く、在宅勤務やフレックスタイム制と相性の良い職種です。柔軟な働き方を制度として導入している企業は、社員の裁量を尊重する社風であるサインの一つです。

ただし制度があっても実際には利用者が少ない「形骸化した制度」の企業もあります。面接で「実際にどのくらいの社員が制度を利用しているか」まで踏み込んで聞くと、実態が見えやすくなります。

資格取得支援・研修制度の充実度

資格取得の受験料補助や、合格時の一時金制度を設けている企業は、社員の長期的な成長に投資する姿勢がある企業と考えられます。研修制度が体系化されているかどうかも、あわせて確認しておきたいポイントです。

先輩社員による指導体制(メンター制度など)が整っている企業は、未経験者や若手であっても早期に戦力化しやすく、結果として定着率の高さにもつながっています。

設備設計の年収相場と待遇面から見るホワイト度

働きやすさは労働時間だけでなく、正当な対価が支払われているかどうかも重要な判断材料です。ここでは年収相場と待遇面の実態を見ていきます。

設備設計の年収相場と待遇面

経験年数別の年収目安

job tagのデータによると、建築設計技術者の平均年収は679.1万円、平均年齢は43.4歳です。経験を積むほど年収が上がりやすい職種で、20代のうちは400万円台からのスタートも珍しくありません。

項目 数値
平均年収 679.1万円
平均年齢 43.4歳
月間労働時間 166時間

出典:job tag「建築設計技術者」

資格手当・残業代がしっかり支給されるか

建築設備士や設備設計一級建築士などの資格を取得すると、月数千円〜数万円の資格手当がつく企業が多くあります。残業代についても、みなし残業の範囲を超えた分がきちんと追加支給されるかを確認しましょう。

固定残業代制度を採用している企業であっても、超過分の残業代を別途支給しているかどうかで、実質的な待遇は大きく変わります。内定後の条件確認では、給与明細のサンプルを見せてもらうのも有効な方法です。

企業規模による年収差

一般的に、企業規模が大きいほど年収水準は高くなる傾向があります。ただし中小規模の設計事務所でも、専門分野に強みを持ち高単価の案件を扱う企業では、大手と遜色ない待遇のケースもあります。

企業規模だけで判断せず、手がけているプロジェクトの種類(オフィスビル・病院・データセンターなど)や、案件単価の水準にも目を向けると、より実態に近い年収イメージを持てます。

賞与・昇給の実態

賞与の支給実績と昇給のペースは、求人票だけでは分かりにくい情報です。面接や内定後の条件確認の場で、直近数年の賞与支給月数や昇給額の推移を具体的に質問しておくと安心です。

鈴木実のコメント

設備設計でブラック企業を避けるための注意点

ホワイト企業の見極め方とあわせて、ブラック企業に共通する特徴も知っておくと、応募先選びの失敗を防ぎやすくなります。

設備設計でブラック企業を避けるための注意点

求人票の「みなし残業」に潜む罠

「固定残業代45時間分込み」といった記載がある場合、それが実際の残業時間の目安になっていることがあります。みなし残業時間が極端に長い求人は、恒常的な長時間労働が前提になっている可能性があるため注意が必要です。

基本給とみなし残業代の内訳が明記されていない求人票にも注意しましょう。合計額だけを提示する求人は、実際の基本給が低く設定されているケースがあります。

納期直前に業務が集中する企業の見分け方

プロジェクトの進行管理が属人的な企業ほど、納期直前に業務が集中しやすい傾向があります。面接で「繁忙期の業務量をどう平準化しているか」を尋ねると、企業のマネジメント体制を見極めるヒントになります。

複数プロジェクトを並行して抱える体制になっていないかも重要な確認ポイントです。一人当たりの担当案件数が極端に多い企業は、恒常的な業務過多に陥っているリスクがあります。

属人化した業務体制のリスク

特定の担当者しか対応できない業務が多い企業では、休暇を取りづらい雰囲気が生まれがちです。マニュアル化やチーム制の導入状況を確認することで、業務の属人化度合いをある程度推測できます。

設計データやノウハウが個人のパソコンにしか残っていない企業は、業務の属人化が進んでいるサインです。組織的な情報共有の仕組みがあるかどうかも、あわせて確認しておきましょう。

面接時の違和感を放置しない

面接官の態度や社内の雰囲気に違和感を覚えた場合、その感覚を軽視しないことが大切です。複数回の面接や職場見学の機会を活用し、実際に働く社員の様子を確認してから判断しましょう。

可能であれば、オフィスの照明が遅い時間まで点いていないか、社員の表情に余裕があるかなど、数字には表れない部分も見ておくと、入社後のギャップを減らせます。

未経験・経験者別、ホワイト企業へ転職するステップ

設備設計へのキャリアアップやホワイト企業への転職を目指すには、資格取得と情報収集の両輪が重要です。

ホワイト企業へ転職するステップ

必要な資格(建築設備士・設備設計一級建築士等)

設備設計のキャリアアップに直結する代表的な資格が、建築設備士と設備設計一級建築士です。建築設備士は実務経験があれば受験でき、取得後は設備設計一級建築士の受験資格にもつながります。

試験の詳細や受験申込については建築技術教育普及センターの建築設備士試験案内で確認できます。

建築設備士は実務経験のみで受験資格を得られるルートもあり、独学でのステップアップがしやすい資格です。さらに上位資格である設備設計一級建築士を取得すれば、大規模建築物の設備設計を単独で担当できるようになり、市場価値の向上につながります。

転職エージェントを活用するメリット

設備設計業界に特化した転職エージェントを利用すると、公開求人だけでなく、労働環境の内部情報を持つ非公開求人も紹介してもらえる場合があります。企業の実際の残業状況や有給消化率など、求人票だけでは分からない情報を事前に確認できる点が大きなメリットです。

エージェントは過去に転職を支援した社員からのフィードバックを蓄積していることが多く、個人で情報収集するよりも精度の高い企業情報を得られる場合があります。給与交渉や条件面の調整を代行してもらえる点も利点です。

職務経歴書でアピールすべきポイント

これまで担当した設備分野(空調・電気・給排水など)、扱った建物用途(オフィス・商業施設・病院など)、使用したCADソフトを具体的に記載すると、実務力が伝わりやすくなります。

単なる担当業務の羅列ではなく、「コスト削減に貢献した」「工期短縮に寄与した」など、成果を数字や具体的なエピソードで示すと、他の候補者との差別化につながります。

転職のベストタイミング

プロジェクトの区切りとなる竣工後や、資格取得直後は転職活動のタイミングとして適しています。在職中から情報収集を始め、条件に合う求人が出たタイミングで動けるよう準備しておくとよいでしょう。

繁忙期に転職活動を始めると、面接日程の調整や情報収集にかけられる時間が限られてしまいます。比較的落ち着いている時期を見計らって動き出すのが理想的です。

鈴木実のコメント

よくある質問

Q. 設備設計は未経験からでも転職できますか?

未経験からの転職は可能です。ポテンシャル採用を行う企業もあり、CADの基礎スキルや建築・設備分野への興味を伝えられれば、選考で評価されるケースがあります。入社後に資格取得を支援する企業を選ぶと、キャリア形成がスムーズです。

Q. 設備設計はきついと言われるのはなぜですか?

納期直前の業務集中や、担当者ごとの業務量の偏りが「きつい」という印象につながりやすい要因です。ただし、これは企業ごとの体制による差が大きく、業務が標準化された企業では負担が軽減されています。

Q. 設備設計の仕事に向いている人の特徴は?

図面やデータを扱う細かい作業が好きな人、建物の裏側にある仕組みに興味がある人に向いています。関係者との調整も多いため、コミュニケーション能力も重要な資質の一つです。

Q. 資格がなくても年収アップは可能ですか?

資格がなくても実務経験を重ねることで年収は上がりますが、建築設備士などの資格を取得すると資格手当が加算され、より確実に年収アップにつながります。

Q. 施工管理と設備設計、ホワイトなのはどちらですか?

一概には言えませんが、施工管理は現場常駐が基本のため天候や工程変更の影響を受けやすい一方、設備設計はデスクワーク中心でスケジュールをコントロールしやすい側面があります。ただし、いずれの職種も企業の体制次第で働きやすさは大きく変わるため、職種名だけでなく企業ごとの実態を確認することが重要です。

Q. 女性でも設備設計として働きやすいですか?

設備設計はデスクワーク中心で体力的な負担が少なく、女性が長く活躍しやすい職種の一つです。産休・育休制度や時短勤務制度が整っている企業も増えており、ライフイベントと両立しながらキャリアを継続している人もいます。制度の実際の利用実績を面接で確認しておくと安心です。

まとめ

設備設計は、企業選びとキャリアの積み方次第でホワイトな働き方を実現しやすい職種です。求人票の数字だけで判断せず、口コミや面接での質問を通じて、実際の労働環境を多角的に確認することが大切です。

サブコン系・設計事務所系・メーカー系という系統ごとの違いを理解した上で、残業時間・有給取得率・資格手当といった具体的な指標を一つひとつチェックしていけば、入社後のギャップを大きく減らせます。

資格取得やキャリアの棚卸しを進めながら、自分に合った企業を見つけていきましょう。転職活動に不安がある場合は、業界に精通した転職エージェントに相談するのも有効な選択肢です。

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著者:ジョブハウス建設 編集部

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