建物の電気・空調・給排水などのライフラインを支える「設備設計」。専門性の高さから即戦力人材の需要が根強く、未経験からのキャリアチェンジ先としても注目されています。
この記事では、設備設計の仕事内容から平均年収、必要な資格、未経験からの転職ロードマップまで、実務データをもとにわかりやすく解説します。

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。
設備設計とはどんな仕事?電気・機械・空調の3分野を解説
設備設計とは、建物の中で人が快適に過ごすために必要な「電気」「空調」「給排水」などの設備を計画し、図面に落とし込む仕事です。意匠設計や構造設計と連携しながら、建物の機能を裏側から支える役割を担います。
担当する分野は大きく「電気設備設計」「機械設備設計」「空調・給排水設備設計」の3つに分かれ、企業によっては1人が複数分野を横断的に担当することもあります。
電気設備設計の仕事内容
電気設備設計は、照明・コンセント・受変電設備・非常用発電機などの計画を担当します。建物の規模に応じた電気容量の算定や、法令に基づく配線計画が主な業務です。
オフィスビルやデータセンターなど、電力需要の大きい施設では特に専門性が求められます。
近年はBCP対策として非常用電源の強化を求める施主が増えており、停電時にどこまで機能を維持するかという計画力も電気設備設計者の腕の見せどころです。
機械設備設計の仕事内容
機械設備設計は、エレベーターや防災設備、搬送設備といった機械系統の計画を行います。建物用途によって求められる設備が大きく異なるため、施設ごとの知識の蓄積が重要です。
商業施設では来客動線を考慮したエレベーター配置、物流施設では搬送設備の処理能力など、用途に応じた最適解を導く提案力が求められます。
空調・給排水設備設計の仕事内容
空調設備設計は快適な室内環境をつくるための空調機・換気計画、給排水設備設計は水回りの配管計画を担当します。省エネ基準への対応が年々厳しくなっており、環境性能への配慮も欠かせません。
近年はZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)対応の案件も増加しており、高効率な空調機器の選定や再生可能エネルギーとの組み合わせを検討する場面も多くなっています。
設備設計と設備施工管理の違い
設備設計は「図面をつくる」仕事、設備施工管理は「図面通りに現場を動かす」仕事です。設計段階から施工性を意識できる人材は、転職市場でも高く評価される傾向にあります。
両者は業務内容が異なるものの、密に連携する場面が多いため、施工管理の経験者が設計側に転身するケースも珍しくありません。現場を知る強みは設計業務でも大きな武器になります。
設備設計の平均年収はいくら?年代・経験別に徹底解説

設備設計の平均年収は、経験や案件規模によって大きな差があります。転職支援会社の実績データでは、支援決定者の平均年収はおおむね600万〜740万円前後で推移しています。出典:JACリクルートメント
| 年代 | 年収目安(万円) |
|---|---|
| 20代 | 400〜550 |
| 30代 | 600〜800 |
| 40代 | 650〜1,000 |
| 50代以上 | 780〜1,100 |
出典:30代以降の年収レンジはJACリクルートメントの転職支援実績データをもとに作成。20代は一般的な相場観の目安
設備設計全体の平均年収
設備設計全体で見ると、経験の浅い層も含めた平均年収は450万〜600万円程度とされています。案件規模や勤務先が組織設計事務所か設備専門会社かによっても差が出ます。
大手ゼネコンや大規模設計事務所は年収水準が高い傾向にある一方、地域密着型の設備会社では年収が抑えめでも、幅広い案件を経験できるという特徴もあります。
20代・30代の年収レンジ
20代のうちは400万円台からのスタートが一般的ですが、実務経験を重ねる30代では600万円台まで伸びるケースが多く見られます。
この時期は担当できる案件の規模も広がりやすく、実務経験の幅を積極的に増やすことが、その後の年収の伸びしろに直結します。
40代以降の年収レンジ
40代以降は、プロジェクトマネジメント能力や資格の有無によって年収差が大きく開きます。管理職クラスでは900万円を超える求人も珍しくありません。
複数プロジェクトを統括するポジションや、若手の育成を任されるポジションでは、設計スキルに加えてマネジメント能力が評価対象になります。
年収を上げるためのポイント
年収アップには「資格取得」「案件規模の拡大」「マネジメント経験」の3つが効果的です。特に一級建築士や建築設備士の取得は、年収交渉の大きな武器になります。
また、同じ実務経験年数でも、担当してきた建物用途の幅や案件規模によって評価は変わります。転職の際は職務経歴書に具体的な担当範囲を明記することが重要です。
設備設計に転職するために必要な資格とスキル

設備設計そのものに必須の国家資格はありませんが、以下の資格を持っていると転職活動や実務で有利に働きます。担当分野に応じて計画的に取得を目指すのがおすすめです。
建築設備士
建築設備士は、建築士に対して設備設計に関する助言を行うための国家資格です。実務経験2年以上で受験可能なため、若手のうちから取得を目指しやすい資格といえます。
資格手当を設けている企業も多く、取得すれば実務スキルの証明にもなるため、転職市場での評価も上がりやすい資格です。
設備設計一級建築士
一定規模以上の建築物で設備設計を行う際に必要となる資格です。一級建築士の資格保有と実務経験が受験条件となり、取得すれば大規模案件を任される機会が増えます。
取得難易度は高いものの、大手組織設計事務所やゼネコンでのキャリアアップを目指すなら、長期的な目標として位置づけておきたい資格です。
電気主任技術者・管工事施工管理技士などの関連資格
電気設備を専門とするなら電気主任技術者、空調・給排水を専門とするなら管工事施工管理技士など、分野に応じた資格を組み合わせることで専門性をアピールできます。
複数分野の資格を持つ「マルチスキル人材」は、案件のアサインの幅が広がるため、企業からのニーズも高い傾向にあります。
CAD・BIMスキルと実務で求められる能力
図面作成にはCADやBIMの操作スキルが欠かせません。あわせて建築基準法や消防法などの関連法規の知識、他職種と調整するコミュニケーション能力も重視されます。
近年はBIMを活用した3次元での干渉チェックが標準になりつつあり、意匠・構造との整合性を早期に確認できるスキルは、実務経験とあわせて重宝されます。
未経験から設備設計へ転職する方法とキャリアパス

設備設計は専門職ですが、関連職種からのキャリアチェンジであれば未経験でも採用の門戸は開かれています。ここでは、未経験からの転職で押さえておきたいポイントを紹介します。
未経験可の求人の特徴
未経験可の求人の多くは、設備施工管理や電気工事など近接職種の経験を歓迎条件としています。近接職種の経験があればポテンシャル採用の対象になりやすい点は覚えておきましょう。
完全な異業種からの転職はハードルが高くなりますが、建築・設備分野に何らかの接点があれば、選考でポジティブに評価されやすくなります。

施工管理・設備工事からのキャリアチェンジ
現場を知る施工管理や設備工事の経験者は、設計段階から施工性を考慮できる強みがあります。この強みは面接でも積極的にアピールしたいポイントです。
「現場でどんな納まりの不具合を経験したか」「それをどう設計にフィードバックできるか」を具体的に語れると、説得力のあるアピールになります。
入社後に資格取得を目指すキャリアパス
多くの企業では、入社後にOJTで実務を覚えながら建築設備士などの資格取得を支援する制度を用意しています。資格取得支援制度の有無は求人選びの重要な判断材料になります。
受験費用の補助や勉強時間の確保など、支援内容は企業によって差があるため、募集要項だけでなく面接でも具体的に確認しておくと安心です。
スペシャリスト・独立という将来像
経験を積んだ先には、特定分野のスペシャリストとして活躍する道や、独立して設計事務所を開業する道もあります。将来像を描いたうえで転職先を選ぶことが大切です。
目先の年収だけでなく、5年後・10年後にどんな設計者になりたいかを軸に転職先を選ぶことで、長期的なキャリア満足度も高まります。
設備設計への転職を成功させる求人の選び方とポイント

求人票の情報だけでは見えにくい部分も多いため、以下のポイントを押さえて比較検討しましょう。転職活動全体の進め方もあわせて把握しておくと安心です。
求人票でチェックすべき項目
担当予定の建物用途、案件の規模感、使用CAD・BIMソフト、資格取得支援の有無は必ず確認しましょう。入社後のミスマッチを防ぐために重要な項目です。
あわせて、平均残業時間や繁忙期の有無、担当案件数の目安なども確認しておくと、入社後の働き方をイメージしやすくなります。
転職エージェントを活用するメリット
建設業界に特化したエージェントを活用すると、非公開求人の紹介や年収交渉の代行など、個人での転職活動では得にくいサポートを受けられます。
業界に精通したアドバイザーであれば、企業ごとの社風や設計体制といった、求人票だけではわからない情報も得やすくなります。

面接で聞かれやすい質問と対策
面接では「担当した設備の種類と規模」「使用ソフト」「今後身につけたいスキル」を聞かれるケースが多くあります。実務経験を具体的な数字で語れるよう準備しておきましょう。
あわせて「なぜ設備設計を志すのか」という転職理由も明確にしておくと、面接官に納得感のある回答ができます。
転職活動のスケジュール感
応募から内定まではおおむね1〜2ヶ月が目安です。在職中に活動する場合は、繁忙期を避けて計画的にスケジュールを組むことをおすすめします。
書類作成や面接対策には想定以上に時間がかかるため、早めにエージェントへ相談し、逆算してスケジュールを立てることが成功のコツです。

設備設計に関するよくある質問
Q. 設備設計に転職するのに未経験でも大丈夫?
未経験でも転職は可能です。特に設備施工管理や電気工事など近接職種の経験があれば、ポテンシャル採用の対象になりやすく、入社後に資格取得を支援する企業も多くあります。まったくの異業種からの場合は、まず関連資格の学習から始めるのも一つの方法です。
Q. 設備設計の平均年収はどのくらい?
転職支援会社の実績データでは600万〜740万円前後が目安です。年代や経験、案件規模によって400万円台から1,000万円超まで幅があります。担当してきた建物用途や案件規模によっても評価は変わります。
Q. 設備設計に必要な資格は何を取ればいい?
必須資格はありませんが、建築設備士や設備設計一級建築士、分野に応じた電気主任技術者・管工事施工管理技士などがキャリアアップに役立ちます。まずは実務経験2年から挑戦できる建築設備士を目標にするのがおすすめです。
Q. 設備設計と意匠設計の違いは?
意匠設計が建物のデザインや空間計画を担うのに対し、設備設計は電気・空調・給排水などの機能面を専門に設計します。両者は密接に連携しながら1つの建物をつくり上げる、いわば車の両輪のような関係です。
まとめ
設備設計は専門性の高さから需要が安定しており、未経験からでも近接職種の経験を活かしてキャリアチェンジできる職種です。
まずは自分がこれまで培ってきた経験や強みを整理し、資格取得支援のある求人を軸に情報収集を始めることが、後悔のない転職への第一歩です。転職エージェントを活用すれば、自分に合った求人を効率的に見つけやすくなります。
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著者:ジョブハウス建設 編集部
建設・建築・インフラ業界に特化した転職支援プラットフォーム「ジョブハウス建設」編集部です。技術士、建設コンサルタント、施工管理など、建設分野の幅広い専門職・技術職に関する情報を、現場の知見と最新データをもとに正確かつわかりやすく発信しています。
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