一級建築士を目指す中で、「将来性がない」「一級建築士は食えない」という声を耳にして不安を感じていませんか。

結論からお伝えすると、一級建築士の将来性は決して暗くありません。若手の一級建築士は慢性的に不足しており、資格の価値は今後さらに高まっていく見込みです。

この記事では、将来性がないと言われる理由の実態、データで見る需要の変化、これからの一級建築士に求められるスキル、そしてキャリアの選び方までをわかりやすく解説します。

「今から一級建築士を目指しても遅くないか」「取得しても将来性がないなら意味がないのでは」と迷っている20代・30代の方にこそ読んでほしい内容です。

この記事のPOINT

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。

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一級建築士に将来性はないと言われる3つの理由

一級建築士に将来性はないと言われる3つの理由

まずは「一級建築士は将来性がない」と言われる背景を整理します。実態を知ることで、必要以上に不安になる必要がないとわかります。ネガティブな声の多くは、データを見れば誤解や一部の実情に基づくものだとわかります。

一級建築士とは、建築物の規模や構造を問わずすべての設計・工事監理を行える国家資格です。二級建築士や木造建築士と異なり、法律上の設計対応範囲に制限がありません。

AI・BIMの普及で設計業務が代替されるという懸念

AI技術やBIM(Building Information Modeling)の普及により、図面作成や積算といった定型業務は効率化が進んでいます。

ただし、施主との合意形成や現場での判断、法規との整合性チェックなど、人の経験と責任が求められる業務はAIに代替されにくいのが実情です。

実際、大手ゼネコンや設計事務所ではBIMを前提とした設計フローへの移行が進んでいますが、それは業務の効率化であって、建築士という職種自体の消滅を意味するものではありません。

施主の要望を汲み取った提案や、予期せぬトラブルへの現場での臨機応変な対応は、依然として人にしかできない領域です。

少子高齢化による新築需要の減少

人口減少に伴い、新築住宅の着工数は中長期的に減少傾向にあります。この点は将来性への不安材料としてよく挙げられます。

一方で、既存建築物の改修・維持管理・耐震化といった分野の需要は拡大しており、仕事の中身が「新築中心」から「ストック活用」へと移行していると捉えるのが実態に近いといえます。

国土交通省も既存住宅のストック活用やリノベーション需要の拡大を政策として後押ししており、新築偏重の視点だけで将来性を判断するのは早計だといえます。

資格取得後も年収が上がらないという不満の声

「資格を取っても年収が変わらない」という声もありますが、これは資格取得後のキャリア戦略が不十分なケースに多く見られる傾向です。

設計事務所内でのポジション、独立、ゼネコンへの転職など、資格を活かす選択肢を具体的に検討していないと、年収アップにつながりにくくなります。

逆にいえば、資格取得後にどの業界・どの働き方でキャリアを積むかを明確に描けている人ほど、着実に年収を伸ばしている傾向があります。

一級建築士の登録者数に見る「食えない」説の実態

公益社団法人日本建築士会連合会によると、一級建築士の登録者数は383,923人(令和7年4月1日時点)です。年代別では60代以上が全体の4割超を占める一方、20代の登録者は全体のわずか1%程度にとどまります。

出典:日本建築士会連合会 一級建築士登録状況

近年は一級建築士試験の合格率も低下傾向にあり、令和7年度の設計製図試験の合格率は35.0%でした。

出典:国土交通省 令和7年一級建築士試験 設計製図の試験結果

資格取得のハードルが上がっているからこそ、「食えない」どころか若手の一級建築士は圧倒的に希少な存在だといえます。

特にゼネコンや組織設計事務所では、若手一級建築士の採用・育成に力を入れる動きが強まっており、今後もこの傾向は続くと見られます。

鈴木実のコメント

データで見る一級建築士の将来性|若手が不足している市場構造

データで見る一級建築士の将来性

ここでは、一級建築士の将来性を裏付ける市場データを具体的に見ていきます。感覚論ではなく、公的機関が公表している数字をもとに実態を確認しましょう。

一級建築士登録者の年代別割合と20代の希少性

前述の通り、一級建築士全体に占める20代の割合はわずか1%程度です。30代を合わせても1割程度にとどまります。

採用市場では「経験豊富だが高齢化するベテラン層」と「圧倒的に少ない若手層」という構造が続いており、若手一級建築士の市場価値は年々高まっていると考えられます。

実務経験を積みながら早期に一級建築士を取得した20代は、企業側から見ても「将来の中核人材」として評価されやすい立場にあります。

国土交通省が進める建築士の役割拡大

国土交通省は、既存建築物の調査・評価やストック活用など、建築士が担う業務範囲の拡大を進めています。

出典:国土交通省 建築士について

これにより、新築設計以外の分野でも一級建築士の専門性を活かせる場が広がっています。

具体的には、既存不適格建築物の調査・改修提案や、公共施設の長寿命化計画への関与など、これまで以上に幅広い業務に一級建築士の知見が求められる場面が増えています。

行政・自治体からの相談業務や、まちづくりに関わるコンサルティング業務など、設計以外の分野で一級建築士の資格を活かす道も広がっています。

既存建築物の維持・活用ニーズの高まり

老朽化した建築物の耐震診断やリノベーション設計など、既存ストックを活かす仕事は今後さらに増加が見込まれます。

新築一辺倒ではなく、改修・維持管理分野に強い一級建築士は、今後の市場でも安定した需要が見込めます。

特に築30年を超えるマンションやオフィスビルでは、耐震補強や設備更新の需要が今後10年で本格化すると見込まれており、改修設計に強い一級建築士の需要はさらに拡大するでしょう。

防災・減災分野で広がる一級建築士の活躍の場

地震や豪雨など自然災害のリスクが高まるなか、建物の耐震性評価や減災設計に携わる一級建築士のニーズも拡大しています。

都市の再開発や老朽化インフラの更新など、社会課題の解決に直結する分野でも一級建築士の専門知識が求められています。

自治体や民間企業が進める防災まちづくりのプロジェクトでも、建築の専門知識を持つ人材は欠かせない存在であり、一級建築士が担える役割は今後も広がっていくと考えられます。

一級建築士の平均年収とキャリアパス別の将来性

一級建築士の平均年収とキャリアパス別の将来性

将来性を判断するうえで、実際の年収水準とキャリアパスごとの違いも押さえておきましょう。同じ一級建築士でも、働き方によって年収レンジは大きく異なります。

一級建築士の平均年収の目安

求人ボックス給料ナビの集計によると、一級建築士関連の仕事の平均年収は550万円程度とされています。

出典:求人ボックス給料ナビ

企業規模や経験年数、担当する案件の規模によって年収は大きく変動します。以下はキャリアパス別の目安です。

なお、この年収水準はあくまで平均値であり、担当する案件の規模や役職、独立の有無によって数百万円単位の差が生まれる点には注意が必要です。

一級建築士の資格手当を月数万円程度支給する企業も多く、資格取得が直接的な収入アップにつながるケースも少なくありません。

働き方 年収目安(万円) 特徴
組織設計事務所 500〜800 大規模案件に強み
ゼネコン設計部 600〜900 福利厚生が充実
独立・開業 300〜1500 実力次第で青天井
リフォーム関連 450〜650 顧客との距離が近い

ゼネコン・組織設計事務所で働く場合の将来性

組織設計事務所やゼネコンの設計部門は、大規模プロジェクトに携われる点が魅力です。福利厚生や研修制度が整っている企業も多く、着実にキャリアを積みたい方に向いています。

大規模な複合施設やインフラ関連の設計に携われることが多く、若いうちから幅広い経験を積みたい人には特に向いている環境といえます。

独立・開業で年収を伸ばす一級建築士の将来性

独立・開業は、実力と人脈次第で年収を大きく伸ばせる選択肢です。一方で案件獲得の営業力や経営スキルも必要になるため、事前の実務経験の積み方が重要になります。

特に近年は、SNSやポートフォリオサイトを活用して個人で案件を獲得する一級建築士も増えており、独立のハードルは以前よりも下がりつつあります。

ただし、収入が安定するまでには時間がかかることも多いため、独立前に十分な実績と資金計画を準備しておくことが重要です。

リフォーム・リノベーション分野で高まる需要

既存住宅の性能向上や省エネ改修のニーズが高まるなか、リフォーム・リノベーション分野は今後も安定した需要が見込まれる領域です。

大手ハウスメーカーの改修部門だけでなく、地域密着型の工務店やリノベーション専門会社でも、一級建築士の資格を持つ人材の採用意欲は高まっています。

鈴木実のコメント

これからの一級建築士に求められる5つのスキル

これからの一級建築士に求められる5つのスキル

将来性を自分のものにするには、資格を取ったあとに何を身につけるかが重要です。資格はあくまで土台であり、その上にどんなスキルを積み上げるかで市場価値が変わります。

BIM・DXツールを使いこなすITスキル

BIMをはじめとするデジタルツールは、今や設計業務の前提条件になりつつあります。ツールを使いこなせるかどうかで業務効率と評価が大きく変わります。

BIMを使った3次元設計は、施主への提案力を高めるだけでなく、施工段階での手戻りを減らすメリットもあり、今後ますます標準スキルとして定着していくと見られます。

近年は生成AIを使った提案資料作成やプレゼン資料の効率化も進んでおり、こうした新しいツールを積極的に取り入れる姿勢も将来性を高める要素になります。

施主・現場と信頼関係を築くコミュニケーション力

設計内容を施主にわかりやすく説明する力、現場の職人と円滑に連携する力は、AIには代替できない一級建築士ならではの価値です。

専門用語をかみ砕いて説明できる建築士は施主からの信頼を得やすく、リピート依頼や紹介案件にもつながりやすい傾向があります。

法規・省エネ基準など最新知識のアップデート力

建築基準法や省エネ基準は頻繁に改正されます。最新の法規制度をキャッチアップし続ける姿勢が、専門家としての信頼につながります。

日本建築士会連合会のCPD制度を活用すると、体系的に知識をアップデートできます。詳細は日本建築士会連合会 CPD制度の概要で確認できます。

省エネ基準の適合義務化など、近年は制度改正のスピードが速まっているため、定期的な情報収集を習慣化しておくことが将来性を維持するうえで欠かせません。

関連資格でキャリアの幅を広げる力(施工管理技士など)

施工管理技士や構造設計一級建築士など、関連資格を組み合わせることで対応できる業務の幅が広がり、市場価値もさらに高まります。

特に施工管理技士の資格を併せ持つ一級建築士は、設計から施工管理までを一貫して担えるため、企業からの評価が高くなる傾向があります。

人脈と実績を積み上げるキャリア戦略

設計実績や業界内の人脈は、独立や転職の際に大きな武器になります。若手のうちから意識的に実績と人脈を積み上げることが将来性を左右します。

業界内の勉強会やセミナーに参加し、自らの設計実績を発信していくことも、将来のキャリアの選択肢を広げるうえで有効な手段です。

鈴木実のコメント

一級建築士としての将来性を高めるキャリアの選び方

一級建築士としての将来性を高めるキャリアの選び方

最後に、これから一級建築士を目指す方、資格を活かしてキャリアアップしたい方が意識すべきポイントを紹介します。キャリアの選び方次第で、将来性の活かし方は大きく変わります。

20代・30代が一級建築士を目指すべき理由

登録者に占める20代の割合が1%程度という現状は、裏を返せば若手一級建築士の希少性がそのまま市場価値になることを意味します。

受験を検討する方は、建築技術教育普及センター 一級建築士試験公式サイトで最新の試験日程を確認しておきましょう。

若いうちに一級建築士を取得しておくことで、その後のキャリアの選択肢(設計・独立・マネジメントなど)を早い段階から広げられる点も大きなメリットです。

未経験・実務未経験からのキャリアチェンジの現実

設計実務が未経験でも、施工管理や現場監督などの経験を活かして建築士としてのキャリアをスタートするケースは珍しくありません。

実際に、施工管理として現場経験を積んだのちに一級建築士資格を取得し、設計職へキャリアチェンジする事例も多く見られます。現場での経験は、設計者になったあとも大きな強みになります。

転職エージェントを活用した将来性の高い職場選び

将来性のある職場を選ぶには、企業の将来性・案件の種類・育成体制などを比較検討することが大切です。

一人での情報収集には限界があるため、業界に精通した転職エージェントを活用し、非公開求人も含めて選択肢を広げることをおすすめします。

特に建設・建築業界に特化したエージェントであれば、企業の内部事情や案件の将来性まで踏み込んだ情報を得られるケースもあります。

一級建築士のキャリア形成でよくある失敗パターン

資格取得をゴールにしてしまい、その後のキャリア戦略を考えていないケースは、年収が伸び悩む典型的な失敗パターンです。

資格はスタートラインに過ぎません。取得後にどんな分野・働き方でキャリアを積むかを早い段階から考えておくことが、将来性を最大限に活かす近道です。

反対に、資格取得後すぐにキャリアの方向性を決め、必要なスキルを逆算して身につけていった人ほど、将来性の高いポジションを築いている傾向があります。

一級建築士の将来性Q&A

Q. 一級建築士は本当に将来性がないのですか?

将来性がないとは言えません。登録者の高齢化が進む一方で20代の登録者はわずか1%程度と少なく、若手一級建築士の需要はむしろ高まっています。新築だけでなく改修・防災分野でも活躍の場は広がっています。

Q. 一級建築士の平均年収はどれくらいですか?

求人ボックス給料ナビによると、一級建築士関連の仕事の平均年収は550万円程度とされています。企業規模や経験、独立の有無によって幅があり、独立すれば年収1,000万円を超えるケースもあります。

Q. AIによって一級建築士の仕事はなくなりますか?

図面作成など定型業務はAIやBIMで効率化が進みますが、施主との合意形成や現場判断など人の経験が必要な業務は残るため、仕事自体がなくなるとは考えにくいです。AIは業務を効率化する道具として捉えるのが実態に近いでしょう。

Q. 未経験からでも一級建築士を目指せますか?

受験資格を満たせば挑戦可能です。施工管理など建築関連の実務経験を積みながら資格取得を目指すルートも一般的です。試験制度の詳細は国土交通省 一級建築士試験についてで確認できます。

Q. 一級建築士と技術士は何が違いますか?

一級建築士は建築物の設計・工事監理を行う国家資格です。一方、技術士は土木・建設分野を含む幅広い分野の高度な技術力を証明する資格で、対象範囲や業務内容が異なります。

Q. 一級建築士の資格を取ってから独立するまでの目安期間は?

一般的には資格取得後に実務経験を5〜10年程度積んでから独立するケースが多く見られます。案件獲得のための人脈形成や経営知識の習得も並行して進めることが重要です。

まとめ

一級建築士は「食えない」「将来性がない」と言われることがありますが、実態はむしろ逆です。登録者の高齢化と若手不足により、20代・30代の一級建築士の希少価値は今後さらに高まっていくと考えられます。

BIMなどのデジタルスキル、コミュニケーション力、最新の法規知識を身につけ、自分に合ったキャリアパスを選ぶことが、将来性を最大限に活かす鍵になります。

資格取得を目指す方も、資格を活かした転職を考えている方も、まずは自分のキャリアの方向性を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。

一人で悩むよりも、業界の実情を知るプロに相談しながらキャリアを組み立てていくことが、将来性を確実に手にする近道になります。

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著者:ジョブハウス建設 編集部

建設・建築・インフラ業界に特化した転職支援プラットフォーム「ジョブハウス建設」編集部です。技術士、建設コンサルタント、施工管理など、建設分野の幅広い専門職・技術職に関する情報を、現場の知見と最新データをもとに正確かつわかりやすく発信しています。

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