設備設計と聞いても、具体的に何をする仕事なのかイメージしづらい方も多いのではないでしょうか。
設備設計とは、建物内の電気・空調・給排水などのインフラを計画し、快適で安全な建物を実現する仕事です。
この記事では、設備設計の仕事内容を5つの工程に分けて解説するとともに、年収相場や必要な資格、向いている人の特徴まで詳しく紹介します。
未経験からのキャリアチェンジを考えている方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。
設備設計とはどんな仕事?建築設計・意匠設計との違い

設備設計は、建物に「命」を吹き込む仕事とも言われます。まずは基本的な役割と、他の設計分野との違いを整理しましょう。
設備設計の定義と役割
設備設計とは、建物内の電気・空調・給排水衛生などの設備を計画し、図面に落とし込む仕事です。
どれだけ意匠が優れた建物でも、快適な室温や十分な電力、安全な水回りがなければ機能しません。設備設計は建物の「使いやすさ」を支える縁の下の力持ちといえる存在です。
求められる設備の内容は建物用途によって大きく異なります。オフィスビルでは執務環境の快適性や通信インフラ、病院では停電時にも稼働し続ける非常用電源、工場では生産設備に対応した大容量の電気・空調設備が重視されるなど、案件ごとに検討すべきポイントが変わってきます。
意匠設計・構造設計との違い
建築設計は大きく「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3分野に分かれます。
| 分野 | 役割 |
|---|---|
| 意匠設計 | 外観・間取りなどデザイン全般 |
| 構造設計 | 柱・梁など建物の強度 |
| 設備設計 | 電気・空調・給排水など機能面 |
意匠設計者が描いたデザインに対し、設備設計者は「その空間を機能させるための仕組み」を検討・調整する立場にあります。両者は設計初期から密に連携しながら作業を進めます。
電気設備設計・空調設備設計・給排水衛生設備設計の3分野
設備設計はさらに専門分野が分かれています。電気設備設計・空調設備設計・給排水衛生設備設計の3分野が代表的です。
- 電気設備設計:照明、コンセント、受変電設備、防災設備などを計画
- 空調設備設計:冷暖房、換気、排煙などの空気環境を計画
- 給排水衛生設備設計:給水、排水、ガス、トイレ・厨房などの水回りを計画
一人がすべての分野を担当することは少なく、企業や案件の規模によって分野ごとに専門性を持つ設計者が分担するのが一般的です。
近年は脱炭素社会に向けた動きを受け、消費エネルギーを実質ゼロに近づけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)への対応が求められる案件も増えています。省エネルギー機器の選定や再生可能エネルギーの活用提案など、環境配慮の視点も設備設計者に欠かせないスキルになりつつあります。詳しい制度概要は環境省のZEB PORTALで確認できます。
設備設計事務所・組織設計事務所・ゼネコン設計部の違い
設備設計者が活躍する主な勤務先は、大きく3つに分けられます。
- 設備設計事務所:設備設計に特化した専門事務所
- 組織設計事務所:意匠・構造・設備を一括で手掛ける大手設計事務所
- ゼネコン設計部:施工会社の社内設計部門
勤務先によって、案件の規模や関われる工程の幅、他部署との連携の仕方が変わってきます。転職の際は、自分がどの働き方に合っているかも意識して企業選びをすると失敗が少なくなります。

設備設計の仕事内容を5つの工程で解説

設備設計の仕事は、打ち合わせから工事監理まで一連の工程を通じて進みます。ここでは代表的な5つの工程を順番に見ていきましょう。
①施主・意匠設計者との打ち合わせ
まずは施主や意匠設計者と打ち合わせを行い、建物にどのような設備が必要かをヒアリングします。
例えば空調設備であれば、冷暖房が必要な範囲や温度管理の方法、換気の考え方などをすり合わせます。この段階での認識のズレは後工程に大きく影響するため、丁寧なコミュニケーションが欠かせません。
意匠設計者との連携も重要です。デザイン上のこだわりと設備上の制約が衝突する場面も多く、双方が納得できる落としどころを探る調整力が求められます。
②基本設計(プランニング・機器容量の検討)
ヒアリング内容をもとに、具体的な設備計画を立てるのが基本設計です。
機器の容量や配置、予算配分などを検討し、コスト面と快適性のバランスを取りながら最適なプランを提案します。この段階の判断が、建物の使い心地や光熱費に直結します。
過剰な設備を入れればコストが膨らみ、逆に不足すれば快適性が損なわれるため、建物の使い方を想像しながら「ちょうど良い設計」を見極める経験値が問われる工程です。
③実施設計(図面作成・CAD/BIM)
基本設計で顧客の合意が得られたら、実際に工事で使う詳細な図面を作成する実施設計に進みます。
近年はCADに加えて、3次元モデルで設計情報を一元管理するBIM(Building Information Modeling)を活用する現場も増えており、他分野の設計者との情報共有がスムーズになっています。
配管・ダクト・配線などは意匠や構造の部材と物理的に干渉しやすいため、BIM上で事前に干渉チェックを行うことで、現場での手戻りを未然に防げるのも大きなメリットです。国土交通省では建築確認へのBIM活用に向けたガイドライン整備も進めており、詳細は国土交通省の公式ページで確認できます。
④積算・見積もり
すべての設計が完了したら、工事発注予算を作成するために機器や部材のコストを積算し、見積もりを出します。
設計内容がコストに見合っているかを最終確認する重要な工程であり、施主への説明責任も伴います。
見積もりの精度が低いと、後々の追加工事や予算超過につながりかねません。市場価格の動向を把握し、複数の部材メーカーの情報を比較検討する地道な作業が求められます。
⑤工事監理・官庁手続き
設計図通りに工事が進んでいるかを現場で確認する工事監理も、設備設計者の重要な仕事です。
また建築確認申請や消防同意など、法令に基づく官庁への手続きが必要になる場面もあり、法規の知識も求められます。
設計図と現場の施工内容にズレがないかを確認しながら、必要に応じて施工会社へ指示を出すこともあり、図面作成だけにとどまらない現場対応力も試される工程です。
設備設計の平均年収はいくら?経験・資格別の目安

設備設計への転職を考えるうえで、年収相場は気になるポイントの一つでしょう。ここでは求人データをもとに具体的な水準を紹介します。
未経験・若手(20代)の年収相場
求人ボックス給料ナビによると、設備設計の平均年収は約461万円、月給換算で約38万円、初任給の目安は約21万円とされています。
未経験・若手層は正社員の給与分布のうち最も多い300万〜366万円のレンジからスタートするケースが多く、経験を積むごとに徐々に上昇していく傾向があります。
出典:求人ボックス給料ナビ
経験者・資格保有者の年収相場
正社員全体の給与幅は300万〜828万円と広く、経験や保有資格によって大きな差が生まれます。
一級建築士や設備設計一級建築士などの資格を取得し、責任者クラスとして案件をまとめられるようになると、年収800万円台も視野に入ってきます。
業界平均との比較(厚生労働省データ)
厚生労働省の調査では、令和4年度における設備設計職の平均年収はおよそ620万円という結果も出ており、母集団や集計方法によって数値に幅があることがわかります。
転職活動では単一の統計だけでなく、複数のデータを参考にしながら、応募先企業の給与テーブルを個別に確認することが大切です。
経験年数別の年収イメージ
ここまで紹介したデータをもとに、経験年数別のおおまかな年収イメージを整理すると次のようになります。あくまで目安として参考にしてください。
| 経験年数 | 年収目安(万円) |
|---|---|
| 未経験〜3年目 | 300〜400 |
| 4〜9年目 | 400〜550 |
| 10年目以降・資格保有者 | 550〜828 |
年収を上げる3つのポイント
- 設備設計一級建築士など専門資格を取得する
- 電気・空調・給排水のいずれかで高い専門性を確立する
- 大規模プロジェクトの実績を積み、マネジメント経験を持つ
資格取得と実務経験の掛け合わせが、年収アップへの最も確実な近道といえるでしょう。

設備設計に必要な資格とスキル

設備設計はキャリアを重ねるほど資格の重要性が増していく仕事です。ここでは代表的な資格と必要なスキルを紹介します。
建築士(一級・二級)
設備設計の基礎となる資格が建築士です。取り扱える建物の規模に応じて一級・二級・木造建築士に分かれており、一級建築士を取得すればあらゆる規模の建物の設計に携われます。
大手の設備設計事務所や組織設計事務所では、一級建築士の取得を推奨・支援している企業も少なくありません。
設備設計一級建築士
より専門性の高い資格が設備設計一級建築士です。一級建築士として5年以上設備設計の業務に従事したのち、国土交通大臣の登録を受けた講習機関の講義・修了考査を受けることで取得できます。
一定規模以上の建築物では、この資格を持つ設計者による法適合確認が義務付けられており、大規模プロジェクトを主導するうえで欠かせない資格です。
出典:国土交通省
建築設備士・技術士
建築設備士は、建築士に対して設備設計の技術的なアドバイスができる国家資格です。試験は建築技術教育普及センターが実施しており、受験を検討する場合は最新の日程を公式サイトで確認しておきましょう。
近年の最終合格率はおおむね15〜20%台で推移しており、実務経験と並行した計画的な学習が合格の鍵となります。
出典:建築設備NOTE
また技術士(衛生工学・電気電子部門など)も、設備分野の高度な専門性を証明する資格として評価されています。
資格以外に求められるスキル
- CAD・BIMを扱う図面作成スキル
- 意匠設計者や施主と調整するコミュニケーション力
- 空間全体を立体的にイメージする空間認識力
資格は知識の証明になりますが、実務では関係者との調整力が成果を大きく左右します。図面を描く力と同じくらい、対話する力も重要視されます。
資格取得までの学習スケジュール目安
建築設備士や設備設計一級建築士は、実務経験の年数要件があるため、入社後すぐに取得できる資格ではありません。まずは日々の業務で設計知識を積み上げながら、並行して独学や通信講座で試験対策を進めるのが一般的な進め方です。
働きながらの資格取得は負担も大きいため、資格取得支援制度や講習費用の補助がある企業を選ぶことで、無理なく学習を継続しやすくなります。
設備設計に向いている人の特徴と未経験からの転職方法

最後に、設備設計への適性と、未経験から転職を成功させるポイントを解説します。
設備設計に向いている人の特徴
- 細かい数値やルールを正確に扱うのが得意な人
- 複数の関係者の意見を調整するのが苦にならない人
- 建物の仕組みや技術に純粋な興味・探究心がある人
設備設計は地道な検討や調整の積み重ねが多い仕事です。派手さよりも「建物を支える仕組みづくり」に喜びを感じられるかどうかが、長く続けられるかの分かれ目になります。
未経験から設備設計に転職するには
設備設計は専門性の高い仕事ですが、未経験からの転職事例も少なくありません。特に若手であればポテンシャル採用の求人も多く、入社後に資格取得を支援する企業もあります。
電気工事士や施工管理など、建築・設備に関連する経験があると、選考でのアピール材料になりやすいでしょう。
転職を成功させるポイント
- 意匠設計との違いなど、業務理解を深めたうえで応募する
- 資格取得支援制度の有無を企業選びの基準にする
- 電気・空調・給排水のうち、興味のある専門分野を明確にする
自分の強みと企業が求める人物像をすり合わせることで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。
設備設計者のキャリアパス(若手→中堅→管理職)
入社後まずは先輩の指示のもと、図面のチェックや簡単な積算業務からキャリアをスタートするケースが一般的です。
数年の実務経験を積むと、一つの案件を任される担当者として基本設計から工事監理まで一連の工程を主導するようになります。
さらに設備設計一級建築士などの資格を取得すれば、複数案件を統括するプロジェクトマネージャーや、部門を率いる管理職としてキャリアの幅を広げることも可能です。

設備設計に関するよくある質問
Q. 設備設計とはどんな仕事ですか?
建物内の電気・空調・給排水などの設備を計画・設計する仕事です。快適で安全な建物を実現するために欠かせない役割を担っており、施主へのヒアリングから工事監理まで幅広い工程に携わります。
Q. 設備設計に資格は必須ですか?
未経験・無資格から転職できるケースもありますが、キャリアアップを目指すなら一級建築士や設備設計一級建築士などの資格取得が重要になります。企業によっては資格取得支援制度が用意されている場合もあります。
Q. 設備設計の平均年収はどれくらいですか?
求人ボックスの調査では平均約461万円、厚生労働省の調査ではおよそ620万円というデータがあります。経験や資格、勤務先によって幅があり、資格を取得した経験者は年収800万円台に達するケースもあります。
Q. 設備設計はどんな人に向いていますか?
細かい数値やルールを正確に扱うのが得意で、施主や意匠設計者など複数の関係者との調整を苦にしない人に向いています。建物の仕組みそのものに興味を持てるかどうかも長く続ける上でのポイントです。
Q. 未経験からでも設備設計に転職できますか?
可能です。特に若手層はポテンシャル採用の求人もあり、入社後に資格取得を支援する企業も存在します。電気工事士や施工管理などの関連経験があれば、選考でのアピール材料にもなります。
まとめ
設備設計は、電気・空調・給排水といった建物のインフラを計画し、快適で安全な暮らしや働き方を支える仕事です。
打ち合わせから基本設計、実施設計、積算、工事監理まで一連の工程に携わりながら、専門性を高めていけるのが大きな魅力といえます。
未経験からでも挑戦できる求人があるほか、資格取得によって着実にキャリアアップできる仕事です。この記事を参考に、自分に合ったキャリアの選択肢として検討してみてください。
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