給排水設備工事は、建物にきれいな水を届け、使い終わった水を安全に排出するための工事です。マンションや戸建て住宅、オフィスビル、病院など、水を使うあらゆる建物に必要とされる仕事のため、景気の波を受けにくく安定した需要があります。
未経験からでも挑戦しやすい一方、資格を取得すれば年収アップや独立も見込める仕事です。この記事では、給排水設備工事の仕事内容、年収相場、取得しておきたい資格、未経験からの転職方法、将来性までを、転職を考えている方向けにわかりやすく解説します。

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。
給排水設備工事とはどんな仕事?仕事内容と工事の流れ
給排水設備工事は、大きく「給水設備工事」と「排水設備工事」の2つに分かれます。どちらも建物の水回りを支える重要な工事です。

給水設備工事の仕事内容(キッチン・浴室・トイレへの給水管敷設)
給水設備工事は、水道本管から建物内のキッチン・浴室・トイレ・洗面台などに、きれいな水を届けるための配管工事です。給水管の敷設・接続・試験通水までを一貫して担当します。
新築工事では図面をもとに配管ルートを決め、既存の建物では老朽化した配管の交換や、増改築にあわせた配管の延長工事を行います。
排水設備工事の仕事内容(汚水・雑排水を下水道へ流す配管)
排水設備工事は、トイレの汚水やキッチン・浴室からの雑排水を、公共下水道や浄化槽まで安全に流すための配管工事です。勾配管理を誤ると水漏れや逆流の原因になるため、施工精度が求められます。
マンホールや排水桝の設置、既存配管の高圧洗浄・更生工事なども排水設備工事の範囲に含まれます。
新築工事と改修・修繕工事の違い
新築工事は、建物の骨組みができる段階から配管を仕込んでいくため、図面通りに正確に施工する力が求められます。一方、改修・修繕工事は、既存の壁や床を壊さずに配管を通す工夫が必要になり、現場ごとの応用力が問われます。
戸建てからタワーマンション、商業施設まで現場の規模はさまざまで、経験を積むほど任される現場の幅が広がっていくのがこの仕事の特徴です。
一日の仕事の流れ(現場の実際)
多くの現場では朝礼から始まり、その日の作業内容や安全確認を共有します。午前は配管の加工・接続作業、午後は試験通水や仕上げ作業を行うのが一般的な流れです。
1人で黙々と作業する時間もあれば、電気工事や内装工事の職人と連携する場面も多く、コミュニケーション力も少しずつ身についていきます。
使用する工具はパイプカッターや溶接機、水圧試験器具などが中心です。ヘルメットや安全帯といった保護具の着用も徹底されており、未経験者はまず工具の名前と使い方を覚えるところから仕事を始めます。

給排水設備工事の年収はいくら?経験・資格・企業規模別に解説
給排水設備工事の年収は、経験年数・保有資格・企業規模によって差が出ます。まずは目安となる数字から見ていきましょう。

未経験・経験年数別の年収相場
未経験からのスタートでは、年収300万円台からのケースが多く見られます。実務経験を3〜5年ほど積むと400万円台後半〜500万円台に上がり、配管工事全体の平均年収はおよそ480万〜520万円程度という調査結果もあります。
| 経験年数 | 年収目安(万円) |
|---|---|
| 未経験〜1年 | 300〜380 |
| 3〜5年 | 420〜500 |
| 10年以上 | 550〜700 |
| 主任技術者クラス | 600〜800 |
基本給に加えて、資格手当や残業代、賞与が上乗せされるケースも多く、資格手当だけで月1万〜3万円程度を支給する会社も見られます。求人票を見る際は、基本給だけでなく各種手当の内訳まで確認しておくと、実際の手取りイメージがつかみやすくなります。
企業規模別(大企業・中小企業)の年収差
設備工事会社の規模によっても年収水準は変わります。大手ゼネコン系の設備工事会社やハウスメーカーの協力会社は待遇が安定しており、賞与や資格手当が手厚い傾向があります。
中小の工事店は現場に近い分、経験を積みやすく、独立を見据えるなら実務の幅を広げやすいというメリットがあります。会社選びでは年収だけでなく、資格取得支援や現場の種類も比較するのがおすすめです。
地域による年収の違い(都市部と地方)
都市部は再開発やマンション建設の需要が多く、求人数・年収水準ともに高めです。地方では案件数は少なめですが、生活コストが低く、地域に根ざした安定した働き方がしやすい傾向があります。
自分のライフプランに合わせて、勤務エリアを含めて求人を比較することが大切です。
年収アップにつながる働き方
年収を上げる方法はシンプルで、資格を取得して任される仕事の範囲を広げることです。無資格の作業員から主任技術者、現場監督へとステップアップすることで、年収は着実に伸びていきます。
自分の職種の年収相場をより詳しく調べたい場合は、job tag(厚生労働省)の賃金・求人倍率検索ページで確認できます。
給排水設備工事に有利な資格4選【難易度・取得方法】
給排水設備工事は無資格でも働けますが、資格を取得すると任される仕事の範囲が広がり、年収アップにも直結します。ここでは代表的な4つの資格を紹介します。

①給水装置工事主任技術者
給水装置工事の計画から現場の指揮監督までを担う国家資格です。受験には給水装置工事に関する3年以上の実務経験が必要で、合格率は例年30〜40%台とされています。
試験の詳細は公益財団法人給水工事技術振興財団の公式サイトで確認できます。
②排水設備工事責任技術者
下水道の排水設備工事を設計・施工するために必要な資格で、都道府県や市区町村が実施する試験に合格し、責任技術者名簿に登録することで取得できます。有効期間は5年間で、更新講習の受講が必要です。
出典:東京都下水道局
③管工事施工管理技士(1級・2級)
給排水管を含む管工事全般の施工管理を担う国家資格です。1級を取得すると大規模工事の監理技術者になれるため、需要が高く年収アップにもつながりやすい資格です。合格率は例年25%前後で推移しています。
受験資格や試験日程は一般財団法人全国建設研修センターの公式サイトで確認できます。
④下水道管路更生管理技士
老朽化した下水道管を掘り返さずに補修する「管更生工法」の専門資格です。インフラの老朽化対応の需要が高まる中、管工事施工管理技士の知識を補強する形で取得する人が増えています。
| 資格 | 実務経験 | 特徴 |
|---|---|---|
| 給水装置工事主任技術者 | 3年以上 | 現場の指揮監督が可能に |
| 排水設備工事責任技術者 | 2年前後 | 指定工事店の登録要件 |
| 管工事施工管理技士 | 実務年数に応じる | 監理技術者になれる |
| 下水道管路更生管理技士 | 実務経験推奨 | 管更生工法の専門資格 |
資格取得の勉強法とスケジュールの立て方
まずは実務経験の年数を確認し、受験資格を満たす資格から逆算してスケジュールを立てるのがおすすめです。働きながらでも、半年〜1年の学習期間を見込めば十分合格を狙えます。
過去問演習を中心に、休憩時間や通勤時間を使ったスキマ学習を積み重ねることが合格への近道です。

未経験から給排水設備工事に転職する方法とキャリアパス
給排水設備工事は、体力や現場でのコミュニケーション力を重視する求人が多く、未経験からでも十分に転職を目指せる仕事です。

未経験者を歓迎する求人の特徴
「見習い」「アシスタント」といった名称で募集し、先輩職人が現場で指導しながら育てる求人が多く見られます。入社後に資格取得を支援する制度がある会社を選ぶと、着実にキャリアを積みやすくなります。
転職に有利な前職・経験
電気工事や内装工事など他の建設職種での経験、工場での製造・組立経験は、工具の扱いや現場のルールに慣れている点で評価されやすい傾向があります。もちろん、まったくの異業種からの転職者も多く活躍しています。
入社後のキャリアパス(見習い→職人→主任技術者→独立)
入社後はまず先輩について現場作業を覚え、経験を積みながら給水装置工事主任技術者などの資格を取得します。その後は現場の主任や施工管理へとステップアップし、将来的には独立して事業を持つ道も見えてきます。
1つの現場に長く関わることは少なく、次々と異なる建物の工事を経験できるため、スキルの幅が自然と広がっていくのも魅力です。
転職活動で押さえておきたいポイント
求人を比較する際は、給与だけでなく「資格取得支援の有無」「担当する工事の種類(新築中心か改修中心か)」「休日日数」を確認しましょう。面接では、体力に自信があることや、地道な作業をコツコツ続けられる姿勢を伝えると好印象につながります。
給排水設備工事の将来性は?需要が高まる3つの理由
給排水設備工事は、これからも安定した需要が見込める仕事です。その背景には主に3つの理由があります。

理由1:インフラ老朽化による更新需要の増加
高度経済成長期に敷設された水道管・下水道管が、耐用年数を迎えつつあります。老朽化した配管の更新工事は今後さらに増えていく見込みで、給排水設備工事の技術者は長期的に必要とされ続けます。
出典:東京新聞
理由2:人手不足による売り手市場化
上下水道の維持管理を担う技術職員は年々減少しており、現場では若手人材の確保が急務となっています。未経験者でも育成前提で採用する会社が増えているのは、この人手不足が背景にあります。
理由3:災害対策・耐震化工事の増加
地震や豪雨などの災害に備え、ライフラインである水道・下水道設備の耐震化工事も各地で進められています。防災の観点からも、給排水設備工事の重要性は今後さらに高まっていくでしょう。
DX化・新技術の導入で変わる働き方
管更生工法など、配管を掘り返さずに補修できる新しい工法の普及により、体力面での負担が軽減されつつあります。図面のデジタル化や施工管理アプリの活用も進んでおり、働き方は少しずつ効率化されています。
独立・フリーランスという選択肢
排水設備工事責任技術者などの資格を取得し、指定工事店としての登録要件を満たせば、将来的に独立して事業を持つことも可能です。会社員として経験と人脈を積んでから独立するケースが一般的で、キャリアの選択肢の広さもこの仕事の魅力の一つです。

給排水設備工事に関するよくある質問
Q. 給排水設備工事は未経験でも転職できますか?
未経験からの転職は十分に可能です。多くの会社が見習いから育成する体制を整えており、資格取得支援制度がある求人を選べば、働きながら着実にスキルと資格を身につけられます。
Q. 給排水設備工事に必要な資格はありますか?
作業自体は無資格でも行えますが、給水装置工事主任技術者や管工事施工管理技士などの資格を取得すると、担当できる仕事の幅が広がり年収アップにもつながります。まずは実務経験を積みながら受験資格を満たすことが第一歩です。
Q. 給排水設備工事の平均年収はどれくらいですか?
経験年数や資格の有無によって差がありますが、未経験では300万円台、経験を積むと500万円前後、資格を取得して主任技術者クラスになると600万〜800万円程度まで見込めます。
Q. 給排水設備工事はきつい仕事ですか?
屋外・屋内での立ち作業や配管の運搬など体力を使う場面はありますが、チームで分担しながら進めるため、極端に過酷というわけではありません。管更生工法など体力負担の少ない工法も普及してきています。
Q. 女性でも活躍できますか?
現場によっては女性技術者も活躍しており、細やかな仕上がりが求められる住宅の水回り工事などで力を発揮しているケースがあります。会社によって受け入れ体制は異なるため、求人票や面接で職場環境を確認しておくと安心です。
まとめ:給排水設備工事は未経験からでも長く活躍できる仕事
給排水設備工事は、生活に欠かせない水回りを支える仕事として、これからも安定した需要が見込まれます。未経験からでも挑戦しやすく、資格取得によって年収アップやキャリアアップを重ねられる点が大きな魅力です。
インフラの老朽化対応や人手不足を背景に、業界全体で若手の育成に力を入れている今こそ、転職を検討する好機といえます。自分に合った会社を見つけ、着実にキャリアを積んでいきましょう。
技術士・施工管理技士・建築士などの資格を活かした転職やキャリアアップをお考えなら、
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