「設備設計」は、建物の空調・電気・給排水などの設備を計画・設計する専門職です。専門性が高い仕事ですが、実は未経験からの転職者を積極的に採用する企業も増えています。
本記事では、未経験から設備設計への転職を考えている方に向けて、仕事内容や必要な資格、年収相場、転職を成功させるための具体的なステップまで詳しく解説します。

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。
設備設計とは?未経験でも転職できる理由と仕事内容
設備設計は、建物の「使い勝手」を支える裏方の専門職です。まずは仕事内容の全体像と、未経験者の採用が進んでいる背景を見ていきましょう。

設備設計の仕事内容(電気・空調・給排水設備の設計)
設備設計の仕事は、建物内の空調設備・電気設備・給排水衛生設備・エレベーターなどを計画し、図面に落とし込むことです。
意匠設計者や施主と打ち合わせを重ねながら、快適性・省エネ性・コストのバランスを取った設計案を作成します。図面作成にはCADソフトを使用するのが一般的で、最近ではBIM(3次元モデル)を活用する現場も増えています。
設計対象はオフィスビルや商業施設、マンションから、工場・病院・学校まで多岐にわたります。建物の用途によって求められる設備の仕様が大きく異なるため、幅広い知識を少しずつ身につけていく必要があります。
建築設計・意匠設計との違い
建築設計(意匠設計)が建物の外観やデザイン、空間構成を担うのに対し、設備設計は建物を「機能させる」ための裏側の仕組みを担当します。
両者は密接に連携しながら1つの建物を完成させるため、設備設計者にも建築全体への理解や、意匠設計側の意図をくみ取る力が求められます。
未経験者の採用が増えている背景
設備設計の業界では、技術者の高齢化と人手不足が進んでおり、若手を採用してから育成する企業が増えています。
特に施工管理や電気工事、設備工事などの現場経験がある方は、未経験でも即戦力候補として歓迎される傾向にあります。建築設備士などの資格取得を支援する企業も多く、入社後にキャリアを築ける環境が整いつつあります。
未経験者に求められる適性・スキル
未経験からのスタートでは、専門知識よりも「学ぶ意欲」と「コミュニケーション能力」が重視される傾向があります。
意匠設計者や施工担当者と円滑に調整を進める力、図面や数字を扱うことへの抵抗のなさも重要なポイントです。地道な作業をコツコツ続けられる几帳面さも、設備設計に向いている資質のひとつといえます。
設計から竣工までの一連の流れ
設備設計の業務は、基本設計・実施設計・工事監理という段階を経て進みます。基本設計では施主の要望をヒアリングして大枠の方針を決め、実施設計で詳細な図面に落とし込みます。
工事が始まった後も、設計通りに施工されているかを確認する工事監理の役割を担うことがあり、竣工まで一貫して建物に関わり続けられる点が設備設計の醍醐味です。

設備設計への転職に有利な資格とスキル
設備設計への転職では、資格が必須というわけではありませんが、取得しておくと選考や実務で有利に働きます。ここでは代表的な資格を紹介します。

建築設備士|未経験から目指せる登竜門資格
建築設備士は、建築設備に関する専門知識を証明する国家資格です。実務経験のルート次第では未経験の段階から準備を始められ、多くの未経験者が最初に目指す資格として人気があります。
試験の詳細は公益財団法人建築技術教育普及センターの公式サイトで確認できます。制度の解説は一般社団法人建築設備技術者協会のページも参考になります。
一級・二級建築士|キャリアアップに直結
建築士資格を取得すると、設計業務全体への理解が深まり、将来的な年収アップやキャリアの幅が大きく広がります。
二級建築士は実務経験を積みながら受験を目指せるため、未経験からのステップアップとしても取り組みやすい資格です。
設備設計一級建築士|実務経験後に目指す上位資格
設備設計一級建築士は、一級建築士として5年以上の設備設計実務経験を積んだ後に、講習・修了考査を経て取得を目指す上位資格です。
未経験から一足飛びに取得できる資格ではありませんが、着実に経験を積めば数年後の現実的な目標になります。
出典:国土交通省
CAD・BIMスキルは入社後の習得でも可
CADやBIMの操作スキルは、多くの企業が入社後の研修でカバーしています。未経験の場合は、パソコン操作への抵抗がないことや、図面を読む基礎知識があれば十分にスタートラインに立てます。
『建築設備士 学科試験 問題解説』(Amazon)のような教材で、先に基礎用語に触れておくと安心して転職活動に臨めます。
資格取得までの学習期間の目安
建築設備士の学科試験対策には、半年〜1年程度の学習期間を見込んでおくと無理がありません。働きながら学ぶ場合は、通信講座やスクールを活用すると学習ペースを保ちやすくなります。
二級建築士は実務経験の要件を満たしながら数年かけて準備するのが一般的で、入社後のキャリアプランに組み込んで計画的に取り組む方が多い資格です。
設備設計の年収相場とキャリアパス
未経験からのスタート時は年収が抑えられる傾向がありますが、経験と資格を積み重ねることで着実にアップが期待できます。

未経験〜3年目の年収目安
未経験〜3年目の年収は350万円〜450万円程度が目安です。厚生労働省の職業情報提供サイトによると、設備設計を含む建築設計技術者全体の平均年収は679.1万円となっています。
中堅・ベテランになった場合の年収推移
経験を積んだ30〜40代では500万円〜700万円程度、50代以降のベテラン層では700万円〜900万円以上を目指せるケースもあります。資格取得やマネジメント経験が年収アップの大きな要因です。
| 経験年数 | 年収目安 |
|---|---|
| 未経験〜3年 | 350〜450万円 |
| 30〜40代 | 500〜700万円 |
| 50代以降 | 700〜900万円 |
独立・フリーランスという選択肢
経験と実績を積んだ後は、独立して個人で設計業務を請け負う道もあります。設備設計一級建築士などの上位資格を取得すれば、独立後の案件獲得にも有利に働きます。
施工管理・電気工事士からのキャリアチェンジ事例
現場での施工管理や電気工事の経験がある方が、設計側にキャリアチェンジするケースも増えています。現場を知っているからこそ、実現性の高い設計提案ができる点が強みになります。
資格手当・待遇面の違い
建築設備士や一級建築士などの資格を取得すると、月数千円〜数万円程度の資格手当を支給する企業が多くあります。資格手当の有無や金額は企業によって差があるため、求人票や面接で事前に確認しておくと安心です。

未経験から設備設計に転職する際に知っておきたい注意点
良い面だけでなく、事前に知っておきたい注意点も正直にお伝えします。

「やめとけ」と言われる理由と実態
設備設計は「やめとけ」と言われることもある職種です。主な理由は、意匠設計や施工側との調整業務が多く、スケジュールの遅れがしわ寄せとして設備設計側に来やすいことにあります。
また、法規制や技術基準を正確に理解したうえで設計する必要があり、専門知識の習得に時間がかかる点も、負担に感じる人がいる理由のひとつです。
とはいえ、企業によって業務量や体制は大きく異なるため、一概に「きつい仕事」と決めつける必要はありません。
労働時間・繁忙期の実情
設計の最終段階や竣工前は繁忙期になりやすく、残業が増える傾向があります。一方で、働き方改革が進む企業では、繁忙期以外は比較的安定した勤務時間で働けるケースも増えています。
未経験者向け研修制度の有無を見極める
未経験から転職する場合、研修制度やOJT体制が整っているかどうかは、転職先選びで最も重視すべきポイントです。
先輩社員によるフォロー体制があるかどうかを、面接時に必ず確認しましょう。
求人選びで確認すべきポイント
求人票だけでは分からない残業時間や離職率などの情報は、口コミサイトや転職エージェントを通じて確認するのがおすすめです。資格取得支援制度の有無もあわせてチェックしておくと安心です。
上流工程・下流工程で働き方が変わる
設計事務所やゼネコンの設計部門など、上流工程を担う企業は比較的裁量が大きい一方、下流工程の実施設計や施工図作成をメインに担う企業では、納期に追われる働き方になりやすい傾向があります。
どちらが良い・悪いではなく、自分がどのフェーズの仕事に魅力を感じるかを考えたうえで、企業選びをすることが大切です。

未経験から設備設計へ転職する具体的なステップ
ここからは、実際に転職活動を進める際の具体的なステップを紹介します。

自己分析・志望動機の整理
まずは、なぜ設備設計を目指すのか、これまでの経験のどこが活かせるのかを整理しましょう。施工管理や電気工事の経験がある方は、現場目線を武器にできます。
資格取得の計画を立てる
すべての資格を一度に取得する必要はありません。まずは建築設備士や二級建築士など、比較的取り組みやすい資格から計画を立てるのがおすすめです。
転職エージェントを活用した求人選び
建設・設備業界に特化した転職エージェントを活用すると、未経験者歓迎の求人や、研修制度が整った企業の情報を効率的に集められます。非公開求人を紹介してもらえる点も大きなメリットです。
面接で評価されるアピールポイント
面接では、専門知識よりも「学ぶ意欲」「調整力」「これまでの経験をどう活かすか」を具体的に伝えることが評価につながります。
これまでの職務で経験した調整業務やトラブル対応のエピソードを具体的に語れると、設備設計に必要な素養があることを効果的にアピールできます。
よくある質問(Q&A)
Q. 設備設計は文系出身でも未経験から目指せますか?
目指せます。理系出身者が多い職種ですが、文系出身でも数字や図面への抵抗がなく、学ぶ意欲があれば採用されるケースは十分にあります。入社後の研修でCADの基礎から学べる企業も多くあります。
Q. 未経験の場合、最初に何から準備すればいいですか?
まずは建築設備士の受験資格や試験内容を確認し、業界の基礎知識を身につけることから始めるのがおすすめです。あわせて、建設・設備業界に強い転職エージェントに相談し、自分に合った求人を探しましょう。
Q. 資格がなくても転職できますか?
資格がなくても転職は可能です。特に施工管理や電気工事などの現場経験がある方は、資格よりも実務での知見が評価されるケースが多くあります。入社後に資格取得を目指す形でも問題ありません。
Q. 何歳まで未経験からの転職が可能ですか?
明確な年齢上限はありませんが、20代〜30代前半までが特にポテンシャル採用の対象になりやすい傾向があります。30代後半以降は、これまでの実務経験をどう設備設計に活かせるかがより重視されます。
Q. 転職後、最初はどんな業務から任されますか?
入社直後は、先輩設計者の図面チェックや簡単な図面修正、資料作成の補助など、比較的難易度の低い業務から任されるケースが一般的です。実務を通じて少しずつ担当範囲を広げていきます。
まとめ
設備設計は専門性の高い仕事ですが、人手不足を背景に未経験者の採用も増えています。建築設備士などの資格取得を計画しながら、研修制度の整った企業を選ぶことが転職成功のポイントです。
年収は未経験時こそ抑えめですが、資格取得や経験の積み重ねによって着実にアップが期待できる仕事でもあります。
まずは自分の経験の棚卸しから始め、転職エージェントも活用しながら、無理のないステップで転職活動を進めていきましょう。
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