結論からお伝えすると、高卒でも一級建築士を目指すことは可能です。ただし、高卒の学歴だけでは一級建築士試験をいきなり受験することはできません。
工業高校の建築系学科を卒業したか、普通科を卒業したかによって、一級建築士にたどり着くまでのルートや必要な実務経験の年数が変わります。
この記事では、高卒から一級建築士になるための具体的なステップ、かかる期間の目安、取得後の年収やキャリアについて、転職エージェントの視点からわかりやすく解説します。

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。
高卒から一級建築士を目指せる理由と現実

「高卒だから資格は無理」と思われがちですが、建築士法の仕組みを正しく理解すれば、着実にステップアップできます。まずは高卒という学歴の位置づけを整理しましょう。
高卒だけではいきなり一級建築士試験を受験できない
一級建築士試験の受験資格は、建築士法にもとづき学歴や資格によって定められています。大学・短大・高等専門学校の建築系学科を卒業した人は、一定の実務経験を積むことで受験資格を得られます。
一方、高等学校卒業のみの場合は、この学歴要件に直接該当しません。そのため、まずは二級建築士の資格を取得するのが現実的な入り口になります。
工業高校の建築系学科卒なら二級建築士に近道できる
国土交通大臣が指定する建築系の科目を修めて高校を卒業した人は、実務経験なしで二級建築士試験を受験できます。工業高校の建築科・建築デザイン科などが該当します。
出典:建築技術教育普及センター
普通科卒の場合は実務経験ルートで受験資格を目指す
普通科など建築系の指定科目を修めていない高校を卒業した場合は、建築関係の実務経験を積むことで二級建築士試験の受験資格を得られるルートが用意されています。
必要な実務経験年数は受験年度の建築士法の運用によって変わるため、挑戦する前に必ず建築技術教育普及センターの最新情報で確認しておきましょう。
令和2年の建築士法改正で実務経験の扱いが変わった
令和2年3月1日の建築士法改正により、実務経験は「試験を受けるための要件」から「免許を登録するための要件」に変わりました。つまり、実務経験がなくても先に試験に挑戦できるようになったのです。
出典:日本建築士会連合会

高卒から一級建築士になるまでの3ステップ

高卒から一級建築士にたどり着くまでの道のりは、大きく3つのステップに分けられます。全体像を先に押さえておくと、途中で迷わずに進めます。
ステップ1: 二級建築士の受験資格を得る
工業高校の建築系学科卒であればすぐに受験資格を得られます。普通科卒の場合は、建築関係の実務経験を積みながら受験資格を得るルートを選びます。
設計事務所やハウスメーカー、工務店などへの転職を通じて、実務経験を積み始めるのが一般的な入り口です。
ステップ2: 二級建築士試験に合格し実務経験を積む
二級建築士試験に合格したら、次は一級建築士の免許登録に必要な実務経験4年以上を積む段階に入ります。設計・工事監理・施工管理などの実務が対象です。
二級建築士として現場で経験を積みながら、並行して一級建築士試験の勉強を進める人が多いです。
ステップ3: 一級建築士試験に合格し免許登録する
実務経験の要件を満たした状態で一級建築士試験に合格すれば、免許登録の申請が可能になります。学科試験と設計製図試験の両方に合格する必要があります。
登録が完了すれば、晴れて一級建築士として名乗ることができます。
工業高校卒と普通科卒でルートの違いを比較
同じ高卒でも、卒業した学科によって最初の一歩が変わります。以下の表で違いを整理しました。
| 卒業学科 | 二級受験 | 最初の一歩 |
|---|---|---|
| 建築系学科 | 実務経験0年 | すぐ受験可 |
| 普通科 | 実務経験ルート | 建設業へ転職 |
高卒から一級建築士を目指すまでにかかる期間の目安

「何年かかるのか」は多くの人が気になるポイントです。学歴・資格ごとに一級建築士の免許登録に必要な実務経験年数をまとめました。
| 区分 | 実務経験 | 二級経由 |
|---|---|---|
| 大学(60単位以上) | 2年以上 | 不要 |
| 3年制短大 | 3年以上 | 不要 |
| 2年制短大・高専 | 4年以上 | 不要 |
| 二級建築士保有 | 4年以上 | 必要 |
出典:日本建築士会連合会
工業高校(建築学科)卒の場合の年数モデル
工業高校の建築学科を卒業していれば、すぐに二級建築士試験に挑戦できます。合格後に4年ほど実務経験を積めば、一級建築士の免許登録要件を満たせます。
順調に進めば、高校卒業から10年前後で一級建築士になれる計算です。二級建築士としてのキャリアも並行して積めるのが強みです。
普通科卒の場合の年数モデル
普通科卒の場合は、まず建設業界に転職して実務経験を積みながら二級建築士の受験資格を得る必要があります。工業高校卒に比べて数年遠回りになるのが実情です。
それでも、実務経験を積みながら通信講座で学科を学べば、着実に前進できます。焦らず一歩ずつ進めることが大切です。
実務経験として認められる仕事内容に注意
実務経験としてカウントされるのは、設計・工事監理・施工管理など建築士法で定められた業務のみです。単なる庶務・会計や、労務者としての作業は対象外とされています。
出典:建築技術教育普及センター「建築士資格に係る実務経験の対象実務の例示表」
働きながら学べる通信講座・夜間学校の活用
実務経験を積みながら学科試験の対策をするなら、通信講座や夜間の専門学校の活用がおすすめです。仕事と両立しやすいカリキュラムが組まれています。
独学だけでは法改正などの最新情報を見落としがちなので、資格予備校の情報も併用すると安心です。

一級建築士取得で広がるキャリアと年収

高卒から時間をかけて資格を取得する価値は、年収とキャリアの広がりに表れます。実際の相場を確認しておきましょう。
一級建築士の平均年収・給与レンジ
厚生労働省の統計によると、一級建築士の平均年収はおよそ700万円前後で、企業規模が大きいほど年収も高くなる傾向があります。
| 企業規模 | 平均年収 |
|---|---|
| 1,000人以上 | 800万円超 |
| 100〜999人 | 617万円 |
| 10〜99人 | 568万円 |
高卒出身の一級建築士が評価される理由
現場からたたき上げで資格を取った一級建築士は、施工の実態を理解した設計ができる点が強みです。設計と現場をつなぐ役割として重宝されます。
学歴よりも、実務経験を通じて培った現場感覚や調整力が評価されやすい業界だといえます。
独立・管理職など取得後のキャリアパス
一級建築士を取得すると、設計事務所の管理職や、独立して自分の事務所を構える道も開けます。扱える建築物の規模や用途の制限がなくなるためです。
ゼネコンや組織設計事務所でのプロジェクトリーダーとしてのキャリアも見えてきます。
未経験・高卒からの転職でも武器になる資格
一級建築士は取得までに時間がかかる分、他の応募者との差別化になりやすい資格です。未経験からの転職でも、取得を目指す意欲そのものが評価されることがあります。
まずは実務経験を積める企業に転職し、資格取得を支援してくれる職場を選ぶのが近道です。
高卒から一級建築士を目指す人がつまずきやすいポイント

長期戦になるからこそ、事前につまずきやすいポイントを知っておくと安心です。よくある悩みと対策を紹介します。
二級建築士試験の勉強と実務の両立が大変
仕事をしながらの勉強は、想像以上に時間の確保が難しいものです。通勤時間や休憩時間を活用するなど、隙間時間の使い方を工夫している人が多いです。
勤務先によっては、資格取得支援制度や時短勤務を利用できる場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
実務経験の証明書類の準備で困りやすい
免許登録の際は、実務経歴書や実務経歴証明書の提出が必要です。転職を重ねていると、以前の勤務先に証明を依頼する手間が発生することがあります。
在籍中からどの業務がどの実務経験の区分に該当するかを記録しておくと、後々スムーズです。
モチベーションを保つための工夫
資格取得までの道のりが長いため、途中でモチベーションが下がってしまう人も少なくありません。小さな達成目標を設定しながら進めるのがおすすめです。
同じ目標を持つ仲間や、資格取得を応援してくれる職場環境を選ぶことも、継続の後押しになります。
よくある質問
Q. 高卒でも一級建築士に本当になれますか?
なれます。ただし高卒の学歴のみで一級建築士試験を直接受験することはできません。まず二級建築士の資格を取得し、実務経験を積んでから一級建築士を目指すのが基本ルートです。
Q. 普通科卒でも建築士になれますか?
可能です。建築関係の実務経験を積むことで二級建築士の受験資格を得られるルートがあります。工業高校の建築系学科卒に比べると、実務経験を積む期間が長くなる傾向があります。
Q. 高卒から一級建築士になるまで何年くらいかかりますか?
工業高校の建築学科卒であれば、二級建築士合格後の実務経験4年程度を含めて10年前後が一つの目安です。普通科卒の場合は、実務経験を積む期間が加わる分さらに時間がかかります。
Q. 実務経験はどんな仕事でも認められますか?
認められません。設計・工事監理・施工管理など建築士法で定められた業務のみが対象です。単なる庶務や労務作業は実務経験としてカウントされないため注意が必要です。
まとめ
高卒からでも、二級建築士を経由すれば一級建築士を目指すことは十分に可能です。大切なのは、実務経験を積める環境に身を置き、資格取得までの道のりを逆算して計画することです。
一人で悩まず、建設業界に詳しい転職エージェントに相談しながら、自分に合ったキャリアの積み方を見つけていきましょう。
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著者:ジョブハウス建設 編集部
建設・建築・インフラ業界に特化した転職支援プラットフォーム「ジョブハウス建設」編集部です。技術士、建設コンサルタント、施工管理など、建設分野の幅広い専門職・技術職に関する情報を、現場の知見と最新データをもとに正確かつわかりやすく発信しています。
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