結論から言うと、一級建築士は建築業界未経験からでも目指せる資格です。学歴や実務経験を積むルートさえ押さえれば、社会人からのスタートでも十分に合格・免許登録が可能です。

ただし、二級建築士を経由するか、必要な実務経験を積むかなど、選ぶルートによって最短年数が変わります。この記事では、未経験から一級建築士を目指す際の現実的な難易度、2つの取得ルート、勉強時間・費用の目安、そして資格取得後を見据えた転職先の選び方まで、順を追って解説します。

特に、施工管理や現場作業など関連職種で経験を積んできたものの、資格は未保有という20代・30代の方に向けて、実務と学習を両立しながらキャリアアップする方法を中心にまとめました。

この記事のPOINT

監修:ジョブハウス建設 鈴木実(すずき・みのる)。技術士紹介歴35年、紹介実績1,200名を誇る建設コンサルタント業界の転職のプロ。

技術士・RCCMの転職支援|支援実績30年・転職成功1200名以上|無料登録はこちら

一級建築士は未経験からでも目指せる?結論と現実的な難易度

未経験から一級建築士を目指せる理由

建築系の学校を出ていない、現場経験がまったくないという方でも、一級建築士を目指すことは可能です。実際に競合記事の多くも「未経験からの合格実績がある」と伝えています。

未経験者でも一級建築士を目指せる理由

一級建築士試験には、学歴要件を満たすルートと実務経験を積むルートの2種類があります。どちらのルートも建築業界未経験からのスタートを想定して設計されているため、まったくの未経験でも道筋を描けます。

未経験からのスタートで重要なのは「どのルートで受験資格を得るか」を早い段階で決めることです。ルート選びを誤ると、遠回りになるケースがあります。

特に建築業界は人手不足が続いており、未経験者を積極的に採用してから資格取得を後押しする企業も増えています。「まず就職してから資格を取る」という順番が現実的な選択肢になっている点も、未経験者にとって追い風です。

令和2年(2020年)の建築士法改正で何が変わったか

2020年3月1日施行の建築士法改正により、これまで受験資格の要件だった実務経験は、免許登録の際の要件に変更されました。つまり、実務経験を積む前でも試験の受験自体は可能になっています。

出典:国土交通省

この改正により、未経験から建築業界に飛び込んだ人でも、実務経験を積みながら早期に受験勉強を進められるようになりました。

未経験からの合格率・難易度の実態

一級建築士試験は、学科試験と設計製図試験の2段階選抜です。近年の学科試験の合格率はおよそ16〜23%、設計製図試験の合格率はおよそ26〜35%で推移しており、両方を突破した総合合格率は10%台前半となっています。

出典:建築技術教育普及センター

未経験だからといって合格率が特別低くなるわけではなく、学習計画と実務経験の積み方次第で十分に合格を狙える試験です。

未経験者が知っておくべき3つの心構え

未経験から一級建築士を目指すうえで押さえておきたい心構えは、次の3つです。

  • 学科・製図あわせて700〜1,500時間規模の学習が必要になると理解しておく
  • 実務経験を積む勤務先選びが合格後のキャリアにも直結する
  • 短期合格よりも、働きながら着実に積み上げる姿勢が結果的に近道になる

いずれも一朝一夕には身につきませんが、就職前の段階からこの3点を意識しておくだけで、入社後の学習ペースづくりがぐっとスムーズになります。

鈴木実のコメント

一級建築士になるための2つのルート(学歴ルート・実務経験ルート)

学歴ルートと実務経験ルートの違い

未経験から一級建築士を目指す方法は、大きく分けて「学歴ルート」と「実務経験ルート」の2つです。それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合ったルートを選びましょう。

学歴ルート:大学・短大・専門学校で指定科目を履修する

建築系の大学・短大・高専・専門学校で指定科目を履修して卒業すると、一級建築士(または二級建築士)の受験資格を得られます。すでに社会人になっている場合は、夜間部や通信制の建築系専門学校を活用する人も少なくありません。

学歴ルートは受験資格の取得までが比較的明確で、カリキュラムに沿って学べる点がメリットです。

実務経験ルート:実務経験を積んで受験資格を得る

建築系の学歴がない場合でも、建設会社や設計事務所で実務経験を積むことで受験資格を得られるルートがあります。未経験からでも採用されやすい職種に就き、そこから実務経験を積み上げていく形です。

先述のとおり2020年の法改正以降は、実務経験を免許登録までに積めばよいケースもあるため、先に受験勉強を始めながら実務経験を並行して積むという進め方も可能になっています。

二級建築士を経由するルートとの違い

未経験から一級建築士を目指す場合、まず二級建築士に合格し、その後一級建築士の受験資格を得るという段階的なルートを選ぶ人も多くいます。二級建築士は一級建築士に比べて出題範囲が絞られているため、基礎固めをしながら実務経験も積める点がメリットです。

一方で、学歴要件を満たしている場合は、二級建築士を経由せず直接一級建築士の受験資格を得られるケースもあります。

二級建築士は木造住宅や中小規模の建築物を中心に設計できる資格のため、実務でも早い段階から設計業務に携わりやすいというメリットがあります。段階を踏むことで、実務経験と資格の両方を無理なく積み上げられます。

最短で一級建築士を目指すならどちらが有利か

すでに建築系の学歴がある方は学歴ルートが最短になりやすく、まったくの未経験・異業種出身の方は「二級建築士を経由する実務経験ルート」が現実的な選択肢になりやすい傾向があります。

正確な受験資格の年数要件は個々の学歴・実務内容によって細かく異なるため、最終的な判断は建築技術教育普及センターの公式サイトで必ず確認することをおすすめします。

迷った場合は、まず現在の学歴・実務経験を整理したうえで転職エージェントに相談すると、どちらのルートが自分にとって現実的かを客観的に判断しやすくなります。

未経験から一級建築士を目指すまでのステップとスケジュール

未経験から受験資格を得るまでのステップ

ここでは、未経験から一級建築士を目指す場合の一般的な進み方を、4つのステップに分けて紹介します。異業種から転職した場合でも、基本的な流れは変わりません。

ステップ1:建築系の仕事に就職する(未経験可の職種)

意匠設計のアシスタント、CADオペレーター、施工管理のアシスタントなど、未経験者を採用している建築系の職種は多くあります。まずはこうしたポジションで実務に触れることが第一歩です。

就職先を選ぶ際は、資格取得支援制度の有無を確認しておくと、その後の学習がスムーズに進みます。

ステップ2:実務経験を積みながら学科試験の勉強をする

実務をこなしながら、法規・構造・施工・計画・環境設備の5科目からなる学科試験の対策を進めます。働きながらの学習になるため、通勤時間やすき間時間を活用した学習計画が欠かせません。

ステップ3:学科試験・設計製図試験に合格する

学科試験に合格すると、設計製図試験に進めます。設計製図試験は課題文に沿って実際に図面を作成する実技試験で、実務経験で培った感覚が活きる場面も多くあります。

免許登録までにかかる年数の目安

未経験から免許登録までは、ルートや学習ペースによって差はあるものの、実務経験を並行して積む場合はおおむね数年単位の計画になるのが一般的です。焦らず、実務経験と学習の両輪で進めることが結果的に近道になります。

あくまで一例ですが、未経験から建築系企業に就職した場合の進み方をイメージすると、次のようになります。

  • 1年目:実務に慣れながら、学科試験の基礎科目(法規・構造)の学習を開始
  • 2〜3年目:実務経験を積みつつ、学科5科目の対策を本格化
  • 3〜4年目:学科試験に合格し、設計製図試験の対策に着手
  • 4年目以降:設計製図試験に合格し、免許登録に必要な実務経験を確認・申請

スケジュールには個人差がありますが、このように段階を分けて考えると、未経験からでも着実に近づけるイメージが持てるはずです。

鈴木実のコメント

未経験者が一級建築士を目指すためにかかる勉強時間・費用

一級建築士の勉強時間・費用の目安

未経験からの学習では「どれくらいの時間とお金がかかるのか」を事前に把握しておくことが大切です。

学科試験・設計製図試験それぞれの勉強時間の目安

一級建築士試験の学習時間は、学科・製図をあわせて700〜1,500時間程度が目安とされています。建築系の学歴・実務経験がある人ほど短く、未経験からのスタートではやや長めに見積もっておくと安心です。

試験区分 学習時間目安 合格率
学科試験 500〜1,000時間 16〜23%
設計製図試験 200〜500時間 26〜35%

出典:建築技術教育普及センターの直近の試験結果をもとに作成

独学と資格スクールの費用比較

独学の場合は問題集・テキスト代として数万円程度に収まりますが、学習範囲が広いため計画的な進行が難しいという声もあります。資格スクールを利用する場合は、コースによって数十万円規模の費用がかかるのが一般的です。

学習方法 費用目安 向く人
独学 数万円程度 自己管理が得意な人
通信講座 10万円台〜 時間を選ばず学びたい人
資格スクール(通学) 数十万円規模 製図対策を手厚くしたい人

※費用は講座内容・受講形態により変動するため、各スクールの公式サイトで最新情報をご確認ください。

学科対策の定番教材としては『1級建築士試験 学科 厳選問題集500+125』(Amazon)などがよく使われています。まずは独学用の問題集で学習の土台を作り、製図対策のタイミングでスクールを併用するという進め方も選択肢の一つです。

仕事と両立しながら勉強するコツ

働きながらの学習では、平日は通勤時間や昼休みを使った短時間学習、休日はまとまった時間で製図の演習にあてるなど、時間帯によって学習内容を使い分けるのがコツです。

実務で扱う図面や現場の知識がそのまま試験勉強に結びつくことも多く、未経験からでも実務と学習を結びつけながら進められます。

また、通信講座やオンライン講座を活用すれば、資格スクールに通う時間が取りにくい社会人でも、移動時間やすき間時間を学習に充てやすくなります。

資格取得支援制度がある企業の探し方

求人票の「資格取得支援」「受験費用補助」といった記載を確認するほか、面接時に資格スクールの費用補助や勉強時間の確保について具体的に質問しておくと、入社後のミスマッチを防げます。

鈴木実のコメント

未経験から一級建築士を目指せる転職先の選び方

未経験から一級建築士を目指せる転職先の選び方

未経験から一級建築士を目指すなら、就職・転職先選びが合格までのスピードを左右します。

未経験歓迎の求人が多い職種(意匠設計・CADオペレーターなど)

意匠設計アシスタント、CADオペレーター、施工管理アシスタントなどは、未経験者向けの求人が比較的多い職種です。まずはこうした職種で建築の実務に触れながら、実務経験を積み上げていく方が多くいます。

ゼネコンや設計事務所だけでなく、ハウスメーカーやリフォーム会社、不動産会社の企画部門など、建築士としての知識を活かせる仕事の幅は年々広がっています。未経験からのキャリアチェンジでは、こうした間口の広い求人から実務経験を積み始めるのも一つの方法です。

資格取得支援・研修制度をチェックするポイント

求人選びの際は、資格取得支援制度の有無に加えて、実際に資格取得者が出ている実績があるかもあわせて確認しましょう。制度があっても実際に活用されていないケースもあるため、面接での質問が有効です。

面接では「受験費用や講座費用の補助はありますか」「合格までに時間を確保しやすい働き方はできますか」といった具体的な質問をしておくと、入社後のギャップを防ぎやすくなります。

一級建築士取得後の年収・キャリアの広がり

一級建築士を取得すると、設計できる建築物の規模・用途の制限がなくなり、担当できる業務の幅が大きく広がります。資格手当が支給される企業も多く、未経験からのキャリアであっても、資格取得を機に年収アップやポジションアップにつながるケースが少なくありません。

未経験からの転職を成功させるための行動プラン

未経験から一級建築士を目指す転職を成功させるには、次の3つを意識しましょう。

  • 受験資格ルート(学歴・実務経験)を先に確認してから求人を探す
  • 資格取得支援制度の実績がある企業を優先する
  • 建築業界に強い転職エージェントを活用し、非公開求人も含めて比較検討する

よくある質問(Q&A)

Q. 建築系の学歴がなくても一級建築士になれますか?

なれます。建築系の学歴がない場合は、実務経験を積むルートで受験資格を得ることが可能です。まずは未経験者を採用している建築系の職種に就くところから始めましょう。

Q. 未経験から一級建築士を目指す場合、まず何をすればよいですか?

最初のステップは、未経験者を採用している建築系の企業に就職することです。そのうえで、実務経験を積みながら学科試験の学習を並行して進めるのが一般的な流れです。

Q. 一級建築士の勉強時間はどれくらい必要ですか?

学科・設計製図をあわせて700〜1,500時間程度が目安とされています。学歴・実務経験の有無によって個人差があるため、余裕を持った学習計画を立てることをおすすめします。

Q. 未経験からでも転職で有利になる資格ですか?

有利になります。一級建築士は設計できる建築物の制限がなくなる国家資格であり、資格手当や担当業務の幅の広がりにつながるため、未経験からのキャリアであっても評価されやすい資格です。

Q. 二級建築士を取らずに一級建築士だけを目指すことはできますか?

学歴要件を満たしていれば可能です。ただし、建築系の学歴がない場合は、二級建築士を経由して受験資格を得るルートが現実的な選択肢になります。自分の学歴・実務経験の状況に応じて、どちらのルートが近道かを見極めることが大切です。

まとめ

一級建築士は、学歴ルート・実務経験ルートのいずれかを選ぶことで、未経験からでも目指せる資格です。2020年の建築士法改正により、実務経験を積みながら受験を進めやすくなった点も追い風です。

まずは未経験者を採用している建築系の職種に就き、資格取得支援制度が整った環境で実務経験と学習を並行して進めることが、合格への近道になります。

「今の職場に資格取得支援制度があるか不安」「未経験から挑戦できる求人が見つからない」という方は、建築・建設業界に特化した転職エージェントに相談することで、資格取得を見据えた求人選びがしやすくなります。

技術士・RCCMの転職支援|支援実績30年・転職成功1200名以上|無料登録はこちら建設業界で、あなたのキャリアを次のステージへ。

技術士・施工管理技士・建築士などの資格を活かした転職やキャリアアップをお考えなら、 建設・建築・インフラ業界に特化した、完全無料の転職支援サービス 「ジョブハウスエージェント」をご利用ください。 業界に精通したアドバイザーが、経験や希望条件に合わせて最適な求人をご提案します。

著者:ジョブハウス建設 編集部

建設・建築・インフラ業界に特化した転職支援プラットフォーム「ジョブハウス建設」編集部です。技術士、建設コンサルタント、施工管理など、建設分野の幅広い専門職・技術職に関する情報を、現場の知見と最新データをもとに正確かつわかりやすく発信しています。

あわせて読みたい記事