測量士の離職率は高いのか——転職や就職を考えている方にとって、業界の定着率は気になるポイントです。
結論から言うと、測量業界では全体の9割以上が転職経験ありというデータがあり、他業種と比べても転職・離職が起きやすい環境です。一方で、業界全体では人材不足が深刻化しており、スキルを持った測量士は市場価値が高まっています。
この記事では、測量士の離職率の実態をデータで解説したうえで、離職につながる主な理由と、長く続けるために知っておきたいポイントを詳しく紹介します。測量士として働くことを検討している方や、現職でのキャリアアップを考えている方はぜひ参考にしてください。
測量士の離職率を数字で見る【業界の実態】

測量士の離職率を理解するには、建設業全体のデータと、測量業界固有の統計を組み合わせて見る必要があります。ここでは信頼性の高い公的データと業界調査をもとに、実態を整理します。
建設業全体の離職率と比較する
厚生労働省「令和5年雇用動向調査」によると、建設業の離職率は10.1%(一般労働者ベース10.3%)です。全産業平均が15.4%であることを考えると、建設業は決して高い部類ではありません。
ただし、これは在籍者全体に占める年間離職者の割合です。在籍年数が短い若手層に絞ると数値はぐっと上がります。厚生労働省のデータでは、建設業の新卒3年以内離職率は大卒で30%、高卒で42%(2023年公表値)と報告されており、若手の定着に課題があることがわかります。
測量業登録業者数の減少が示す「人手不足」
国土交通省の統計によると、測量業の登録業者数は2003年度の14,750業者をピークに21年連続で減少し、2021年度末には11,140業者まで落ち込んでいます(約24.5%の減少)。
業者数の減少は、廃業・合併・後継者不足など複数の要因が重なった結果ですが、その根底には「測量士が集まらない」「定着しない」という人材面の課題があります。業界団体でも人材確保が急務とされており、若手の早期離職が業界縮小の一因になっています。
アンケートが示す「9割以上が転職経験あり」という現実
測量技術者58名を対象にした民間調査(2023年)では、全体の9割以上が一度は転職を経験していると回答しています。これは、測量士として働く人の大多数が、キャリアの中で一度は職場を変えることを示しています。
転職の理由として多く挙げられているのは「年収への不満」「人間関係」で、職場環境や待遇に課題を感じて動く人が多い実態が明らかです。ただし、転職を繰り返しながらスキルと年収を上げていくというキャリアパスも珍しくなく、「転職経験あり=業界を離れた」とは限りません。
出典:リーガルジョブマガジン「測量技術者の勤務実態調査(2023年)」
高齢化が加速する業界構造
測量業界でもう一つ注目すべきなのが、従事者の高齢化です。測量会社に勤務する測量技術者のうち、50歳以上が約57%を占める一方、30歳以下は約13%にとどまっています(国土交通省調査)。
高齢層の退職による離職が今後も続くと見込まれており、若手・中堅世代の測量士には、数年以内に職場の中心を担う可能性が十分にあります。離職率の高さと同時に、この構造変化を押さえておくことが重要です。
測量士が離職・転職を考える主な理由5選

測量士が離職・転職を考えるきっかけは一つではありません。ここでは、現役・元測量士のアンケートや業界調査で頻出する5つの理由をまとめます。
①年収・給与への不満(300〜500万円台が大半)
測量技術者の年収で最も多い層は300〜500万円未満で、全体の約7割を占めています。全国の平均年収(国税庁調査:約460万円)と大きくかけ離れているわけではありませんが、外業・内業の二重負担や資格取得のコストを考えると、「割に合わない」と感じる人が少なくありません。
特に若手・中途入社の場合は測量士補としての入職となり、資格取得前は給与が抑えられるケースも多いです。「頑張りが給与に反映されにくい」という不満が積み重なり、待遇の良い職場へ移る転職の引き金になることが多いのが実情です。
②長い拘束時間と体力的な消耗
測量の仕事は、現場での外業(フィールドワーク)と事務所での内業(データ処理・図面作成)が組み合わさります。工期が詰まると残業や休日出勤が発生しやすく、特に繁忙期の春先(公共工事の入札・着工シーズン)はハードな時期が続きます。
一方で、前述の調査では月残業20時間未満が約7割という数字もあり、職場や担当する案件によって状況は大きく異なります。拘束時間の長さに悩むなら、残業実績を事前に確認できる企業を選ぶことが有効です。
③外業の過酷さ——天候・現場環境に左右される
測量の外業は真夏の炎天下・真冬の寒空の中で行うことも多く、山間部・河川沿い・工事現場など、アクセスが困難な環境での作業も珍しくありません。デスクワーク中心の職種と比べると、体力的・精神的な消耗が大きいのは確かです。
「現場が好きで入ったが、体が続かなかった」という理由で離職するケースもあります。経験を積むにつれて段取りが身につき、体力的な負荷は下がる傾向がありますが、入社直後の数年間が最も離職しやすい時期です。
④キャリアパスの見通しが立てにくい
測量業界は企業規模が小さい会社が多く、昇進・昇給のステップが不明確な職場も少なくありません。「いつ測量士補から測量士に昇格できるのか」「資格を取ったあとどうキャリアを積めばいいのか」が見えないまま働き続けると、モチベーションが低下しやすくなります。
特に20代後半〜30代は将来設計を真剣に考える時期でもあるため、キャリアパスが描けない職場からの転職意向が高まりやすい傾向があります。入社前に「どのようなキャリアを想定しているか」を企業に確認しておくことが重要です。
⑤人間関係のストレスや職場の閉塞感
業界調査でも「仕事の悩みは人間関係が最多」というデータがあります。特に測量会社は少人数・チーム制の職場が多く、合わない上司や同僚がいると逃げ場のない状況になりがちです。
また、長年にわたり同じ顔ぶれで仕事をしてきた業界気質から、新しいやり方や意見を出しにくい雰囲気を感じる若手もいます。こうした「職場の閉塞感」が重なると、転職の一因になります。
測量士を長く続けている人の特徴と離職を防ぐ3つのポイント

離職率が高い業界でも、長くキャリアを積んでいる測量士は多くいます。彼らに共通するのは「待遇を上げる行動を取り続けている」「職場を見極めて動いている」という点です。以下の3つのポイントを押さえましょう。
資格取得で市場価値と年収を上げる
測量士の年収は、資格の有無によって明確に差が出ます。測量士資格保有者は年収500〜700万円以上の割合が測量士補のみの人より高く、資格が収入に直結することがデータでも確認されています。
測量士試験の受験方法は2通りあります。1つは国土地理院が主催する試験への合格、もう1つは測量士補資格を取得後に所定の実務経験を積む方法です。試験の詳細・日程は国土地理院の公式サイトで確認できます。資格を取ることで昇給・昇格の根拠になるほか、転職市場でも評価されるため、「長く続ける」ための土台になります。
職場環境・企業規模を見直す転職戦略
測量会社は規模の大小で待遇・文化が大きく異なります。大手や準大手の測量会社・建設コンサルタントは、福利厚生や教育体制が充実しており、キャリアアップの道筋も明確です。一方、中小の測量事務所でも専門性を高められる案件が多く、スキルを磨くには適した環境です。
「今の職場が合わない」と感じるなら、業界を離れる前にまず同業界内での転職を検討するのが得策です。測量士のスキルは企業間で通用するため、転職によって給与・環境の両方を改善できるケースが多いです。
| 企業タイプ | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 大手・準大手 | 待遇・教育体制が充実 | 競争倍率が高め |
| 中小測量事務所 | 多様な案件に携われる | 待遇は企業差が大きい |
| 公務員(技術職) | 安定・残業少なめ | 採用枠が少ない |
最新技術(UAV・3Dスキャナー)を武器にする
測量業界は近年、ドローン(UAV)を使った空中測量や、3Dレーザースキャナーによる点群データ取得など、デジタル技術の導入が急速に進んでいます。こうした最新技術を習得しているかどうかが、キャリアの分岐点になりつつあります。
新技術を扱えるスキルを持つ測量士は希少価値が高く、転職市場でも高い評価を受けており、離職せずとも自分の価値を引き上げる手段になっています。「最新技術に触れられる職場かどうか」は、転職先を選ぶ際の重要チェックポイントです。
測量業界の将来性——人手不足で「むしろ貴重な人材」になれる理由

「離職者が多い=将来性がない業界」とは限りません。むしろ測量業界では、人手不足が深刻化しているため、スキルのある測量士の需要は高まり続けています。ここでは業界の将来性を3つの視点から整理します。
インフラ整備・防災分野での需要増加
日本では老朽化したインフラ(道路・橋梁・トンネルなど)の維持・更新工事が今後数十年にわたって続く見込みです。また、近年頻発する自然災害への対応として、河川整備・斜面対策・被災地の復旧測量など、防災・減災分野での測量ニーズが増加しています。
国土交通省が推進する「国土強靭化」計画もあり、公共工事の発注量は中長期的に安定した水準が続くとみられています。測量士の仕事がなくなるどころか、需要は底堅く推移すると考えられます。
i-Construction推進と測量士の役割
国土交通省は「i-Construction」施策のもと、建設現場のICT化・省力化を推進しています。その中核をなすのが、3次元測量データによる「現場の可視化」です。ドローン測量・地上型3Dスキャナー・CIMモデルの活用が義務化・推奨される案件が増えており、ICT測量スキルを持つ測量士の需要は急拡大しています。
詳細は国土交通省のi-Construction公式ページで確認できます。AIや自動化によって単純作業の一部は代替されますが、現場判断や3次元データの品質管理を担う専門家の役割は残り続けます。
登録者減少が「希少価値」を高める逆転の発想
測量業者数の21年連続減少と、業界の高齢化によってこれから大量の測量士が退職していきます。供給が絞られる一方で需要は維持・拡大しているため、スキルを持つ測量士の市場価値は今後さらに高まることが予想されます。
「離職率が高くて人が集まらない業界」という見方を逆転させると、「今のうちにスキルを積み上げておけばキャリアの選択肢が広がる業界」とも言えます。特に若手・30代前半の測量士にとっては、追い風の時代が来ています。
測量士への転職・就職前に知っておきたいこと

測量士として新たにキャリアをスタートする、あるいはより良い環境に移ることを考えているなら、事前に知っておきたいポイントがいくつかあります。
未経験・測量士補からのキャリアステップ
測量の仕事は完全未経験での入職も可能です。多くの企業が測量士補の資格取得を支援する体制を整えており、入社後に資格を取りながらスキルを身につけるルートが一般的です。
測量士補の資格を取得後、実務経験を積み重ねることで測量士への昇格を目指せます。入社時から「何年後に測量士を取れるか」「資格取得のサポートはあるか」を確認しておくと、キャリア設計がしやすくなります。
離職率の低い職場を見分けるチェックポイント
転職・就職活動で離職率の低い職場を見分けるには、以下のポイントを確認することが効果的です。
- 残業時間の実績(求人票だけでなく口コミサイト・転職エージェントで確認)
- 平均在籍年数・定着率(採用担当者に直接確認できる)
- 資格取得・研修のサポート制度(会社負担での受験費用補助等)
- ICT測量への取り組み状況(最新技術に触れられる環境かどうか)
- 給与レンジと昇給ルール(資格取得後の待遇改善が明示されているか)
これらを一つひとつ確認することで、「入ってみたら環境が合わなかった」というミスマッチを防ぐことができます。
転職エージェントを活用して非公開求人を狙う
測量業界の求人は、大手求人サイトに掲載されないものも多く存在します。建設・測量業界に特化した転職エージェントを利用することで、非公開求人へのアクセスや、企業の内情(残業・定着率・職場環境)についての情報収集がしやすくなります。
自分の希望条件(年収・勤務地・案件タイプなど)を整理したうえで相談することで、自分に合った求人を効率よく紹介してもらえます。
測量士の離職率に関するよくある質問
測量士の離職率は何パーセントですか?
公式な「測量士の離職率」の統計は公表されていませんが、建設業全体では年間離職率が約10.1%(厚生労働省「令和5年雇用動向調査」)です。新卒3年以内の離職率は大卒30%・高卒42%と高めで、若手層で特に転職が起きやすい実態があります。また、測量技術者を対象にした民間調査では9割以上が転職経験ありと回答しており、業界内での転職は一般的です。
測量士はなぜ離職しやすいのですか?
主な理由は、①年収が300〜500万円台に集中しており「割に合わない」と感じやすいこと、②外業(現場測量)の体力的な負荷が大きいこと、③企業規模が小さい職場が多くキャリアパスが見えにくいこと、④人間関係のトラブルが起きやすい少人数環境などが挙げられます。一方で「仕事自体は好きだが職場環境が合わない」という理由での転職も多く、業界を完全に離れるよりも同業他社への転職が多い傾向があります。
測量士として長く働くには何が重要ですか?
重要なのは「資格取得・スキルアップで市場価値を高めること」と「自分に合った職場を見極める目を持つこと」の2点です。測量士資格の取得や最新のICT測量技術の習得は、給与交渉や転職時の評価につながります。また、入社前に残業実績・定着率・教育体制を確認することで、長続きする職場を選びやすくなります。
測量業界の人手不足はこれからも続きますか?
続く見込みが高いです。測量業登録業者数は2003年度のピークから21年連続減少しており、従事者の高齢化(50歳以上が約57%)による退職者増加が見込まれます。一方でインフラ整備・防災工事・i-Constructionの推進により測量ニーズは維持・拡大しているため、スキルを持つ測量士の希少価値は今後さらに高まると考えられます。
まとめ:測量士の離職率は高め——でも業界を離れる前に選択肢を広げよう
この記事では、測量士の離職率の実態とその背景を解説しました。要点を整理します。
- 建設業の年間離職率は約10.1%だが、若手(新卒3年以内)では大卒30%・高卒42%と高い
- 測量技術者の9割以上が転職経験あり——ただし「業界離脱」より「同業内転職」が多い
- 離職の主な理由は「年収不満」「長い拘束時間」「キャリアパスの不明確さ」「人間関係」
- 測量業者数21年連続減少・高齢化が深刻で、スキルある測量士の市場価値は上昇中
- 資格取得・ICT測量スキルの習得・転職エージェント活用が「長く続ける」鍵
測量士の離職率が高い背景には、職場環境や待遇のミスマッチが大きく影響しています。業界自体に将来性がないのではなく、「合った職場で働けているかどうか」が定着のカギです。
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