「測量士って女性でもやっていけるの?」「体力的にきつくない?」――測量士に興味はあるものの、男性が圧倒的に多い業界に飛び込むことに不安を感じている女性は少なくありません。
結論から言えば、女性でも測量士として十分に活躍できます。実際に、業界関係者の61.9%が「女性は活躍している」と実感しており、ICT施工やドローン測量の普及によって体力面のハードルも年々下がっています。
この記事では、女性測量士の割合や年収の実態、活躍しやすい業務領域、転職時の企業選びのポイント、キャリアパスまで、女性の視点で知りたい情報を網羅的に解説します。測量士への転職やキャリアチェンジを検討している女性は、ぜひ参考にしてください。
女性測量士の現状|割合はわずか2%でも活躍の場は広がっている

測量士を目指す女性がまず気になるのは、「実際にどのくらいの女性が測量士として働いているのか」ではないでしょうか。ここでは、最新のデータをもとに女性測量士の現状を解説します。
測量士全体に占める女性の割合は約2%
登録測量士の総数は約23万9千人ですが、そのうち女性はわずか約2%です。男性が約98%を占めており、数字だけ見ると女性には不利な業界に映るかもしれません。
ただし、この数字は「登録者」ベースの割合であり、実際に測量業務に携わっている技術者に限ると、女性比率はやや高くなります。国土地理院の実態調査では、測量士資格保有者のうち40代女性が47.1%(266人)と最多を占めており、長くキャリアを築いている女性が一定数いることがわかります。
「女性が活躍している」と感じる業界関係者は61.9%
2020年に実施されたアンケート調査では、「測量業界で女性が活躍していると感じる」と回答した割合は61.9%に達しています。内訳を見ると、男性回答者の66.8%、女性回答者の54.1%が「活躍している」と評価しています。
少数派であっても、確実に存在感を発揮している女性測量士がいることをこの数字は示しています。
女性従業員比率20%以上の測量企業が増加中
測量業界全体で見ると、女性従業員の割合が20%以上の企業数は2015年から2020年にかけて大幅に増加しています。業界としてダイバーシティの推進が進んでおり、女性の採用に前向きな企業が確実に増えている状況です。
特に従業員1,001人以上の大手企業では、女性活躍推進法に基づく行動計画の策定が義務化されており、女性の採用・定着に向けた制度整備が加速しています。
出典:令和5年度 測量業における測量士・測量士補に関する実態調査 報告書|国土地理院
20歳で測量士合格など若手女性の活躍事例も
2025年1月には、弱冠20歳の女性が測量士試験に合格したというニュースが話題になりました。測量士試験は合格率10%前後の難関資格ですが、性別や年齢に関係なく挑戦できる試験です。
このような若手女性の活躍は、測量業界に新しい風を吹き込んでいます。「女性には向かない」という固定観念は、着実に過去のものになりつつあります。
女性測量士の年収はいくら?男女の年収差132万円の実態と背景

測量士を目指すうえで、年収は気になるポイントの一つです。ここでは女性測量士の年収の実態と、男女差が生まれる背景を具体的なデータで解説します。
女性測量士の平均年収は約348万円、男性は約488万円
統計データによると、女性測量士の平均年収は約348万円です。一方、男性測量士の平均年収は約488万円で、男女間で約132万円の年収差があります。
この差は日本全体の男女賃金格差と比較しても大きく、測量業界特有の要因が影響しています。ただし、この平均値にはパートや時短勤務の女性も含まれているため、フルタイムで働く女性に限定するとこの差は縮まる傾向にあります。
経験年数別に見る男女の年収推移
経験年数別の年収を男女で比較すると、興味深い傾向が見えてきます。
| 経験年数 | 男性 | 女性 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 0年 | 約283万円 | 約265万円 | 18万円 |
| 1〜4年 | 約370万円 | 約292万円 | 78万円 |
| 5〜9年 | 約471万円 | 約287万円 | 184万円 |
| 10〜14年 | 約479万円 | 約315万円 | 164万円 |
| 15年以上 | 約575万円 | 約424万円 | 151万円 |
注目すべきは、経験年数5〜9年で年収差が最大の184万円に広がる点です。女性の場合、この時期に経験年数1〜4年よりもむしろ年収が下がっています。これは、結婚・出産というライフイベントと重なる時期であることが大きく影響しています。
出典:測量士の年収・給料は?1000万も可能?|アガルートアカデミー
年収差が生まれる3つの要因
女性測量士の年収が男性より低くなる背景には、主に以下の3つの要因があります。
- ライフイベントによる就業中断:出産を機に休職・退職するケースが多く、キャリアの断絶が年収に直結します。復職しても時短勤務やパートに切り替える方も多いため、年収の回復に時間がかかります。
- 勤務形態の違い:フルタイムで働く男性に対し、子育て中の女性はパート・アルバイトや時短勤務を選ぶケースが目立ちます。労働時間の差がそのまま年収差に反映されます。
- 職種の偏り:女性が内業(事務・データ処理)中心にシフトしやすい一方、外業(現場作業)や管理職を担当する男性の方が手当や役職給が加算されやすい構造があります。
年収差を埋めるために女性ができる具体的な行動
年収差は構造的な問題ですが、個人の努力で縮められる部分もあります。
- 測量士資格を確実に取得する:測量士補ではなく測量士の資格を持つことで、主任技術者としてプロジェクトの責任者を任され、年収アップにつながります。
- ICT・ドローン関連のスキルを習得する:3次元測量やGISの技術は需要が高く、体力に関係なく専門性で評価されるため、男女の年収差が生まれにくい分野です。
- 建設コンサルタントへの転職を視野に入れる:建設コンサルタント企業は測量事務所より平均年収が高く(400万〜800万円)、内業中心の業務構成のため女性が働きやすい環境です。
- キャリアの断絶を最小限にする:産休・育休制度が充実した企業を選び、復職後もフルタイムで働ける環境を確保することが、長期的な年収に大きく影響します。
女性が測量士として活躍しやすい4つの業務領域

「測量=屋外の肉体労働」というイメージが強いかもしれませんが、実際の測量業務は多岐にわたります。女性の特性が活きる業務領域を4つ紹介します。
内業(CAD・データ解析)は精密さが求められ女性に適性あり
測量業務は大きく「外業(現場での測量作業)」と「内業(オフィスでのデータ処理・図面作成)」に分かれます。内業では、現場で取得した測量データをCADソフトで図面化したり、座標計算やデータ解析を行ったりします。
緻密な作業を得意とする女性は内業で高い評価を得やすく、実際にCADオペレーターとして女性を積極的に採用する企業もあります。数ミリ単位の精度が求められる測量データの処理は、注意力と正確性が命であり、これらのスキルは性別に関係なく評価されます。
社外打ち合わせ・クライアント対応で差別化しやすい
測量業界は男性が圧倒的多数のため、クライアント対応の場に女性がいると記憶に残りやすいという利点があります。提案内容や人柄が認識されやすく、信頼関係の構築がスムーズに進むケースが多いです。
女性ならではの共感力や気配りが、打ち合わせの場で活きる場面は少なくありません。特に住宅地の境界確認など、一般の方と接する機会が多い用地測量では、丁寧なコミュニケーションが求められるため女性が活躍しやすい領域です。
設計業務での利用者視点が評価される
測量と設計を一体的に行う企業では、道路や公園、商業施設などの設計において利用者(生活者)の視点が求められます。日常的に子どもの送り迎えや買い物をする女性だからこそ気づける視点は、設計の品質向上に直結します。
「ベビーカーで通れる歩道幅か」「子どもの目線で見通しが利くか」といった具体的な指摘は、男性中心のチームでは見落とされがちです。このような視点を持ち込める女性は、チーム内で重宝されます。
ICT施工・ドローン測量で体力差のハードルが低下
国土交通省が推進する「i-Construction」の普及により、測量のやり方は大きく変わりつつあります。ドローン測量や3Dレーザースキャナの導入が進み、従来のように重い機材を担いで山中を歩き回る場面は確実に減っています。
ICT測量のスキルを習得すれば、体力差に関係なく第一線で活躍できます。むしろ、新しい技術に柔軟に対応できる若手の方が有利な分野であり、女性にとって大きなチャンスです。ドローンの操縦資格やGISの専門スキルを身につけることで、性別を問わず市場価値の高い人材になれます。
女性が測量士を目指すときの不安とリアルな対処法

女性が測量士を目指す際、多くの方が感じる不安があります。ここでは代表的な4つの不安に対して、現場のリアルな声をもとに対処法を解説します。
体力面の不安:チーム分担とICT化で解消されつつある
「重い機材を運べるか不安」という声は多くの女性から聞かれます。確かに、トータルステーションやGNSS受信機などの測量機材は数キロ〜十数キロの重さがあり、山林や河川での作業は体力を要します。
しかし、実際の現場ではチームで分担して作業するのが基本です。男性測量士の本音としても、「女性だからこの仕事は任せられないという意識はほとんどない。チームメイトがそれぞれの特性を生かしながら作業を進めている」という声があります。
加えて、前述のICT化の進展により、ドローンや3Dスキャナの導入で現場の負担自体が軽減されています。体力面の不安は、企業選びと技術習得で十分にカバーできます。
トイレ・着替え問題:企業の環境整備が進んでいる
屋外の現場作業で「トイレがない」「着替える場所がない」という問題は、女性が敬遠する大きな理由の一つでした。しかし、現在は状況が変わりつつあります。
国土交通省が建設現場における「快適トイレ」の設置を推進しており、女性専用トイレや更衣室を整備する現場が増えています。また、都市部の測量現場ではコンビニやコワーキングスペースの利用が一般的です。
企業選びの段階で、現場の環境整備状況を確認することをおすすめします。女性の採用に積極的な企業ほど、こうした環境面の対策が進んでいる傾向があります。
男性ばかりの職場でやっていける?:コミュニケーション力が武器になる
男性が96〜98%を占める職場に飛び込むことへの不安は自然なことです。しかし、現場で20年のキャリアを持つ女性測量士は、「伝え方とチームワークを意識すれば、性別は関係なくなる」と語っています。
むしろ、男性ばかりの職場だからこそ、女性のコミュニケーション力が重宝される場面が多くあります。チーム内の情報共有、クライアントとの円滑なやり取り、後輩への丁寧な指導など、測量技術以外の面で存在感を発揮している女性は少なくありません。
結婚・出産後も続けられる?:産休育休制度と内業シフトの選択肢
「出産を機に辞めるしかないのでは」という不安を持つ方もいますが、測量業界は慢性的な人手不足のため、経験のある女性技術者の復職を歓迎する企業が多いのが実情です。
出産後の働き方としては、以下の選択肢があります。
- 育休後にフルタイムで復職:体力的に問題がなければ、外業と内業の両方を担当
- 内業中心にシフト:子どもが小さいうちはCAD・データ処理などの内業を中心に担当
- 時短勤務の活用:育児・介護休業法に基づく時短勤務制度を利用
- 土地家屋調査士として独立:自分のペースで業務量を調整できるため、子育てとの両立がしやすい
ポイントは、入社前にその企業の産休・育休の取得実績と、復職後の働き方の事例を確認しておくことです。
女性が測量士に転職する際の企業選び5つのポイント

女性が測量士として長く働くためには、企業選びが非常に重要です。入社後に「こんなはずじゃなかった」とならないために、確認すべき5つのポイントを解説します。
内業と外業で担当が分かれている企業を選ぶ
測量企業には、全員が外業と内業の両方を担当する体制の企業と、外業チームと内業チームが分かれている企業があります。女性が働きやすいのは、内業専任のポジションがある企業です。
もちろん、外業にも挑戦したい方はその選択肢もありますが、ライフステージの変化に応じて内業にシフトできる柔軟性がある企業を選んでおくと、長期的なキャリアを描きやすくなります。
女性の採用実績・在籍率を確認する
求人情報や企業のWebサイトで、女性社員の在籍数や採用実績を確認しましょう。「女性歓迎」と書かれていても、実際に女性が1人もいない企業と、すでに複数名が活躍している企業では、職場環境は大きく異なります。
面接時に「現在の女性社員の人数」「女性で管理職に就いている方はいるか」を質問するのも有効です。回答の具体性で、その企業の女性活躍に対する本気度が見えてきます。
産休・育休・時短制度の実績を調べる
制度があるだけでは不十分です。実際に産休・育休を取得した社員がいるか、復職率はどのくらいかを確認しましょう。厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」では、企業ごとの育休取得率や女性管理職比率を公開している場合があります。
公共測量と民間測量のクライアント構成を確認する
測量企業の仕事は、大きく「公共測量」と「民間測量」に分かれます。公共測量が中心の企業は官公庁が発注元となるため、比較的安定した業務量と規則的な勤務時間が期待できます。
一方、民間測量が中心の企業は不動産会社やデベロッパーが顧客となり、繁閑の差が大きい傾向があります。ワークライフバランスを重視するなら、公共測量の比率が高い企業がおすすめです。
転職エージェントを活用して非公開求人を探す
測量業界に特化した転職エージェントや、建設業界専門の転職支援サービスを活用すると、一般の求人サイトには掲載されない非公開求人にアクセスできます。
エージェントに「女性が働きやすい環境」「内業中心のポジション」「産休育休の実績がある企業」などの条件を伝えれば、自分で探すよりも効率的にマッチする企業を見つけられます。ほとんどの転職エージェントは無料で利用できるため、まずは相談してみるのが得策です。
女性測量士のキャリアパス|資格取得からステップアップまで

測量士の資格を起点に、女性が描けるキャリアパスは複数あります。短期的な年収アップから独立まで、段階に応じた選択肢を紹介します。
測量士補→測量士のステップアップルート
測量未経験の方は、まず測量士補の資格取得からスタートするのが王道です。測量士補は合格率30〜50%と比較的取得しやすく、実務経験なしでも受験できます。
測量士補として実務経験を積みながら、上位資格である測量士を目指すルートが一般的です。測量士を取得すれば、測量計画の作成という責任ある業務を任されるようになり、年収アップにも直結します。
土地家屋調査士とのダブルライセンスで独立も視野に
測量士の資格に加えて土地家屋調査士を取得すれば、不動産の表示登記業務を独占的に行うことができます。測量士補を保有していると、土地家屋調査士試験の午前試験が免除されるメリットもあります。
土地家屋調査士としての独立は、自分のペースで仕事量を調整できるため、子育てとの両立を重視する女性にとって魅力的なキャリアパスです。個人事務所として独立すれば、年収700万〜1,000万円以上も十分に可能です。
管理職・主任技術者へのキャリアアップ
測量士の資格を持ち、実務経験を積めば、性別に関係なく主任技術者としてプロジェクトの責任者を任されるようになります。勤続20年の女性測量士が主任技術者として活躍している事例も報告されています。
管理職や主任技術者になれば、現場作業よりもマネジメント業務が中心となるため、体力面の負担はさらに軽減されます。チームの指揮・品質管理・クライアント折衝が主な業務となり、コミュニケーション力に長けた女性の強みが活かされるポジションです。
建設コンサルタントへの転職で年収600万〜800万円も
測量会社での経験を活かして建設コンサルタント企業へ転職するのも、キャリアアップの有力な選択肢です。建設コンサルタントの平均年収は400万〜800万円と測量事務所より高く、内業中心の業務構成のため女性が長く活躍しやすい環境です。
建設コンサルタントでは、測量データを基にした計画立案や設計業務が中心となります。測量士としての専門性に加え、RCCM(シビルコンサルティングマネージャ)や技術士の資格を取得すれば、さらに上の年収帯を狙えます。
女性測量士に関するよくある質問
Q. 測量士の資格取得に男女差はありますか?
資格試験に男女差はありません。測量士試験は受験資格に性別の制限がなく、試験内容も全員共通です。合格率10%前後の難関資格ですが、過去問を中心とした学習で独学合格も可能です。まずは測量士補(合格率30〜50%)から取得し、実務経験を積みながら測量士を目指すのが一般的なルートです。
Q. 女性で未経験から測量士を目指せますか?
未経験からでも目指せます。測量士試験は学歴・経験不問で誰でも受験可能です。未経験で入社する場合は、まず測量士補として内業(CAD・データ処理)からスタートし、徐々に外業にも関わるのが一般的です。未経験者向けの研修制度がある企業を選ぶと、安心してキャリアを始められます。
Q. 女性測量士の年収を上げるにはどうすればいいですか?
資格の上位取得と専門スキルの習得が最も効果的です。測量士補→測量士のステップアップ、ICT測量やGISのスキル習得、さらに建設コンサルタントへの転職で年収600万〜800万円も射程圏内です。キャリアの断絶を最小限にし、フルタイムで経験を積むことも長期的な年収アップの鍵です。
Q. 測量の現場は女性1人でも大丈夫ですか?
チームで動くため、1人きりになることは基本的にありません。測量作業は2〜3人のチームが基本です。重い機材はチームで分担し、安全面でも複数人体制が前提です。ただし、職場選びの際は女性社員が他にもいる企業を選ぶと、相談相手がいて心強いでしょう。
Q. 子育て中でも測量士として働き続けられますか?
働き方を工夫すれば十分に可能です。産休・育休後に内業中心の勤務にシフトしたり、時短勤務を利用したりする選択肢があります。測量業界は人手不足のため、経験のある女性技術者の復職を歓迎する企業が多く、ブランクがあっても復帰しやすい環境です。
まとめ|女性でも測量士として十分に活躍できる時代が来ている
女性測量士はまだ2%と少数派ですが、業界の受け入れ体制は着実に整いつつあります。この記事のポイントをまとめます。
- 女性測量士の割合は約2%だが、業界関係者の61.9%が「女性は活躍している」と実感している
- 女性の平均年収は約348万円で男性(約488万円)との差があるが、資格取得・ICTスキル・転職先選びで差を縮められる
- 内業(CAD・データ解析)、クライアント対応、設計業務、ICT測量の4領域で女性の強みが活きる
- 体力面・トイレ問題・職場の男女比などの不安は、企業選びと技術の進歩で解消されつつある
- 測量士補→測量士→土地家屋調査士・建設コンサルタントと、段階的にキャリアアップできるルートが複数ある
「女性だから」という理由で測量士を諦める必要はありません。むしろ、女性が少ない今だからこそ、業界に飛び込むことで希少な人材として高く評価されるチャンスがあります。まずは測量士補の資格取得から、一歩を踏み出してみてください。
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