製薬や化粧品は私たちが健康的、そして快適に生活を送るうえで必要不可欠ですが、その製造方法を知っている方は少ないのではないでしょうか。今回はそんな製薬・化粧品工場をさまざまな視点から紐解いていきます。

※コラム内に出てくる売上ランキングや業界規模など日本企業のデータは平成25~26年決算に準拠しています 


製薬・化粧品工場の基本情報

仕事内容や業界に関するデータ、大手企業などの基本的な情報について、製薬・化粧品工場の求人情報と合わせてみていきます。

 

製薬工場の仕事内容

製造する企業や工場によっても異なりますが、ここでは一般的な製造過程の紹介を通して工場でのお仕事を説明していきます。

 

・医薬品の製造過程(錠剤などの固形薬)

参照元http://www.otsuka.co.jp/company/production/factory/product/medicine/map.html


 ①   秤量

原材料を機械で決まった分量に計測します。


②    造粒・乾燥

後の製造過程で加工しやすいように、原材料の粒子を均一にします。


③    混合

薬が体内で吸収されやすくするための成分などを加え、均一になるように混ぜます。


④    打錠

薬を機械で錠剤の形にしていきます。


⑤    フィルムコーティング

飲みやすくするために錠剤の形になった薬の表面を薄い膜でコーティングしていきます。


⑥    印刷・検査

錠剤の表面に薬の名称や名称を表す記号を印刷し、機械で検査します。


⑦    PTP包装

プラスチックのフィルムの中に錠剤を入れ、アルミのフィルムを貼ります。ここで普段、わたしたちが目にするような包装された錠剤になります。


⑧    箱詰め

錠剤に説明書を詰めて、期限や製造番号を記した箱に詰めていきます。


⑨    品質試験・出荷

品質基準を満たした錠剤は出荷前に再検査し、合格したら出荷します。

 

化粧品工場の仕事内容

製薬工場と同様に、化粧品の製造工程から工場でのお仕事を説明していきます。

 

・化粧品の製造工程

参照元 http://sanmaru-m.co.jp/blog/2014/11/30/57


①原材料の検査や管理

良質な原材料を集めることが良い化粧品を作る鍵です。また原材料が劣化しないよう保管期限を設けて、品質管理を行います。


②原材料の計量

規格に合った化粧品を作るためには原材料をきっちり計量することが大切です。人の目や機械で測ります。


③仕込み

計量した材料を機械を使って混ぜたり、攪拌したりします。使用する機械は「ホモジナイザー」という名前で、加工しやすいように化粧品の粒子を均一に揃えてくれます。


④品質の検査

規定の基準に到達しているかチェックを重ね、品質の検査を行います。


⑤製品の充填・包装

専用の機械を使い、時折人の目で確認しながら化粧品を容器に詰めていきます。包装が終わった後は出荷検査を行い、その検査に合格したものが販売されます。

 

製薬・化粧品業界の規模

国内製薬業界の規模は10兆2,509億円で、アメリカに次いで世界2位となっています。しかし近年はアメリカや日本の市場における成長が伸び悩む半面、ブラジルやインド、中国といった新興国での市場が著しい成長率をみせています。

この状況から世界の主力製薬メーカーは新興国をターゲットにした販売戦略を打ち出しており、医薬品市場が世界で多極化しています。

 

また日本の化粧品業界の規模は2兆0,097億円ですが、国内市場としてはこれでほぼ頭打ちと言われています。

世界全体の市場規模としては26兆円ほどであり、消費者の多様化や新興国の成長という背景から市場はますます拡大しています。日本企業はアジアにおける化粧品市場に強いことから、海外進出する企業も多いです。

 

製薬・化粧品工場が集中しているエリア

製薬・化粧品工場が最も集中しているエリアは埼玉県です。埼玉県は医療品と化粧品の生産額が日本一で、製薬では大正製薬の羽生工場や田村製薬の埼玉工場、化粧品では資生堂の久喜工場などがあります。

また大阪府は製薬が盛んで生産高がトップ5に入っており、その他にも東京都や神奈川県、京都府、広島県などに製薬・化粧品工場が多くあります。

 

製薬業界内の大手企業

・武田薬品工業

武田薬品工業は230年の歴史をもつ日本の製薬業界をリードする企業で、国内製薬メーカーでの売り上げが1位です。

「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」ことを企業理念に掲げています。医療用医薬品が主力商品とする、企業間競争力の高い会社です。

 

・アステラス製薬

アステラス製薬は2005年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して創立されました。国内製薬メーカー合併前の両企業から引き継いだ泌尿器領域の医薬や免疫抑制剤を主力商品として取り扱っています。

 

・第一三共

国内製薬メーカーで売り上げ第3位を誇るのが第一三共です。

企業理念に「革新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供することで、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを掲げており、がんに強い医薬品の研究開発に強みをもっています。

 

化粧品業界内の大手企業

・資生堂

化粧品国内シェア第1位を誇る代表的な化粧品企業で、1872年創業と長い歴史をもっています。主な取扱商品は化粧品や「TSUBAKI」などシャンプー、香水などがあります。

国内のみならず中国へ積極展開しており、またベトナムやギリシャ、スイスなどに子会社を設立して海外展開を進めています。

 

・花王

花王グループは「ビューティケア」「ヒューマンヘルスケア」「ファブリック&ホームケア」の3つの事業に分かれており、これらの事業を通して世界中の人々の生活を豊かにすることを企業理念としています。

化粧品はビューティーケア事業が担当しており、化粧品国内シェア第2位です。「カネボウ」など化粧品のみならず、「ビオレ」など洗顔料、「ケープ」といったスタイリング剤など幅広い製品を生み出しています。

 

・コーセー

コーセーは美の創造企業として、人々、ひいては地球の未来を大切にするという企業理念をもっています。

近年ではアラブ首長国連邦にも進出して商品を販売していくなど、中東諸国を自社の市場に取り込もうという積極的な姿勢をみせています。

「雪肌精」などスキンケア化粧品、「JILLSTUART(ジルスチュアート)」などの化粧品が主な商品です。

 

 

製薬・化粧品業界の現状や課題と動向

ここまでみてきた製薬・化粧品工場の仕事内容や業界の情報をふまえたうえで、製薬・化粧品業界の現状や課題についてみていきましょう。

 

製薬業界の現状や課題と今後の動向

製薬業界のなかで特に近年の重要な出来事として挙げられるのが、2010年問題です。

2010年に集中して主力商品の特許が切れることにより、オリジナル商品と同じ成分のジェネリック医薬品が出回るようになりました。この影響で製薬業界を取り巻く状況は大きく変化していきます。

 

・有益な新薬の開発が生命線に

2010年に医薬品の主力商品の特許が切れたことで、製薬会社はますます新薬の創出という課題に迫られるようになりました。

近年、新薬の承認審査が厳しくなっていることや、新たな製薬技術が頭打ちになりつつあるなど、新薬創出には難しい状況があります。

こうした背景から製薬会社は吸収・合併によって既存企業をとりこみ、新薬の研究を進めようとしています。

 

・繰り返される会社の吸収・合併

製薬業界は再編や合併を繰り返して企業が成長してきたのですが、最近では合併により企業同士でけん制し合う雰囲気ができています。

例えばアステラス製薬は、山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してできた企業であり、こうした合併による企業が国内シェア上位を占めているのが現状です。

 

また吸収・合併問題は国内のみならず海外にも広がっていて、製薬業界のグローバル化が進み国際競争はますます激化しています。

大手国内製薬メーカーは海外メーカーを買収し、海外メガファーマへの対抗力をつけようとしていますが、状況は厳しいものです。

例えばアメリカのファイザーやスイスのノバルティスなどの海外メガファーマに対し、日本国内シェア1位の武田でも世界の製薬売上ランキングではトップ10圏外となっています。

 

・高齢化社会に対応した施策

日本は世界的に平均寿命が高い反面、高齢化によって医療費の増大が大きな社会問題となっています。

医療費抑制に向けての政府はさまざま施策を打ち出し、医療用医薬品の公定価格引き下げやジェネリック医薬品の推進を行っています。

今後も日本の高齢化には拍車がかかっていくため、医療費抑制の問題は向き合い続けなければならないものであると言えるでしょう。

 

化粧品業界の現状や課題と今後の動向

市場規模が横ばいになっている現状からみると、化粧品業界の国内市場は長期的にみて縮小していくでしょう。

背景には他業種からの参入やインターネットやSNSでの口コミの普及による競争激化という問題があります。この状況から、海外進出に乗り出す企業も増えています。

 

・低価格で高品質なものを開発

化粧品業界の規模の推移は近年横ばいになっており、国内での化粧品需要は伸び悩んでいます。数年前から長引いた不景気の影響で、消費者は節約志向が強く根付いています。

化粧品業界としては、いかに低価格で高品質な商品を消費者に提供できるかが大きな鍵となってくるでしょう。

 

・他業界の企業の参入

富士フィルムをはじめとして、味の素やサントリー、第一三共、江崎グリコなど他業種からの化粧品業界への参入が目立つようになってきました。

この背景には本業で活躍する技術や成分が、化粧品に応用できることが挙げられます。


美容にいいとされるコラーゲンやアミノ酸などは食品業界で使用される成分ですし、フィルムの業界に至っては写真の色あせ防止に役立つ抗酸化技術は、肌の酸化を防ぐ成分として化粧品に利用できます。

 


最後に

製薬・化粧品の工場についてのコラムは以上です。製薬業界は不景気でも影響を受けにくく、むしろ高齢化社会には安定した需要があります。

また化粧品業界は業界規模は頭打ちですが、特に女性には欠かせない日用品として一定の需要が見込めます。こうした理由から、製薬・化粧品業界は、工場ワーカーへの転職におすすめです。

 

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